ゲームで肥満に立ち向かうアメリカ~アメリカシリアスゲーム関連学会レポート

2007年05月04日 19:30

DDRで運動イメージイメージ欧米各国や最近では日本でもメタボリック症候群に代表される「肥満問題」が深刻化している。特に若年層(子ども)の肥満問題には教育機関だけでなく多くの部局が頭を悩ませている(【イギリスでは肥満問題担当大臣が創設されたほど】)。そのような中アメリカでは、ゲームを使って子どもの肥満を解消させようという試みが相次いで行われている。その事例について【2006年9月にボルチモアで開催されたアメリカシリアスゲーム関連学会レポートの翻訳がシナジーによって掲載された】ので、ここでかいつまんで紹介する。

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DDRを使った肥満解消プログラム

これは先に【コナミ、『ダンスダンスレボリューション』でアメリカの子供肥満防止に協力】でも報じた、【コナミ(9766)】のダンスゲーム『ダンス・ダンス・レボリューション(DDR)』を用いて子どもに運動をさせようという試み。元々は肥満の原因の一つとされる「テレビの前で過ごす時間をただ座っているだけでなく、運動させることで活用できないか」という考えから来たもの。

DDRは身体全体を動かすので相当な運動量を必要とし、一人でも大勢でも遊べるので、子どもだけでなく家族全員で遊ぶことができる。しかも難易度も自由に調整できるし、どれだけ運動したか・遊んだかを計測可能なのでさまざまなデータを取得できる。

元記事によるとDDRを用いた小児肥満体質を持つ子どもたちへの実験で、12週間の実験の結果DDRを用いた自宅での訓練をした側はそうでない側に比べ、次のような効果が現れたという。

・FMD(Flow Mediated Dilation:内皮依存性血管拡張反応、この数字が低いと動脈硬化がおきやすくなる)の値が平均3%未満から8%に改善
・インスリン値が正常値内に戻る
・他の運動にも積極性をもつようになる
・自分に自信がもてるようになる


現在DDRに関する「ダイエット教育プログラム」は単発的な実験ではなく、学校や家庭、医療保険会社、そして米国コナミとの共同プロジェクトとなり、資金やその他の面で協力しあいながら進めているとのことである(【参考:コナミサイト内「コナミデジタルエンタテインメント、米国・ウェストバージニア州とパートナーシップを締結」】)。

総合運動ゲームセンター「XRtainment Zone」

続いて紹介されたのは、ゲームを肥満の原因の一つとして敵視するのではなく、味方に引き入れるという考えから生まれた運動ゲームセンターこと新しいスタイルの運動施設【XRtainment Zone】

ここでは創設者の「病気予防の点でゲームを使えるのでは」という考えから、ゲームとフィットネス・ジムを融合したXRtainment Zoneを創設したことが詳しく説明されている。

XRtainment Zoneのサイト。家族みんなで楽しく遊んで汗をかき、健康状態をキープしようという意図が見て取れる。
XRtainment Zoneのサイト。家族みんなで楽しく遊んで汗をかき、健康状態をキープしようという意図が見て取れる。

XRtainment Zoneのサイトの「我々の使命」というページでは、次のような説明書きを見つけることができる。

XRtainment Zoneの責務は子どもを含めた家族みんなに「(ここで遊べば肥満問題など)解決できますよ」という環境を提供することにあります。運動が苦にならず面白いものなら、肥満や動脈硬化などさまざまな生活習慣病を予防し、健康なライフスタイルを維持することができるのです。当社では楽しい運動方法や健康維持のためのノウハウを用いることで、
現在社会問題化している生活習慣病などの病気の問題を解決する手助けをしています。


要は科学的観点もあわせ、デジタルやゲーム要素を多分に取り入れた全年齢層向けフィットネス・レジャーランドというわけだ。実際にこの施設では多種多彩な運動ゲーム(Wiiもじきに山ほど導入されそうな感じがする)のほか、大人向けの講習会も随時開催されているとのこと。

ゲームのメリットとしては、「安価で整備できる」「子ども自身が熱中するので大人の監視が要らない」「多人数プレイが可能なものなら社交性も育める」などを挙げている。


「(小児肥満が原因で)今の子供達は
親世代よりも平均寿命が短い
初めての世代になるだろう」
「国家安全の最大の脅威は
小児肥満である」
(Richard H. Carmona,米国軍医総監)

【メタボリックで四人に一人が要指導・来年4月から特定健診、特定保険指導開始】にもあるように日本では40歳以上に対して特定保険指導が義務付けられることになるが、子どもへの施策はまだ動きが無い。子どもの肥満は大人同様に重要視されるべきだし、深刻化しているはずなのだが、国を挙げての政策があまり見受けられないのはなぜだろうか。

元記事では「XRtainment Zoneのような施設はニーズが極めて高く、システム化した上で効果が発揮されれば、多くの人に受け入れられるに違いない。そして日本でも同様のビジネスがスタートするかもしれない」と締めくくっている。

幼児向けの保育所的な遊び場や、DDRのような身体を動かすタイプのゲームがいくつか集まったゲームセンターは日本でも各所で見受けられるが、XRtainment Zoneのように運動ゲームを多数集めて集大成化し、さらにさまざまな講習を展開して総合的な健康保全を目指す目的の施設は、日本ではほとんど耳にしない。

欧米人と日本人の体質の違いはあるものの、日本でも類似の傾向が見受けられるだけに、今後同様のニーズは高まることが容易に想像される。アミューズメント系のテーマパークや身体を動かすタイプのゲームなどに長けた大手ゲーム会社や、Wiiで家庭内部から「皆で楽しく遊んで運動」のアプローチを行っている(【「脳を鍛えたら次は体」任天堂、Wii用健康管理ソフト「ヘルスパック」を2007年夏にも発売】)任天堂あたりが、日本国内でも創設してくれないものだろうか。ニーズはあるはずなのだが。


(最終更新:2013/08/21)

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