食品安全委員会資料に見る「トランス脂肪酸」の国内最新事情

2007年06月25日 06:35

トランス脂肪酸イメージ先に【トランス脂肪酸「日本人摂取量は海外比較で少ない」食品安全委員会発表】でお伝えした、【食品安全委員会】における発表「現在のところ日本人の平均摂取量は海外と比べると少なめで、今のところ大丈夫」だが、添付されていた資料(【該当資料、PDF】)には単に「現在の量なら大丈夫」という話だけでなく、さまざまなトランス脂肪酸に関する最新情報が盛り込まれていた。諸外国の現状や取り組みなど、興味深い話も多いのだが、ここでは特に身近な話になる、日本国内における事情を見てみることにする。

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トランス脂肪酸とは人工添加物の一種で、植物油に水素を加えて固める時に発生する油。言い換えれば油を加熱処理した時にできるもの。日持ちを良くする性質があるので、特にお菓子などによく含まれるマーガリンやショートニングなどにも含まれる。またこのトランス脂肪酸なるもの、自然界にはほとんど存在しない。海外では多分に摂取されている関係から健康に対する悪影響が問題視され、取り分け欧米諸国において使用しないようにする動きが盛ん。

国内流通食品のトランス脂肪酸含有量

それでは早速、まずは国内に出回っている食品における、トランス脂肪酸の含有量を提示してみる。これはずばり表組化されていた。

国内に出回っている食品におけるトランス脂肪酸の含有量
国内に出回っている食品におけるトランス脂肪酸の含有量

この数字は単数の試料ではなく複数の検査が行われ平均値として計算されているので、信頼性は高いと思われる。各商品とも「100グラム当たり」であることに注意する必要はあるが、予想通りショートニングやマーガリンなどの含有量が多いのが分かる。また、それらを多分に利用している食品も、比較的含有量が多い。

さらに、「多めに含まれている」とされる食品群でも、試料の中には最大値と最小値の間で10倍以上もの差を示しているものもあり、同じ「平均値で多そうに見える」食品でも個別差がかなり存在することが分かる。

100グラムあたりの含有量が高い食品を大量に口に含む機会はほとんどないだろう(マーガリンやクリームを1日100グラム摂取する人など聞いたことがない)。とはいえ、気をつけるに超したことはない。

世界各国のトランス脂肪酸の一人当たりの摂取量

前回の記事でも一部触れた、今回の調査にあたって調べられた、世界各国の一人当たりのトランス脂肪酸の摂取量の比較表は次のようになる。

世界各国の一人当たりのトランス脂肪酸の摂取量
世界各国の一人当たりのトランス脂肪酸の摂取量

日本人の平均的な一日あたりの摂取量は0.7グラムであることは先にお伝えしたとおりだが、アメリカの場合は5.8グラム、ヨーロッパでは1グラム強となっている。もっとも欧米各国では前世紀末からトランス脂肪酸に対する注目が急速に高まり、摂取量を減らそうという動きが個人ベースだけでなく企業・政府機関のレベルで積極的に行われているのも事実。今後年間ペースのレベルで逐次調査すれば、漸次摂取量は減っていく可能性も十分にある。

日本の場合はどうだろうか。これも先の記事で説明したように平均摂取量は許容範囲内としながら、「これらの推計では、国民健康・栄養調査の平均値を使用しているため、脂肪の多い菓子類や食品の食べ過ぎなど偏った食事をしている場合の個人差は考慮されていません」とし、偏食をしている人への警告をしている。

日本での取り組み

日本でも遅まきながらトランス脂肪酸への取り組みが行われ、その一部がレポートでも紹介されている。ざっと挙げると、

・厚生労働省が1999年の「第六次改定日本人の栄養所要量」で「トランス脂肪酸の摂取量が増えると、血漿コレステロール濃度の上昇、HDL コレステロール濃度の低下など、動脈硬化症の危険性が増加する」と報告。
・2004年の厚生労働省作成「日本人の食事摂取基準(2005年版)」では「欧米諸国の研究で、トランス型脂肪酸摂取量の増加は虚血性心疾患のリスクを高めるとの報告があるが、日本人での摂取量や、各摂取レベルにおける安全性については未知である」と記載。
・農林水産省では調査研究を進め、専用ページ「トランス脂肪酸に関する情報」で公開中。
・独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所では脂質とも合わせて解説ページ【トランス脂肪酸ワーキンググループ】を開設。
・食品安全委員会での逐次情報公開(今資料など)


このような動きがある。また以前の記事でもいくつか触れているように、遅まきながら一部日本国内の企業でも、トランス脂肪酸の使用をひかえたり、取りやめるところも出てきている。そのような動きは評価すべきだし、もっと大々的に報じられても良いものだが、日本ではまだ傍流のようだ。


レポートでは最後に「脂肪全体の摂取に関する注意」として、大切な栄養素であるとしつつ、最近では脂肪の取りすぎがデータ上からも明らかであること、トランス脂肪酸のみならず、脂肪のとりすぎ、飽和脂肪酸や食事性コレステロールの多量の摂取も心疾患のリスクを高めるため、食生活において脂肪全体の摂取について注意する必要があると注意している。

トランス脂肪酸独自の問題と、脂肪全体の問題をすり替えている気がしなくもないが、その直後に書かれている

・脂肪の摂り過ぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとることが大切
・脂肪の多い菓子類や食品の食べ過ぎなどかたった食事をしている場合では平均値を大きく上回る摂取量となる可能性はあ(るので、片寄らない食事が重要)


という注意文は至極当然で納得のいくものといえる。

個人レベルで「防衛」するためには、食品を手に取った際に成分表を見るクセをつけること。そしてその上で購入するかどうかの選択をすること。これが一番簡単で実効果がある。また、メーカーサイドには含まれているかどうかだけでなく、具体的にどの程度含有量があるかを商品上、それが無理なら公式サイト上にでも表記してくれるよう望みたい(がそれは難しい話だろう)。

例えば最近、アメリカでは蒸しパンが流行っているという話を聞く。これは単純に和食やシンプルな食事に注目が集まっているからではなく、他の菓子パンと比べて製造工程でショートニングやマーガリンなどをほとんど使わずに作れるからなのだという。

まさに【幻想博物館 トワイライト・ミュージアム】の話ではないが、「知識は人生を豊かにしてくれる」もの。まずは知識を得、そしてその知識を有効に活用し、人生を、生活を豊かにしていこう。

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