子どもへのダイエット政策続くアメリカの学食事情

2007年09月06日 06:30

海外での給食イメージ大人だけでなく子どもにもダイエットを強く薦めねばならない状況に置かれている欧米の話は【イギリスの「給食改革」で思わぬ波紋・親が勝手に油モノを子どもに買い与えることも】何度と無くお伝えしている通りだが、【The New York Times】で最新の学校内ダイエット事情がレポートされていた。そのタイトルは「The School Cafeteria, on a Diet」。直訳すると「学校のカフェもダイエットモードに」というものだ。トップには果物バイキングの大きな写真と共に「学生にはピザ同様に果物を勧めています」との説明が添えられている。

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「油は使わず直接焼いて」

海外での給食イメージアメリカでも長期休暇が終わり新しい気分で学校に通いだす時期ではあるが、学生たちはフライものが少なくなり、カップケーキが見当たらないなど、これまでとの違いを学食で見つけることになるという。全米で行なわれている、「連邦政府主導の子どもへの肥満対策プログラム」に従った措置だという。

具体例として挙げられているカリフォルニア州の例では、揚げ物系が禁止されたので、チキンナゲットやフライドポテトは現在「直接焼かれて(油を使わずに)」調理されているという。またアラバマの学校では甘茶がメニューに用意されていたり、ニュージャージー州の学校では570グラムのスポーツドリンクがほぼ半減の340グラムにまで減らされた。さらに学食全体や自動販売機でも、子どもに提供される食品の数々が「健康に配慮したもの」にスライドされている。これらの措置は意外にも、子どもたちにも好意的に受け入れられているとのこと。

一方で先に例示した記事内のイギリスでの親御さんたちのように、誕生日会の際にカップケーキを出すかどうかで学校側ともめている様子も伝えられているが、両者とも子どものために最善を尽くすべく努力を続けているようだ。

連邦政府の基準でも甘すぎる

これらの「連邦政府が率先する子どもへの肥満対策プログラム」に対し、一部の州や学区ではより厳しい基準を採用している。いわく、「連邦のプログラムでは甘すぎる」。甘いものを禁止しているプログラムが甘すぎる、のではシャレにもならない。

例えば「栄養価の最少量ライン」において、ゼリービーンズやアイスキャンディーは禁止されている。しかしスニッカーズやチョコレートバーなどは対象外になっている。さらに食事時以外の時間帯や、カフェテリアの外にある自販機で販売されている飲食物も対象外。結果として半分以上の週では、連邦政府の基準以上の厳しいガイドラインを設けることになったとのこと。

海外での給食イメージ by シンプソンズニュージャージー州では独自の基準を設けたが、その基準に従ったある高校では、ピザは相変わらずメニューに見受けられるが低脂肪版になり、自動販売機からはソーダが消えて水になり、スポーツドリンクはその容器が小さくなったという。またアラバマ州の高校ではポテトチップスが禁止され、代わりにベークドチップ(油を使わずに焼き上げるタイプ)を販売している。その他の多くの学校でも油を使わず、オーブンなどで火を通す仕組みが採用されている。

業者との確執や対策度ランキング

今回の「連邦政府が率先する子どもへの肥満対策プログラム」には、いつどこでもありがちな「業者との確執」が問題として持ち上がっているという。学校内で販売される食品や設置される自動販売機、売店経営を行なう企業は、PTAや学校のスポーツチームなどに資金援助をしている。

彼らの「仕事」を奪うことは、学校事業そのものに影響を与えかねず、また企業もそれを見越して、自分たちの商品を何とか売り込もうと画策する。しかし「6~11歳の19%、12歳~19歳の17%は太りすぎ(2003年~2004年のアメリカにおける調査)」という実態は、彼らの行動をもちゅうちょさせるのには十分なデータだった。

最近の研究(【Center for Science in the Public Interest】)では連邦のプログラムを強化する目的でそれぞれの州や地区が設けている「肥満対策プログラム」について、等級付けをしている。いわく、ケンタッキーはA-でトップ。12州にはBランク(ニュージャージーはB、コネチカットはB-)、6州とコロンビア特別区はC、Dは8州、そしてFは23州とのこと。ケンタッキーがトップについたのは、販売食品の厳格な指導目標を設定したことと、自動販売機・学校の売店での販売を午後に制限したことが評価された。


日本では幸い(?)にも欧米と違い、高校までの教育課程においては食事に対しては比較的厳粛で、今回のアメリカの事例のように「学食でいつでも食事が取れる(ために規制を厳しくしなければならない)」という必要性についてはまだほとんど論議されていない。むしろ「給食費問題」の方がクローズアップされるほどだ。

しかしながら国を挙げてメタボリック・シンドローム対策を打ち出している以上、その対象が子どもも含まれるのは当然のことで、そう遠くないうちに日本国内でも同様の問題が提示されることになるだろう。

食の安全問題もあわせ、子ども向けの和食やダイエット食、健康食品のような分野が今後、今まで以上にニーズを増やすに違いない。

(最終更新:2013/08/19)

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