「つかみ」を得られるタイトルと見出し

2007年05月04日 19:15

紙媒体やネット上の記事を書く機会のある人たちに共通する悩みの一つが「タイトルや見出しをどのようにするか」。「本文がしっかりしていればタイトルなどどうでも良い」と思っていたとしたら大間違い。ほぼ百パーセントの人がタイトルや見出しに目を通し、本文を読むか否かを決める。本文や見出しの時点で「読まない」と結論づけられたら、どんなに内容が良くてもその記事は決して読まれることがない。

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タイトルや見出しは記事全体を映す鏡

こんなことをあらためて考えるようになったのも、先日【タイトルと見出しの付け方(Webコンテンツ向け)】という記事を読んだから。それによると、「効果的な(=多くの人の関心を引き本文を読ませる)タイトル付けのコツ」として、次の7つを挙げていた。

1.簡潔に。
2.ひねりを入れず、分かりやすく。
3.内容の要約であるべし。
4.それだけで(文章を読まなくても)意味が通るように。
5.想定読者がピンと来る言葉を選ぶ。
6.冒頭(最初の数語)にキーワードを含ませる。
7.固有名詞は後ろの方に。


7.は英語特有の表記のクセによるものだから別としても、1から6は「なるほど」と思わせてくれる。


紙媒体では本の題名がまず目に留まる。販売予定日一覧や本棚に納められた本たちの背表紙、新聞の広告など、最初に目につくのはズバリ、タイトル。著者や出版社、テーマなどで選ぶ場合もあるが、ほとんどの人はタイトルが気になるはず。

例えば【スイング系トレーディング漫画「株主爽快」連載終了】でも取り上げた、山田真哉先生は非常にうまいタイトルを自書につけている。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』にしても、最近発売された『食い逃げされてもバイトは雇うな』にしても、「簡潔に」「分かりやすく」「内容を要約していて」「ピンと来る言葉」を使っている。あえて加えるとすれば、さらに「ハテナで興味を沸かせる」というところだろうか。

タイトルや見出しは記事全体を映す鏡。そして多数のライバルに打ち勝つための「最前線部隊」でもある。当然、「内容が分かるような文面」という題名本来の目的を果たしつつ、多くの人の関心を引き寄せる魅力を持っていなければならない。繰り返しになるが、まず「手にとってもらえなければ」すべてが始まらない。

ネット事情の特異性と共通点

ネット上(ブログやサイト)の記事でも、紙媒体のタイトルや見出しの注意事項とさほど変わるところはない。やはりタイトルだけで「飛ばされて」しまい本文に目を通してもらわねば意味がない。ソーシャルブックマークのサイトにおいて、同じような内容を取り上げているのに、タイトルのセンスのあるナシで読まれた回数が桁違いに違う記事を見ると(そして少ない方が自分の記事だったとすると)溜息と共に自分のセンスの無さを再確認してしまう。それほど、タイトルや見出しは大切といえる。

たくさんの扉が並んでいるイメージRSSやソーシャルブックマーク、まとめサイトなどの発展で、ネット上の記事におけるタイトルの重要性はますます高くなっている。ずらりと並んだ記事タイトルを上から下まで全部読む人など滅多にいない。ざっとタイトル一覧に目を通し、自分の感性にマッチした、何か感じさせるセンスのあるタイトルの記事をクリックし、実際に中身にまで目を通す。そのようなスタイルのサイト巡回をしている人は多いはず。

つまり、「タイトルや見出しで読み手のハートをつかまなければ、内容そのものを知ってもらうチャンスすら得られない」。逆に考えれば、読者は「たくさんの扉が並んでいる状況で、どこの扉に入るか選択するとしたら、やはり興味ある名札が掲げてる扉を選ぶ」わけである。

ほとんどが無料で閲覧できるネット上記の記事。しかし時間は限られている。読者の選択は、紙媒体を選ぶよりもシビアになる。よってライバルに打ち勝つための「最前線部隊」ことタイトルや見出したちの存在意義は、紙媒体のそれより重要になる。

要約は必要か否か

元記事では「筆者の身のまわりのことは筆者に興味がある人だけしか読まない」(だからアイドルやタレントのブログはウケが良い)「時節ネタは独自解釈がないとまず読まれない」などという意見と共に、次のような説明がされている。いわく、

簡潔・要約が過ぎて中身が想像できてしまうのもダメ


釣り革広告イメージというものだ。要は、タイトル部分だけを読んで中身が分かったら、わざわざクリックして本文を読むことなどしない、という意味。電車の社内に掲げられている、雑誌の釣り革広告を読んで大体内容が分かってしまい、買わなくても満足してしまう、あの心境と同じようなものだろう。

一方、当方(不破)はといえばかつて、複数の新聞やテレビの現場で働く人たちから、ネット上での文章について「最初の100文字、それが出来なければ1段落目で、概要が分かるような構成が望ましい」と教えられてきた。ネット上の文章は斜め読みされるし、最後まで読まれることもさほど多くない。最初の一部分で概要が分かるようにしておかないと、大意を伝えられないからだ、という主旨である。

どちらが正しいのか。正直なところ、「分からない」というのが本心。タイトルで多くの人の興味を引かなければ記事そのものを読んでもらえないのは悲しいことだが、だからと言ってトリックのようなタイトルをつける(インチキ系ビジネスのような「一日5分間の作業で毎月30万円のおこづかい!」「株式投資で誰でも億万長者になれる、その秘訣とは?」など)のは性に合わない。

第一それでは、タイトルや見出しの本来の存在意義「本文、記事全体を映す鏡」ですらない。先の扉の例なら、「高級食材をずらりとそろえたバイキングコース」というプレートが掲げてある扉から入ってみたら、市販品のひじきやみそ汁、しなびたキャベツのサラダ、お漬物、冷や飯しかバイキングコースの食材として用意されてなかったとしたら、どう思うだろうか(以上、体験談(笑))。

同じ本文でも、その内容を的確に表すタイトルはいくつも考えられし、工夫は必要。だが、過度にひねったり奇を狙ったりしては、本末転倒。そのバランスが難しい。一人一人、またサイトやブログの特徴や「色」にあわせる形で、どちらを優先するかを決めてタイトル付けをするべきだろう。また、要約もしかり、だ。


タイトルを魅力あるものにすることは、記事本文の魅力を高めるためにも必要。そして上で説明したように、何より「多くの人に読んでもらうため」には、注意を引きつけるという使命もタイトルや見出しは帯びている。

タイトル付けの難しさは、上記ネットの特殊事情から、広告やプレゼンテーションにおけるそれ以上に難しいところがある。自己のポリシーを守りつつ、いかにより魅力的な、そして多くの人の目をひきつけるタイトルや見出しを作れるか。タイトル作りは記事本文と同じくらい、あるいはそれ以上に難しいかもしれない。

ちなみに当方の場合、「奇を狙う」ことが下手なもので、どうしてもタイトルが堅苦しいものになりがち。例えば直前の記事【ゲームで肥満に立ち向かうアメリカ~アメリカシリアスゲーム関連学会レポート】なら、「アメリカのピザな子どもがゲームでスリムアップ!?」とすればより多くの人の注目を集めることだろう。しかしそれではやはり自分の頭の中で「それ、あおり過ぎ」というツッコミが入ってしまう。

日を改めて山田真哉先生の著書のタイトル付けと共に紹介する予定の「マジック・キーワード」の考えが活かせるよう、タイトル付けについて勉強と鍛錬を重ねる最中ではあるが……やはりこれも難しいというのがホンネである(笑)。


(最終更新:2013/09/08)

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