ネットゲーム「メイプルストーリー」のアイテム詐取で地裁が有罪判決

2006年11月18日 10:00

ゲームイメージ【NIKKEi NeT】によると、インターネットのオンラインゲームで、【ネクソン】が運営中のネットワークロールプレイングゲームの【メイプルストーリー】において、財産に相当するアイテムをだまし取ったとして詐欺罪などに問われていた、東京都練馬区大泉町、無職、伊藤進一被告(24)に対し高松地方裁判所は11月17日、懲役1年3か月・執行猶予3年(求刑懲役2年)の判決を言い渡した。元記事にもあるように、ネットゲームの詐取で詐欺罪が認定されたのはきわめて稀有な例として注目を集めている。

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これは【ネットゲーム『メイプルストーリー』でアイテム詐取、24歳の男性プレイヤーを逮捕】にもあるように、千葉県浦安市の男子高校生からアイテム2点(あわせて1300円相当)をだまし取った疑いがもたれていたというもの。ゲーム内の会話で「ゲーム内仮想通貨(ポイント)でアイテムの代金を支払う」と持ちかけアイテムを受け取ったが、支払わずに接続を切ったという。

伊藤被告は「仮想世界での詐欺行為が現実の刑法の詐欺に当たると思わなかった」として無罪を主張していたが、増田耕児裁判長は「被害者は現実のお金を払ってアイテムを購入しており、ゲーム内での遊戯行為とはいえない」として詐欺罪の成立を認めた。

繰り返しの説明になるが、すでに今年の8月には【『ファイナルファンタジーXI』の武器代金を詐取、25歳の男性逮捕】でも報じているように、『ファイナルファンタジーXI』上で愛知県警が、アイテムを販売するとの目的で現金15万円をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕者が出ている。この場合は現金が詐取の対象となった。この場合は「現金」が詐取の対象となったため詐欺罪の適用は容易だった。

しかし今件の場合、あくまでもだまし取られたのは「ゲーム上のアイテム(あるいは仮想通貨)」であり、「ホンモノでない仮想上の物質」が対象となっている。逮捕時も県警では「被害者が購入した、ゲーム内でサービスを受ける権利を奪ったことが、財産上、不法な利益を得たと判断した」とコメントしており、成行きが注目されていた。

詐欺(さぎ)とは刑法上で規定されているもので、「人をあざむいて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得ること、または他人にこれを得させることにより成立する」と定義されている。奪われたものがゲーム上の架空通貨や架空のアイテム(デジタルデータ)であった場合には物理的要件が必要となる「財物」に該当しないという解釈がこれまでは主流であり、詐欺罪の適用は難しいとされていた。しかし今回高松地方裁判所は解釈として、「実際のお金を払って得たサービス(デジタルデータとしてのアイテム)を得ており、それは単なるゲーム内での遊びに留まらず、『財物』に相当するものであり、物理的要件が間接的に適用される」と見なし、定義後半部分の「財産上不法の利益を得ること」の部分を適用したことになる。

今回の判決はあくまでも一審のものであり、当事者の意思次第では高裁・最高裁までもつれこむ可能性があるため、まだ確定したわけではなく、確かな判例としてのものではない。それでも裁判所が「少なくとも現金で購入したものであるのなら、デジタルデータやサービスであっても詐欺罪の対象になりうる」と判断したことは、きわめて画期的な判決であるといえよう。今後類似案件や、RMT(リアルマネートレード)、運営会社主体の現金によるアイテム売買にも少なからぬ影響を与えるものと思われる。

……余談だが、今件について、金額の少なさと、地裁とはいえ判決が出るまでの速さにおいても少々稀有な気がする。あるいは他に、何らかの原因があるのかもしれない、というのは勘ぐりすぎだろうか。

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