本を大いに読み友達も増え、コンテンツで涙を流す……世間一般のイメージと異なる子ども像

2007年11月03日 12:00

時節イメージ【博報堂(2433)】の調査機関である博報堂生活総合研究所は10月31日、バブルが崩壊した1997年とその時点から10年後の現在における、子どもの意識調査を比較した結果発表を行なった。それによると2007年現代では1997年当時と比べて本を読む機会が増え、友達数も増加しているなど、世間一般における現代の子どものイメージ「人間関係が希薄化した没個性的な子ども像」とは違った調査結果が出ていることが明らかになった(【発表リリース、PDF】)。

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今調査は2007年が6月18日から7月19日、1997年が3月7日から3月31日に行われたものでサンプル数はそれぞれ800人・1500人。対象は2007年が小学5年から中学3年、1997年が小学4年から中学2年。対象地域は首都圏40キロ圏内で、調査方法は訪問留置自記入法。男女比は1対1で年齢階層はそれぞれ全学年毎に当分。

核家族化の進行と情報の氾濫、外遊びから家の中・複数から一人遊びが主流になり、子どもたちの間では人間関係が希薄化し、没個性化が進み、「大人のような、子どもらしくない子ども」が増加しているというイメージがある。しかし今回の調査ではそれらのイメージをくつがえすような結果が複数導き出されている。

「友達100人できるかな」??

「友達は何人いるか」という問いには、2007年においては平均で66.64人という回答が得られている。

■友達は何人くらいいるか
・1997年……50.71人
・2007年……66.64人

■友達関係に関する問い(2007年のみ)
・人と交際する時には深く付き合いたい……76.5%
・友達でも間柄次第で連絡方法を意識して区別する……40.5%


「友達」という言葉の概念が10年の間に変化した可能性も否定できないが、それでも「友達」の数そのものは10年間で16人近く増えている計算になる。さらに友達関係においては「深く付き合いたい」と考えている子どもが8割近くいる。

さらに別項目「もっとも知りたいと思うこと」でも「友達の話」が他の項目を抜いて第一位(48.1%、前回比+8.9%)となり、1997年当時のトップ項目だった「タレントやテレビ番組の話」の45.3%(2007年においては-12.5%の32.8%)すら超えている。対人関係を重視している様子がうかがえよう。

その一方、友達関係においてランク付けを行い、連絡方法をたくみに変える子どもも4割程度いる。携帯電話や電子メールなど、1997年当時は子どもの間には存在しなかったも同然の媒体が出来、コミュニケーション手段が多様化した現代ならではの「処世術」といえるのかもしれない。

なお、やや話は脱線するが「タレントやテレビ番組の話」が-12.5%と大きく減じているのは、後で触れる「子どもの自由時間が少なくなった」他に、タレントやテレビ番組そのものに対する子どもの興味関心が薄れている・つまらないと感じるようになった可能性を示唆している。

「本をよく読む」子どもは増加、実体験よりコンテンツで涙を流す

「テレビばかり見てないで読書もしなさい」とは、親が子どもに向かって放つよく小言のパターンだが、「本をよく読む」と答えた子どもは37.6%となり、1/3ほどが読書に励んでいることが分かる。

■本(文学全集、図鑑など)をよく読む
・1997年……22.3%
・2007年……37.6%


実に15.3%もの増加、言い換えれば2倍近い増加となる。この問いにおける「本」とは漫画や雑誌は含まずあくまでも「文学全集」「図鑑」など、親が言うところの「ためになる本」。「読書もしなさい」という親の小言も、この10年間で減少しているのかもしれない。

読書からは知識や疑似体験だけでなく、その内容を通じてある種の感動も得ることができる。そして感動は何も読書だけに限らず、実体験や読書以外のコンテンツ、例えば映画やドラマなどでも体感できる。そこで「感動して泣いた対象」について子どもにたずねたところ、3割近くが「映画」と答える結果が出た。

■最近感動して泣いた事は?(2007年のみ)
・映画……28.7%
・ドラマ……23.9%(例:テレビドラマの最終回)
・本……17.3%(例:好きな本)
・その他のコンテンツ……16.5%(例:携帯小説のクライマックス)
・学校行事など実体験……13.6%
(例:顧問の先生の話、サッカーの試合で勝った時、修学旅行のホームステイ先の人との別れ)


実体験が1割強に過ぎないのに対し、コンテンツで涙したのは全部合わせると85%ほど。実体験より疑似体験で「感動」を覚える子どもが多いのは、実体験でそのような場面に遭遇することが(機会的にも時間的にも)少ないからなのかもしれない。


今回取り上げたいくつかの項目を見ても、現在の子ども像のイメージがかなり違っているように見受けられる。もちろん同データを元に先に【ゆとり教育時代の子どもがもっとも欲しいもの、「お金」「いい成績」、そして「時間」】で述べたように、時間に追いかけられ忙しさを増しているのも現在の子どもの姿の一つに違いない。しかし今回取り上げた項目以外でも、家族関係は10年前と比べて良好な方向に向かいつつある数字が複数出ているし、自分から率先して調べ物をしたり習い事を決めるなど、アクティブな姿が見て取れる。

もちろん「大人用の『良い子』という仮面を持つ子どもが増えた」という考え方も出来る。しかし多数の子どもが同じような「仮面」を持つ可能性はあまり想定しにくく、考慮外としてよいだろう。

世間一般にいわれているように子ども像が果たして本当の「不特定多数の子ども像」を表しているのかどうか、考え直してみる必要があるのかもしれない。


(最終更新:2013/08/18)

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