凹み気味の焼肉店・原因と解決策をアンケート結果から考えよう

2008年02月02日 19:30

焼き肉イメージ先に【「一人焼肉」経験者は12.2%、50代以上の男性では3割強にも】で取り上げたDIMSDRIVEの【「焼肉に関するアンケート結果」】。一人焼肉に関するデータは興味深かったが、同様に焼肉店に対するお客の認識や傾向も関心をそそられるものがあった。「焼肉店の売上が伸び悩んでいる」といわれる昨今、「どうして焼肉店が不調なのか」、調査結果から推測してみることにする。

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伸び悩む焼肉店

去年後半から毎月外食産業の売上データなどを追いかけているが、その月次データでいつも気にかかるのは「焼肉と中華分野の店の伸びが鈍い、むしろマイナスになっている」こと。例えば最新のデータ【12月度の外食産業の売上は前年同月比でプラス3.5%・ファストフードが引き続き健闘】によれば、全項目中焼肉と中華のみが前年同月比マイナス。この傾向はしばらくずっと続いている。

最新データである2007年12月の外食産業の売上などのデータ。中華と焼肉のみがはかばかしくない数字
最新データである2007年12月の外食産業の売上などのデータ。中華と焼肉のみがはかばかしくない数字

焼肉店に限らず外食店舗で「売上」が伸びないのはいくつかの要素が考えられる。中でも大きなのは「客足が遠のいている」「客単価が落ちている」(お店の数そのものの減少は対処のしようがない話)。

客足が遠のいている理由は「自宅の方が安い」

まずは「客足が遠のいている」について。DIMSDRIVEでは「焼肉店に行かない人にその理由」をたずねている。結果として「自宅でした方が安く済むから」「価格が高いから」が同数のトップになった。

焼肉店にいかない理由
焼肉店にいかない理由
財布のヒモがきついので
「焼肉は高いから行かない」

彼らにも有無をいわせないような
サービスや他の食事との差別化を
考える必要がある

「品質・安全性」「匂い」「メニューが少ない」などは各お店の努力によってどのようにでもなる話。「近くに焼肉店がない」「行く機会がない」は単独のお店では手の打ちようがない。「一緒に行く人がいない」なら先の「一人焼肉」にあるように、「一人で焼肉」を新しい焼肉のスタイルとして浸透させるキャンペーンを行なえば良い。

それにも増して同数トップについた「自宅でした方が安く済むから」「価格が高いから」は、両方とも焼肉店における食事の割高感を示している。焼肉店での食事は高いから、行くまでもないというのだ。お財布の中身が厳しい現状を如実に表しているといえる。

牛肉イメージ最近ではランチタイムに「焼肉定食」のような形で1000円札一枚でちょっとしたセットが楽しめるサービスを行なう店もあるが、それでも他の食事と焼肉を比べたら高い、というのが実情だろう。この「高い」とは「この内容にしては高い」ではなく「内容は良いのだが価格そのものが高い」が多分を占めているものと思われる。要は、一般の食事にとって焼肉は「価格的に手が届きにくい対象」になりつつあるといえるだろう。

この観点における解決策としては「値段を他の食事くらいにまで下げる」か「少々高めでもお客が満足できるようなサービスを提供する」のどちらかしかない。前者が焼肉店自身のビジネスモデルからして難しいことを考えると、後者を採用するしかない。「どんなに味やサービスがよくてもこの値段は出せない」と主張する人をもうならせ財布に手が伸びるような、奇抜で他にはない、そして素晴らしいアイディアとサービスが求められる。

もちろん無駄な経費を省いたり、地産池消などを考慮した流通ルートを用いれば、安上がりに食材は調達できるしその点をアピールすることも可能。要は一人一人の知恵の絞り方の勝負所といえよう。

「客単価が落ちている」の解消は難しい!?

一方、もう一つの要素「客単価」。調査結果では2000~3000円・3000~5000円層がそれぞれ3割強を占めている。



客単価

客単価

同調査結果では「子供連れの方が客単価が低い」という傾向が出ているが、子供は大人と比べて食べる量が少ないのだから客単価として均して計算すれば低くなって当然である(大人4人と、両親+子供2人ではどちらが多くの量を食べるだろうか、一目瞭然だ)。

また焼肉店で重視したい点としては、全体では「肉メニューの味・品質」「価格」「安全性」が上位を占めているが、年齢層によって微妙な違いが出ている。

年齢層別重視したい点
年齢層別重視したい点

概して若年層は「肉やサイドメニューの量や価格」「知名度が高い」など、「肉をたらふく食べたい」という直接的欲求や自己顕示欲の充足を求めている。一方で高齢層は安全性や高級感、清潔さや便宜性など「愉しみとしての焼肉の雰囲気があるかどうか」を重視する傾向にある。

若年・高齢で異なるニーズ

どちらかに絞込み、
それぞれにぴったりなサービスを
用意して注文をうながす

焼肉店というと老若男女が押し寄せるイメージがあるが、少なくとも今回の調査結果からは若年・高年とではニーズが相当異なることが分かる。両方にマッチした店ではどっちつかずになり、両方の層から敬遠され客足も遠のき、客単価も下がってしまう。

客単価を上げるには、まずどちらかの層に絞り込んだ店作りをすることが求められるだろう。そしてそれぞれの層にあったサービスの展開(例えば若年層ならさまざまなサイドメニューの展開、高齢層なら安全性で著名かつ有名ブランドの肉の使用や本格的な調理機器の設置)をして、お客が多く注文してくれるような工夫が求められる。


アンケート結果から焼肉店が不調な理由のポイント「客足が遠のいている」「客単価が落ちている」をそれぞれ見てみると、実は行きつくところが同じであることが分かる。ターゲットとなるお客をある程度絞込み、同じニーズを求めている人たちを集客。その上でそのお客たちが求めているサービス、さらには誘惑に駆られそうなサービスを次々と提案して購買意欲を高める。満足感が得られれば、口コミで客足も増えてくるだろうしリピート率も上がる。

例えば高級住宅街そばに焼肉バイキングは似合わない。むしろちょっとハイソな雰囲気で高級料理店のような印象を持たせる焼肉店を展開した方がニーズにかなうだろう。親子で住む世帯が多い集合住宅街に高級焼肉店もミスマッチ。むしろ子ども連れも安心して足を運べるような雰囲気とメニューを揃えた店が求められる。

「焼肉店」というとイメージがやや固定しがちだが、実は意外に可能性が大きい店舗業種といえる。特に昨今における「財布のヒモの堅さ」は越えにくいハードルといえるが、越えられないわけではない。個人的にも「焼肉大好き人間」の一人なので、焼肉店には頑張ってほしいものだ。


(最終更新:2013/08/14)

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