【更新】加ト吉(2873)に大型循環取引問題発覚、みずほ銀行とも問題・読売新聞報ず

2007年03月25日 19:30

株式イメージ東証の適時開示情報で3月23日に[リリース(PDF)]が発せられたように、冷凍食品の【加ト吉(2873)】で、同社一部事業部や連結子会社が取引先32社の倒産(2006年12月末から2007年2月)に関連して売掛債権の一部に回収不能が生じたこと、および納入予定の商品が販売できる見込みが無くなったことから、「回収懸念債権50億円」「商品評価損失見込み額25億円」が生じることが明らかになった。しかし25日に入り読売新聞が相次いで同社の巨額な循環取引疑惑を報じ、特損どころの話ではなくなっている。

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循環取引の疑い、1年間に200億円の会社も

まず25日深夜に報じられたのが、[加ト吉、グループ内で伝票上だけの「循環取引」?]とのタイトルで、加ト吉本体やグループ会社、さらには複数の取引先会社が関わり、「実際には商品を動かさずに伝票上だけで売買する循環取引が行われていた」疑いがあるという話。3年以上前から続き、2006年末に中止されたという。

この「循環取引」が行われることで中間に位置する各会社間には多少のマージンが発生するが、そのマージンを主導する会社が最終的に負担することで、関連会社すべてが納得し、かつ主導する会社が目的とする「自社取引の売り上げを増やす=会社規模を大きく見せる」ことも可能となる。元記事では「1年間に200億円分を”販売”した」会社のコメントも寄せられている。

また元記事では、「昨年末に取引中止となったせいで、循環取引に使っていた手形が不渡りになり、億単位の負債を抱えている」と報じているが、これは先に加ト吉が「正式に」発表した「取引先の倒産の時期」と奇妙に一致しており、関連性が推測される。

売掛債権でみずほ銀行との問題も

さらに今件に絡む形で、[循環取引問題 みずほ銀が30億円回収不能]という記事が昼前に公開された。こちらでは循環取引に関連し、【みずほ銀行】側が債権30数億円を回収できなくなったとして、加ト吉側に支払を求める法的措置を検討していると報じている。

詳細はやはり元記事で説明されているが、簡単に説明すると

・みずほ銀行は循環取引に参加していた商社から、特定目的会社を通じて売掛債権を購入していた。
・この売掛債権についてこれまでは期日になってから、特定目的会社は加ト吉から支払を受けていた。
・しかし加ト吉側が循環取引を停止。それに伴い、売掛債権への支払も停止。
・この時、特定目的会社には30数億円分の売掛債権が存在。
・手持ちの売掛債権の換金を、みずほ銀行は加ト吉に要求。
・加ト吉いわく「(循環取引止めたし)取引そのものが存在しない」として支払を拒否


という形になる。

当然のことながら証取法抵触の疑いの懸念

さらに昼過ぎ、[加ト吉巡り循環取引か 証取法抵触も]というタイトルで、加ト吉の循環取引の問題について、証券取引法に抵触する可能性も示唆している。これは売上高などの粉飾により、発表決算が事実と異なるということで、「有価証券報告書の虚偽記載を禁じた証券取引法上」の問題がある、というものだ。

この記事には循環取引の様子が図版つきで表示されているが、それによると、

加ト吉・加ト吉水産→食品販売会社(兵庫県)→食品販売会社(岡山県)→貿易会社(香川県)→中堅商社(大阪市)→加ト吉・加ト吉水産(最初に戻る)


という形になっている。こうして「伝票上」だけで商品をぐるぐる回すことにより、多くの取引が行われているように見せているわけだ。極端な話、「缶詰め1つ」でも「トラック一台満載」分の取引にも見せることができる、という具合である(例が極端すぎるが)。


今件については、公式発表のあった取引先倒産による特別損失は各誌が伝えているが、循環取引については現在のところ読売新聞系列のみの報道となっている。また、みずほ銀行・加ト吉共に、現在のところ(日曜日ということもあるが)公式な発表は否定・肯定もあわせ行われていない。

ただ、読売新聞の記事では加ト吉の島田稔専務が3月24日に「結果的に循環取引になったかもしれない」と回答し、循環取引の可能性が存在することを示唆したことをはっきりと表記している。

また、繰り返しになるが週末に公式発表された取引先企業の倒産と特損の発表と、妙に合致する部分があり、一連の出来事に関連している可能性は十二分にある。

「有価証券報告書の虚偽記載を禁じた証券取引法上」への抵触という話では、最近では日興コーディアル証券の件やミサワホーム九州の事件、TTGやアイエックスアイ、さらにはライブドアのケースがある。また、循環取引でもやはりアイエックスアイが挙げられる。

これらのケースでは、規模の違いこそあれ、日興以外はすべて上場廃止処分を受けている。今回が単に読売新聞の「飛ばし」記事となるのか(とはいえ専務側の肯定とも受け取れる発言も得ているのでその可能性はあまり高くないが)、それとも読売のスクープとして月曜以降正式なリリースが出されるなり調査が始まるのか。現在のところは分からない。

しかし事実の有無、および事実だとすればその規模次第では、加ト吉(及び、もし存在すれば関連する上場企業)について、命運が左右されることになるのだけは間違いない。


■関連記事:
加ト吉事件でのはてな「循環取引」とは?

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