「本が泣いている……」図書館の書籍を切り抜き書き込むマナー違反な人が増えている

2006年11月09日 12:30

書籍イメージ神奈川県の横浜市中央図書館をはじめとする各図書館では本日11月9日までの予定で、【特別展示 本が泣いています。】と称する展示会を開催している。利用者による切り取りや書き込みのために、利用できなくなる図書館資料が増えており、図書館側の窮状を訴える催しだ。

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図書館側では「一部の心無い利用者のために、多くの利用者が迷惑をこうむっている。秋の読者週間にあたり、実際に切り取りや書き込みをされた資料を展示し、被害の深刻さを市民に知らせ、マナー向上を訴える」としている。

発表リリースページや本日NHKで報じられたレポートによれば、

・グラビア誌の表紙のアイドル写真を切り抜いて持ち去る。
・料理レシピの本の特定料理の部分を切り抜いて持ち去る。
・離乳食の献立が掲載されている冊子のうち献立部分70ページ分を丸ごと持ち去る。
・グラビア誌の中身を丸ごと持ち去る。
・赤ボールペンで傍線や囲みなどの書き込みをする。ましてや塗りつぶす。
・法律の専門書を何ページにも渡って切り抜き、それをごまかすために切り抜いたページの前後を糊付けする。


切り抜かれたグラビア誌
中央のアイドル部分が
切り抜かれたグラビア誌
(横浜市中央図書館サイトより)

などが具体例として展示されている。他にも「雨や水に濡れている」「ペットが噛み付いたあとがある」「ページの角が折られている」「付箋がはってある(粘着剤部分が変色したりページが貼り付く)」などの事例が展示されている。

このような書籍は資料として利用することはできず、図書館側では修復できないものは再度買いなおす必要がある。もちろんこれらは本来必要の無い出費。ましてや絶版などで二度と手に入らず、欠品になってしまうものもある。

借り物を濡らしたり折り目をつけたりペットにかみ跡をつけたり、ましてやペンなどで書き込みをしたり切り抜いて持ち去るなど、「やってはいけないこと」というのは誰でもわかること。百歩譲って間違ってやってしまった事例があったとしてもその旨をきちんと図書館側に説明すべきだし、切り抜きなどは「間違って」などという言い訳は通用しない。これらは立派な「器物毀損」「窃盗」などの犯罪行為である。

NHKのインタビューに答えていた司書の黒岩道子氏によれば、このような「図書館の書籍への乱雑な扱い、破損行為」について、件数が増えてきただけでなく内容もひどいものになりつつあるという。また、加害者側は若年層に限らず、高齢者のものと思われる事例も多数見受けられるとのこと。

70ページも抜き取られたレシピ本
離乳食の部分70ページを
丸ごと持ち去られたレシピ本。
(横浜市中央図書館サイトより)

「自分さえ良ければ良い」あるいは「ばれなければ何をやっても良い」という社会の風潮の現れ……という言葉で片付けるのはあまりにも安直に過ぎる気がするが、それ以外に表現のしようがないのだから、思わず肩をすくめてしまう。つまり、それほど安直なことすらしっかりと守られていないという現状があることになる。

中には「税金払ってるしその税金で買った本なのだからこれくらいいいだろう」と自分で理屈をつけて正当化する人もいるだろう。そういう人は自分が住む自治体の税収のすべてを支払った上で、いくらでも図書館の本を好きに扱うがいい。そうでなければ、該当する書籍のうち「自分が支払った分」を明確に判別してその証明をし、その部分だけを抽出すべきだ。そうでなければ「他人のモノ」を奪うこと無かれ(「ベニスの商人」論)。

恐らく大部分は貸し出しされた後に行われ、こっそり返されているのだろう。一部には図書館内でそのような所業が行われているかもしれないが、他人がしているのを見かけたら注意をする向きもあるだろう。しかしこれすら「事なかれ主義」で見てみぬ振りをされているのかもしれない。

「モノを大切にする」「借りたものは大切に扱う」「人のものをとらない、壊さない」など、それこそ小学校一年生の道徳の教科書にも載っていそうな事柄すらまともに出来ない人が(絶対数からすればまだ少ないとはいえ)増えてきている状況と、何よりも本当に「泣いている」本たちを見るにつけ、悲しみを覚えずにはいられない。


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