川崎重工業(7012)が自衛隊向け新型国産哨戒機・輸送機を公開

2007年07月05日 08:00

次期固定翼哨戒機CXイメージ【NIKKEI NeT】などが伝えるところによると【川崎重工業(7012)】は7月4日、自衛隊の新型哨戒機・輸送機の試作1号機を完成させ、岐阜県各務原市の同社工場で公開した。公開されたのは海上自衛隊の対潜哨戒機PXと、航空自衛隊の輸送機CX。

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次期固定翼哨戒機PX(P-X)は現在海上自衛隊が使用しているP-3C哨戒機の後継機に充てるべく、技術研究本部と川崎重工業が純国産品として開発しているもの。開発研究の一環として、機体の強度を地上で実物大の機体模型によって評価する試験(静強度試験)用機体が昨年10月に川崎重工業から納入されていた。

一方航空自衛隊が使用しているC-1輸送機の後継機として開発している次期輸送機CX(C-X)についても、昨年秋の段階で試験用機体が納入されていた。




防衛省技術研究本部による、5月に発表された次期固定翼哨戒機PX(上)と次期輸送機CX(下)の試作1号機(この時点では「ほぼ完成」「各系統の作動確認」状態)。

今件については防衛省・川崎重工業共に正式なリリースは出されていないが、各報道によると、大型の日本国産機としては37年ぶりの開発であり、開発費は約3400億円。PXとCXで部品の共通化を推し進めることで、開発費を250億円ほど削減できたという。PXは従来機のP-3Cと比べて巡航速度や飛行高度が1.3倍ほどに高まり気象の影響を受けにくく、レーダーやコンピューターによる戦闘指揮システムも高性能化されている。またCXも従来機のC-1と比べると飛行距離(約3倍)や搭載量(2倍以上)で勝っており、運用の柔軟性も高まるものとして期待されている。

今回導入された試作機は9月から試験飛行が行われ、来年に納入される予定。従来試験機の公開は3月頃を予定していたが、リベット(ねじ)の強度不足が見つかった関係で4か月ほどの遅れを生じることになった(【参考:朝雲新聞社】)。しかし防衛省への納入はCXが来年3月、PXが来年8月で変わりはないとこと。開発の完了は2011年を予定している。

NHKのインタビューに答えていた機体設計チームの担当者のインタビューによれば、今回の機体開発には日本の航空機技術者の1/3にあたる1300人が参加した戦後最大規模のプロジェクトであること、そして「航空機の開発は単なる事業としてではなく、宇宙開発などと同様に国の威信をかけているという側面がある」「日本も(自力で機体を開発できる)一流の技術を持った国である、ということを示す意味合いが大きい」と説明していた。日本メーカーは長年海外メーカーの下請けに留まっていたという事実もあり、航空機開発に携わる人たちにとっても、国の威信はもちろんだが、「技術者としての維持」もあったのだろう。

また、川崎重工業では輸送機タイプのCXを民間貨物機に転用し、2012年にも事業化したい旨を明らかにしている。今件について防衛省も賛同・支援する方向だとのこと。すでに基本的設計はCXで終了しており、一部に設計変更は必要だが、技術的に高いハードルは無く、メリットは大変大きいとしている。

日本の場合航空機産業は敗戦後の関連企業解体や技術開発停止命令などを受けて、他の先進諸国と比べて数十年から半世紀は遅れていたとの意見もある。ここ最近にいたり、ようやく今件や【三菱重工業(7011)、YS-11以来の日本国産ジェット機の概要を発表】などのように、自前の航空機を開発し、(採算が取れる形のものを)諸外国にお披露目できるレベルに回復したという兆しが見えてきた。

三菱重工業の国産ジェット機やCX、PXの開発や展開が良好な形で進み、さらなる技術躍進と開発へのきっかけ、そして関連する技術者や企業の自信回復につながるよう心から願いたいところだ。


(最終更新:2013/08/20)

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