新興市場銘柄を正しく選ぶ5つのチェックポイント+1

2007年06月26日 19:30

株式イメージ先に【リートと新興市場の不思議な関係、そして今後の両者の展開を探る】で「リートと新興市場セクターは相反する関係にあるので今後リートが下がれば新興市場銘柄は上がるかも」「でも新興市場銘柄も厳しい選別にさらされ、二極化する」という仮説を挙げた。早速「選別されるということだが、具体的にはどのような基準で選べばよいのか」という意見が複数寄せられた。銘柄選択は投資判断に直結するため自己責任・自己判断がベストなのだが、たまたま手元に参考になりそうな記事があるので、これを元に当方の説明や解釈を加えて紹介することにしよう。

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紹介する記事が掲載されているのは『ダイヤモンド ザイ(ZAi)の7月号』。この号に掲載されていた連載記事「M&Aコンサルタントが語る ホントの株の話」が対象。今記事では「敬愛すべき投資家とバリュー投資の4つのスタイル」というタイトルのもと、竹田和平氏やベン・グレアム氏、ウォーレン・バフェット氏などの投資戦略の概要を説明している。そしてベンチャー企業への投資の難しさや醍醐味を紹介し、投資の冥利を語っている。

ベンチャー企業への投資という観点では、新興市場への投資もほぼ意を同じくするものといえる。そこで、この記事でまとめとして掲載されていた、「ベンチャー企業への投資 5つの注意点」を挙げてみよう。このスタンスが、今後新興市場銘柄を取捨選択する際の一つの指針として役立つに違いない。

1:ビジョン(志)が大きいこと

「経営者が頭に思い浮かべる事業の器の大きさ」までしか実際の事業は育たない。妄想レベルでの事業拡張を考えているのは別問題だが、夢を大きく持てば妙なぶれ方をしないということ。元記事では「キャッシュよりもリーダーの原体験に根ざした事業展開の方が成長しやすい」「経営者が安易に自社株を売るようでは……」と説明している。

口先ならどうとでもいえる場合もあるのでビジョン云々を一概に信用しきることはできないが、経営者のひととなりや性格、事業に対する意気込みはチェックしなければならない。また、手持ちの自社株を売っているかどうかも一つの判断材料となるだろう。

2:いろいろな価値観を吸収できていること

経営陣の経歴がある程度分散し、多様な価値観を吸収している方が将来性が高い、との話。開発畑でトップが占められていたり、営業経験者ばかりだと事業が片寄ってしまうのはよくある話。大企業の中にはトップを一代ごとに開発と営業の双方から順番に選ぶところもあるが、このようなバランス感覚があるかどうか、ということだ。

もちろん多種多様な事業に八方美人のように次から次へと手を出すという意味ではない。

3:お金の使い方が上手なこと

資本政策がしっかりしていない企業は(ベンチャーに限らないが)投資に値しない。株主のことを配慮していないか、あるいは金銭感覚に疎い、または上場している自覚が薄いと考えられるからだ。元記事では「1円で1億株の増資をする」「安易な株式分割を行う」「IRへの対応が悪い」などどこかで聞いたような事例を、選ぶべきではない企業としてあげている。

付け加えるとするならば「EB債やMSCBをぽんぽん出す」ところや株主総会で「増資はしません」と断言して株主の同意を得た直後に大増資をするところも、だろうか(無論EB債やMSCB、増資のすべてが悪、というわけではないのだが)。

4:事業が安定していること

元記事では具体的な指針として「3年間の平均フリーキャッシュフローがプラス」「社歴が10年以上経っている」を挙げている。フリーキャッシュフローはともかくとして「社歴10年以上となると、直近上場企業は軒並み対象外になるではないか」という反論がある。

確かに、社歴が若い企業の中にも優秀なところは多い。しかし確率論や安全策を考えた上では、やはり社歴を考慮に入れた方が良いだろう。10年以上会社が続いているということは、それだけの維持実績を挙げているのだから。なお「上場してから10年ではなく、操業してから10年」であることに注意。

このチェックポイントで、俗に言う「上場ゴール」的な企業を効果的に避けることも可能なはずだ。

5:付き合う人がしっかりしていること

最後に元記事では、監査法人や(幹事)証券会社を確認しろ、と説明している。今や解散して歴史に名前を残すのみとなった某大手監査法人をして「○×リスク」と揶揄された時期もあったが、似たような傾向は他の証券会社や監査法人にも見られる。

具体的にどの会社だとリスクが高いかはここでは言及しないが、実際に上場廃止となったり色々な不祥事を起こして株価が数十分の一になった新興企業がお世話になっている監査法人や証券会社をつぶさにチェックしていれば、色々と「見えてくる」ものがあるはずだ。

+1:親会社が長期に渡ってしっかり支える傾向であること

これは元記事にはないが、あえて当方で一つ加えさせてもらった。新興上場企業の中には親会社、あるいは大株主会社の意向を強く受けて、あまり上場には乗る気でなかったものの上場したような雰囲気のところも少なくない。そういう会社は上場を果たして株価がある程度上がった時点で、それらの上場会社が大量に持ち株を売りぬけ、大株主の構成が変わることが良くある。俗に言う「上場ゴール」な企業だ。

それら大株主会社・親会社の「上場までのサポートをしたのだから」「上場益を得るために大株主になったのだから」という主張はまったくもって当然だし、経済活動としては肯定すべきもの。ただし、売れらた新興上場企業の株主にしてみればたまったものではない。いわば「ババをつかまされた」形になりかねない。

対象となる新興企業の株主構成を見て、あまりにも「売り抜け傾向の強い企業」ばかりが占めているのなら、「これは会社を育てる、というよりは上場益を得るために資金投入をしたのでは」と疑っても良いだろう。このような状況は先の4に反する状況を生み出すし、5にも反していることになる。第一、自分が長い眼で投資したかった企業に対し、「上場ゴールで手持ちの株が高値で売り抜けたらそれでOK。あとは知らないよ」的なことを親会社や大株主会社がしたら、気分が良くなるはずがない。

もちろん、上場ゴールだろうと何だろうと、その企業が本当に良い底力を持っていて他の要素でもOKサインが出ていれば、大株主の売り抜けによる株価下落は、大いなるチャンスに他ならない。滅多にないことだが、もしそのような機会を見つけたら、天恵と思って拾ってみるのも良いだろう。


元記事にも「ベンチャー企業の中から中堅企業まで育つのは1000社に1社」という説明がされている。上場維持をしている企業の数を考えるともう少し多いような気もするが、投資家が期待したような発展を成し遂げ、上部市場に格上げされて株価も躍進するのは、全体の1%~数%、選び方ではゼロカンマ数%に過ぎないだろう。

短期的な売買による売却益を得るつもりなら、この注意点にはあまり留意する必要はないだろう。しかし数年単位、あるいはそれ以上の長期保有でじっくりとお付き合いしたい銘柄を新興市場から選ぶのなら、これらのポイントは多かれ少なかれ役に立つに違いない。


(最終更新:2013/09/08)

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