人が食べ物を「美味しい」と思う5つのポイント

2007年09月17日 12:00

焼き肉イメージ先に【肥満な子どもを持つ親にすぐにでもはじめて欲しい3か条+1】を記事にした際、読者の方から「ジャンクフードは1日150キロカロリーというけれど、やせたいのならそもそもジャンクフードを口にするな」というツッコミをいただいた。言われてみれば確かにその通り。しかしその一方で、「美味しい」からどうしても食べたくなるという彼らの気持ちも分からないではない。そこで気になったのは「どうして人は『美味しい』と思い、食べ物を食べたくなるのか」。空腹感を満たすためだけでなく、あえて甘いものや油っぽいものなど、カロリーの高いものを取りたくなるのはなぜか。その回答の一つとなりそうなものを【NTTコムウェアの「コムジン」のバックナンバー】で見つけることができた。

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解説をしているのは京都大学大学院農学研究科教授・食品生物化学を専門とし、栄養化学分野を得意とする伏木亨(ふしき・とおる)教授。著書は記事の最後にいくつか列挙しておくが、多数にのぼる。日本栄養・食糧学会評議員、日本香辛料研究会会長でもある。

伏木教授は人間が食べ物を「美味しい」と感じる理由について、次の5ポイントを挙げている。

生理的に必要なもの

体が望んでいる栄養素を積極的に体内に取り入れるよう、味覚が変動する。生理的に必要なものを口にしたら、それを「美味しい」と感じるようになる。疲れた時に甘いものがほしくなるのが良い例。

食文化に合致するもの

国や民族、地域、家庭など、自分が所属している「単位」の中で長きにわたって培われてきた、経験してきた「なじみの味」を美味しいと感じる。関東と京阪神地域の味の好みの違いが好例。

情報で誘導されるもの

事前情報として「こういうものが美味しい」と刷り込みを受けているものを口にしたものが美味しいと感じられる。これは人間特有の現象だという。値段の高さや雑誌・著名人の推薦、口コミ情報や目の前の行列など多種多彩な情報で、実際に口にする前から「美味しい」と思い込まされてしまう。

薬理学的なもの

伏木教授は「無茶苦茶美味しいもの」として「油」「砂糖」「だし」の3つを挙げている。そして「病み付き」になる食べ物はすべてこの要素が含まれているという。例として「ケーキ」には「砂糖・油」、「ラーメン」には「油・だし」がある。また他にも「ドーナツ」などジャンクフードのほとんども「砂糖・油」の組み合わせだろう。

人との語らいによるもの

食べ物自身に美味しさの原因があるのではなく、食べる環境が「美味しさ」を形成する。一人でご飯をぼそぼそと食べるより、皆で騒ぎながら食べたほうが絶対に美味しい。


伏木教授は以上5ポイントを上げて、「薬理学、情報、文化人類学、生理学など多種多様の分野の美味しさが交錯しているからこそ、今まで『美味しさ』の論拠をまとめ上げることができなかった」と推測している。

「砂糖と油とだし」の美味しさのヒミツ

伏木教授はさらに引用元記事で自分の得意分野である栄養化学の観点から、4つめのポイント「砂糖と油とだし」がなぜ美味しさを感じさせるのか、解説を加えている。

詳細は元記事で確認してほしいが、要はこれらの要素は動物が生命維持活動にもっとも必要とする「糖と脂肪とたんぱく質」であり、動物が生きていくためにあらかじめ脳内に「これは快楽につながる」と刷り込まれているものなのだという。一言で例えれば「本能」「定め」というところか。

さらに教授は「油が含む料理は美味しく感じられるのに、油そのものは無味無臭で美味しさを実感できない。これは本能的に(カロリーを摂取しやすい油は体にプラスになると判断され、)油と一緒に食べたものを『美味しい』と感じる仕組みが出来上がっているから」と説明している。

要は「ジャンクフードをしこたま食べる人たち」は本能のおもむくままに食欲を充足している、ということになるのだろうか。

また余談ではあるが、ドラえもんのヒミツ道具の中に「かければ何でも美味しくなる『味のもとのもと』」というのがあった。これもこの「油が美味しくなるヒミツ」の研究を進めれば、単なる夢物語ではなく現実のものとして作り出せる時がくるかもしれない。


伏木教授は「美味しさの5つポイント」や、特に「油ものを美味しく感じるロジック」を解説した上で、最近は「5つポイント」の中でも「情報で誘導されるもの」の要素が強くなりすぎて、他の要素が頭を抑えられてしまい、食文化そのもののバランスが崩れていると警告している。情報過多により情報による「美味しさ」が強い快楽を生み出し、俗にいう「グルメブーム」が本来の食べ物の食べ方を壊しているというのである。教授はこれについて「『おいしい』という感覚は、本来自分の中に培われた食文化であるはずなのに、それを放棄している部分があるかもしれません」と言及している。

教授の主張を言い換えれば、「踊らさせて自分の味覚をぶれさせるな」ということになるのだろうか。

元々体が「美味しい」と感じさせる「油」「砂糖」「だし」の3要素。ジャンクフードの多量摂取も突き詰めれば恐らくこれがもっとも大きな原因なのだろう。情報の津波に踊らされることなく、そして本能に負けることなく(笑)、取りすぎには注意したいものだ。


(最終更新:2013/09/08)

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