【更新】小麦の政府売り渡し価格、約30%値上げか・日経報じる

2008年01月14日 19:00

麦イメージ日経新聞は1月14日、政府が製粉会社に売り渡す際の小麦価格を来年4月の改定時、30%程度値上げする方向で農林水産省が調整に入ったと報じた。世界的な需要拡大で小麦の国際価格が高騰しているのが原因。これが実現すれば2007年における4月の1.3%、10月の10%に続く値上げで、値上げ幅も大規模なものとなる([該当記事])。

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【パンやうどんなどの値上げも?~輸入小麦の政府卸売価格、10月から10%引き上げ】で詳しく説明しているが、輸入麦の大部分は食品の安定的な国内供給を確保するため、政府が商社を経由して輸入し、その上で(国内の小麦農家への補助金にあてる費用を一定額上乗せしてから)企業に売り渡すという、農協におけるお米の売買と似たような仕組みを採用している。【輸入麦の価格ルール変更でパンやうどん、焼酎などの値段に影響か】にもあるように、これまで年間固定制だった売り渡し価格は2007年から年3回(当面は年2回)の変動が行なわれる。2007年10月にはこのルールに従い10%という大幅な引き上げが行なわれ、これがきっかけで小麦を使う各種食品が続々と値上げすることになった。

「国際的な小麦の取引価格」の代表格であり、農林水産省側も指標としているという[アメリカ・シカゴ商品取引所]の小麦価格は一昨年ごろから上昇を続け、1ブッシェル(27キログラムほど)の価格が5ドル前後だったものの最近では9ドル強にまで上昇。2007年12月17日には過去最高額の10ドル台を記録している。現在は先物市場において8~9ドル台で比較的高値安定しいる。

シカゴ取引所における昨年後半以降の小麦価格の変移
シカゴ取引所における昨年後半以降の小麦価格の変移(【フジフューチャーズ】から)。この半年で2倍近くに跳ね上がっているのが分かる。12月に最高値をつけたあとは比較的安定しているようだ

この価格上昇は主要産地のオーストラリアだけでなくアルゼンチンでも干ばつの懸念があり、さらにインドや中国など新興国の需要拡大、バイオエタノール精製用のとうもろこし畑への転作による面積減、そして原油同様に投機資金が流入していることが原因。アメリカではすでにケロッグなど有名どころの食品メーカーが、日本同様に値上げを余儀なくされている。

今回売り渡し価格が改正される4月分は、2007年6月から2008年1月の取引価格が主に反映される。価格が現在この水準で安定している以上、単純計算で30%~40%の値上げは避けられない見通し。何しろ小麦価格は今回参考にする期間のはじめ、2007年6月前後から大幅に値上がりしているのだから。

昨年秋以降続々と食料品の値上げが発表されたが、その主な原因は「原油価格の高騰」「人件費の上昇」そして「小麦価格の上昇」の3点。人件費は別にしても、原油価格と小麦価格の上昇は、両方とも「バイオエタノール」「新興国の需要増」「投機資金の流入」の3点が主な原因となっている。「バイオエタノール」はともかく後者2つは完全な外部的要因で手が打てないだけに、小麦価格の上昇にも事実上お手上げの状態。

【マルちゃんの「赤いきつねと緑のたぬきも値上げ」即席めんトップ4すべてが値上げ】【日本製粉も業務用小麦を値上げ、11月1日から】などにもあるように先の小麦価格改定の際には、小麦自身はもちろん小麦を主原料とする食料品、パンや菓子、即席めん、パスタなどが相次いで「歴史的な」値上げを断行している。4月に小麦売り渡し価格が30~40%の上昇となれば、それに前後して関連商品も再び値上げせざるを得なくなるだろう。

先の値上げの際には10%前後の上昇幅だったので「まだ何とかなる」「あまり変わりない」という雰囲気も少なからず見受けられた。しかし今回の値上げ幅は前回と比べ3倍から4倍に渡る可能性がある。小麦価格の上昇が即時に関連商品の値上げにつながるとは限らないが、充分に覚悟と備えはしておいた方が良いだろう。


(最終更新:2013/08/18)

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