病院探しもネットの時代へ・口コミ投稿と情報公開法改正がポイント

2007年05月13日 12:00

医療イメージ[このページ(Sankei Webなど)は掲載が終了しています]に「病院探しはネットで探す時代に。検索ができるサイトが好評」という主旨の記事が掲載されていた。医療機関の広告規制が変更され、これまで閉鎖的だった病院のウェブサイトも解放的になる一方、CGM(Consumer Generated Media、利用者が内容を創って行くメディアのこと)の考え方の普及で、病院の選び方にもCGM的なものが注目を集めるようになりつつある。そこで当方(不破)の経験もあわせ、今記事を読み解いていくことにしよう。

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病院評判サイト「QLife(キューライフ)」

元記事で最初に紹介されていたのは、昨年11月に正式スタートした病院評判サイト【QLife(キューライフ)】。エリア検索や診療科目、駅を中心にしたマップ上の病院表示など、さまざまな病院のデータが登録されている。収録データ数は動物病院もあわせて全国で約16万件。

キューライフトップページ。マップデータからの参照もできるなど、既存のノウハウをうまく組み合わせ、病院の口コミ情報をCGM化することに成功している。
キューライフトップページ。マップデータからの参照もできるなど、既存のノウハウをうまく組み合わせ、病院の口コミ情報をCGM化することに成功している。


単なる病院の住所やスペックデータだけなら普通の検索エンジンとなんら変わりは無い。「キューライフ」の最大の特徴は「その病院の口コミ投稿を閲覧できる」こと。週刊誌で時々特集が組まれる「全国の●×(病名)に関する名医・名院トップ100」記事では体験談などがちりばめられており、信頼性・安心感を補填する。見た目や病院からの自己主張だけでなく、実際に利用した患者の体験談なら、「ナマの声」を聞くことができ、信頼もおけるわけだ(あからさまな批判内容は伏せるとのこと)。

「キューライフ」では特に、面と向かって相談がしにくい病気(痔や水虫など)の口コミ情報がほしいという需要に応える形で運営を開始。4月のアクセスは300万件と3月から倍以上に増えた。口コミ情報の投稿数も1日に100件から300件となり、CGMの考え方が非常にうまく進展した形となっている。

病院サービス比較サイト「病院の通信簿」


続いて紹介されていたのが、病院を通信簿形式で比較確認できる【病院の通信簿】。治療を受けた患者がさまざまな項目(プライバシーの配慮、治療費、治療室の快適度、待合室の快適度、機器設備など、15項目)で5段階評価し、コメントなどを添えて投票する。

当方の住む練馬区で誰でもデータが閲覧できるタイプの某歯医者データ。場所や診療時間、待ち時間の傾向など細かい点まで分かる。
当方の住む練馬区で投票数が一定以上となりデータが開示された某歯医者のデータ。場所や診療時間、待ち時間の傾向など細かい点まで分かる。

各種コメントや病院の外見写真なども掲載されているため、自信のある病院(かつ自院のサイトを持っていない病院)にとっては良いアピールになる。

「病院の通信簿」では病院のデータベースだけでなく、さまざまなコミュニティや質問サイトとの連携を図り、お役立ち度の向上を図っている。

特にレーダーチャートは斬新で、ぱっと見でその病院の良し悪しが分かるので非常に便利。

病状チェックを充実「ここカラダ」

病気の病状チェックを充実させたのは【ここカラダ】という医療総合サイト。病状チェックを中心に、病院を探す「病院検索」がメインコンテンツ。

「ここカラダ」トップページ
「ここカラダ」トップページ

具体的な病名だけでなく、自分の症状や問題部位など「病んでいるな」というポイントについて答えていくと、可能性のある病名と診療科目が表示され、該当する病院もピックアップされる。

風や虫歯など、非常に分かりやすい症状の病気ならともかく、「悪いものを食べたわけでもないのにお腹が痛い」「肩の凝り方がひどいのだけど」「胸がキリキリする」などのように、症状は分かっていても病名が分からない状態は多い。病名が分からなければ(総合病院ならともかく)病院を探すのも難しい。例えば頭痛がしても原因が歯だった場合、歯科がない病院に行ったところで問題の解決にはならない、といった具合だ。

口コミはあくまでも「口コミ」。けれど軽視は出来ない

元記事では「口コミ情報はあくまでも個人の体験談であって、医師の技術や病院そのものの優劣を評価するものではない。判断材料の一つとして見て欲しい」とまとめている。確かに「口コミ」は主観的な情報であるため、つい感情に走るところがあり、正確さに欠ける場合も少なくない(そもそも専門知識が少ない患者サイドからの意見なのだから)。

とはいえ、治療を受けるのは各病院の先生ではなく、患者一人一人。当事者である患者たちがどのように感じたのかは、例え主観が混じっていたとしても「現場の声」に違いない。また、例えば「1時間待つことになった」「真夜中に子どもが熱を出してしまい休診時に駆けつけたがちゃんと診断してくれた」など、客観的な情報も数多く口コミ情報として投稿されることは見逃せない。

正直これまで病院の情報が(特にインターネット上で)閉鎖的だったのは、【医療機関の広告規制が変更、一部緩和・一部強化】にもあるように広告規制のしばりがあったから。しかし4月からは【医療法における病院等の広告規制について(厚生労働省)】で定められているように、今年度中にすべての医療機関で所在地や診療科目、病床数といった基本情報を都道府県に報告する義務が課せられた。都道府県側はそれらの情報をウェブサイトなどで公開するため、事実上医療機関の情報が透明化されることになる。

当方が入院した数年前は、CGMもまだ本格的な普及はしておらず、今回取り上げたような病院の情報データベースサイトも無かった。革新的な病院は立派なサイトを創って情報公開をしていたが、ほとんどの病院はサイトそのものがなく、あっても前世紀のシロモノのような形で、しかも更新すらほとんどされていなかった。

入院しようとする、あるいは利用する予定の病院を調べる際、昔は週刊誌や実際に利用した人の話を聞いたり、あるいは地方紙・電話帳をチェックしたものだが、今ではネットを使えば瞬時に誰でもすぐに詳細まで把握することができる。患者が自分の病院を調べた時に、旧態依然な内容だったり、情報の更新が行われていなかったとしたら、不安に駆られることは間違いない。

かつて当方が入院していた際、同席していた病人が歯の治療を必要としていたのだが、あいにくとその病院は(大学・総合病院であるにも関わらず)歯科がなかった。自立歩行が難しく、歯が悪いので病院食もあまり食べられず食が細り、ますます病状が悪化する……という悪循環におちいるのは目に見えていた。たまたま当方が一日退院の日に当たっていたので、その時にネット上でその病院の近所の歯医者や、他の病院内へも往診してくれる歯医者を検索し、プリントアウトをして担当医に渡した経験がある(【ネフローゼ闘病記より】)。

病院通いをする人にとって、どの病院に通うかは非常に重要な問題。行き先の病院が自分の病症に対して不得意な医者ばかりだと、治療もままならないどころか「正しい病名が分からず、身体をいじくりまわされるだけ」になる可能性もある(これも実体験済み)。

そのような経験則からも、さまざまな項目、特に不特定多数の目から見た感想である口コミ情報を元に創られた病院CGMサイトは非常に有益だし、これからますますニーズは増えると考えている。

もちろんサイトを運営する側も利用する側も、問題のある病院を指差すというネガティブな使い方をするのではなく、「医(術)は仁術」という言葉を地で行くような、あるいは期待に応えてくれる医者や病院を持ち上げ、賛美するようなポジティブな使い方を推し進めるべきだろう。

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