家計消費は先行き不透明さから減少中、さらに収入格差の拡大も顕著に・労働経済白書は語る

2007年08月12日 12:00

時節イメージ【厚生労働省】が8月3日に発表した2007年度版「労働経済白書」(労働経済の分析)によると、2006年における家計消費は減少を続け、特に低所得層においては必要不可欠なインフラへの費用の割合が増加し、家計が圧迫されている様子が如実に現れていることが明らかになった(【白書完全版】)。

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ここ数年来は石油価格の高騰で石油関連品は上昇の一途をたどっていたものの、一般商品の価格下落が全体的な物価を押し下げ、前年比で総合指数はマイナスのまま推移していた。しかし2006年に入り公共料金(後期から)・サービス料金、生鮮商品も前年比でプラスに転じ、物価全体を引き下げていた一般商品の下げもその幅を縮小。2006年第二期からは総合物価指数がプラスに移行し、2006年全体でも消費者物価指数は前年比+0.3%と言う結果になった。

直近5年間における消費者物価上昇率に対する主要項目の上下寄与度推移
直近5年間における消費者物価上昇率に対する主要項目の上下寄与度推移

唯一前年比マイナスだった一般商品の物価指数もその幅を急速に縮小していることから、このまま推移すれば2007年はすべての項目においてプラスとなり、総合指数も大きく引き上げられる、つまり「物価が上昇する」ことが予想される。2007年の現状において物価の高騰感がじわじわと身にしみて感じられる昨今、その予想が的中することは想像するに難くない。

では実際に家計で消費するお金の高低を示す「家計消費」の方はどのような推移を見せているのか。働いている人がいる家庭の家計について、消費の増減を主な項目でまとめたのが次の図表。

家計主要項目と実質消費の増減要因。要は「家計においてどの程度お金を使う傾向にあるのか」の図表。
家計主要項目と実質消費の増減要因。要は「家計においてどの程度お金を使う傾向にあるのか」の図表。

2005年から消費支出はマイナスに転じているが、2006年はその傾向が顕著となり、名目で-2.8%、実質で-3.1%という数字が出ている。同時期の実収入は名目+0.2%、実質-0.1%だから、「実入りの減少以上に支出が抑えられている」のが分かる。

特に2006年を詳しく見てみると、後半期において平均消費性向(自由に使えるお金のうち実際に使ったお金の割合。雇用不安や景気の先行き不透明感は消費態度を慎重化させるので、低下する傾向にある)がマイナスに転じ、景気の先行き不安から消費を抑えていることが分かる。実収入はさほど変わらず物価が上がり、先行きも不透明なことからサイフのヒモを引き締めている様子がうかがえる。

しかしながらこの「サイフのヒモの引き締め」具合も、収入額によって大きく異なるという結果が出ている(当然といえば当然だが)。

収入階層と消費項目別の2002-2006年平均における、1997-2001年平均とのポイント差
収入階層と消費項目別の2002-2006年平均における、1997-2001年平均とのポイント差

5年前の5年間と2006年までの5年間における消費支出の構成比のポイント差を比較してみると(要は「この5年間で家計でのお金の使われ方はどう変わったか」)、【「通信費 家計をじわじわ 圧迫中」5~10%は平均的か!?】でも伝えているようにすべての収入層で「交通・通信費」が大きく伸びているのが分かる。インターネットや携帯電話など、インフラとして必要不可欠な部門の費用が確実にこの5年間で増大した証拠といえよう。また、「食品」「家具・家事用品」「被服及び履物」の割合が低下しているのは、「一般商品」の物価が下落傾向にあったことも大きく作用している。

その一方、所得の低い階層ほど、必要不可欠な従来インフラである「光熱・水道」の割合が高くなっているのが分かる。公共料金の値上げ・支出全体に対する比率の上昇(所得そのものの下落)が、相対的に他の項目の比率を引き下げる結果を導き、生活が厳しくなる状況が推定できる。

また、高所得層ほど「住居への消費割合が増加(住宅の購入や住み替え?)」、「教育」や「教養娯楽」分野への支出割合増加など、余力分を楽しんだり未来への投資に当てていることが分かる。


今回の抽出部分からは、

・物価はゆるやかに上昇中
・家計においてサイフのヒモはきつくなりつつある。雇用不安や景気の先行き不透明感が原因。
・所得の差による消費動向にも大きな差がこの5年間で生じている。
・低所得者層は必要不可欠なインフラへの支出割合が増え、生活が厳しくなっている。


などの状況が推定できる。特に支出そのものが抑えられているという傾向は【6月度のチェーンストアの売上高、前年同月比-1.5%】など、小売業における顧客の単価の減少にも現れている。「実収入がほとんど増えない」大部分の人たちは、将来の不透明感から消費を抑えようとしていることが、今件でまた一つ裏付けられたことになる。

今後物価が上がり、実収入がそのままなら、大部分の低中所得者層の生活はますます厳しくなる。そのような状況になれば消費行動はさらに低迷化していくのは容易に想像がつく。原油やバイオエタノール関係の関連商品の原材料価格の値上げがすでに止めようがない流れである以上、家計のサイフのヒモ、そして小売業での顧客単価が下がるという流れも、止めることはできないのかもしれない。せめて企業の従業員への配分が増え、その分家計の可処分所得が増加すれば、その「マイナススパイラル」的な流れを押し留めることもできるのだが……。


(最終更新:2013/08/20)

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