バレンタインデーだけをチョコのセールス期間にしないために……オトナのチョコ市場開拓事情

2006年02月12日 12:10

【NIKKEI BP】に「オトナのチョコレート市場は定着するか?」という題目の特集記事が掲載されていた。バレンタインデー前の記事だからてっきり「バレンタインデーには大人の香り漂う高級ブランドもののチョコをどうぞ」という内容かと思えば少々事情が違うらしい。記事の筆者が冒頭で「バレンタインデー直後の安売りチョコを買うのが幸せ」と書いているあたりからして「おや?」と思わせるものがある。

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大人の為のチョコレート フランス Weiss社ナポリタンシリーズ 24個/16個入箱イメージ記事では、チョコレート業界では2月14日のバレンタインデーを間近にひかえた時期が大セール期間で、年間売り上げの大部分を占め、その他の時期はほとんど売れない、という業界事情が説明されていた。だがその一方で、「オトナ向けのチョコレート」を開発し市場に提供することで、年中それなりにチョコレートの需要が喚起されるように市場を開拓していこうという動きがあるとのこと。

[ファミリーマート(8028)]が企画した、朝ご飯代わりに会社で口に出来る、甘さを抑え食べやすいパッケージにしたチョコレートや、本場のベルギー産チョコレートを販売する【セブンイレブン(3382)】の話など、「そういえば」という話がいくつも紹介されている。【明治製菓(2202)】の「ショパン」の話も「確かにあのCMは耳にしたことがある」というもの。

その一方、そういった「オトナ向けに開発されたチョコレート」が、ディスカウントショップに半額以下の安値でアウトレット品として販売されていることも紹介し、「メーカーが期待するより需要は多くない」と説明付けている。そういえば近所の100円ショップでも、ブランドもののチョコが定価の半額、下手をすると1つ150円から200円の定価のものが4つで100円という破格値で売っているところを見かけたこともある。

記事では、「もう少しアウトレット品が少なくなり、値引率も3から4割引きくらいになるような状況になれば、大人のチョコレートは定番商品の仲間入りをするだろう」と結論付けている。

だが、一度アウトレット商品として「定番化」してしまうと、元々メーカー側が望んでいた値段でのブランドとして認知させるのは難しいかもしれない。似たような話として最近【日清食品(2897)】が開発した【スープヌードル】という商品絡みの話がある。日清食品といえばあの円筒形の「カップヌードル」が代表的なブランドだが、最近100円ショップで出回ることが多く、ブランドバリューが落ちる傾向にあるという(100円で買える、という意味。商品の質が悪いという意味では決して無い)。そこで日清食品側では、100円ショップなど向けへ麺のボリュームを減らして単価を抑え、「麺はもちろんだが(相対的に麺との比率が高まった)スープを楽しんでもらおう、スープ感覚で食べてもらおう」という意図の「スープヌードル」を開発した。

スープヌードルイメージパッケージのイメージも「スープヌードル」のロゴを全面に押し出し、これまでの「カップヌードル」と似たような雰囲気を保ちつつも、シンプル化したイメージが見て取れる。実際に100円ショップでカップヌードル代わりに並べられるようになってからも、傍目で見た限りではほとんど印象に変わりはない。「安めでお気軽なのはスープヌードル、食事向けにはカップヌードルを(定価で)お求め下さい」という意図はある程度成功しているのかもしれない。

その一方、「100円ショップが近所にあればそちらで買えるから……」という、一度消費者に染み付いたイメージはなかなか払拭できないのも事実である。かといって、むやみやたらと付加価値をつけて高級志向に走るのも、そもそも「簡単お気軽安価で美味しい食事」として存在価値の高いカップヌードルの意義そのものを否定することになりかねず、難しいところ。スープヌードルの売行きと、それに伴うカップヌードルの「復権」が果たせるか否かについては、今しばらく消費者動向を見守る必要があるだろう。

話がそれ気味になったが、「オトナ向けのチョコレート」開発による、バレンタインデー以外のチョコレートのセールスアップはアイディアとしては悪くない。ただ、単に「健康機能」や「本場どこそこ産」というだけでは、高級品ならともかく、コンビニやスーパーで気軽に買えるレベルのチョコを定期的にセールスアップするのは難しいかもしれない。

受験シーズンまっさかりの昨今、【次々登場、受験シーズン向けのげんかつぎ食品やお菓子たち】でも紹介したように「きっと勝つぞ」でキットカットの専用版を送り出すように、「酒が飲めるぞ」の歌ではないが、それこそ毎月何かにかこつけてそのテーマに沿ったチョコレートの提供を行っていくほどの本腰を入れる必要があるのだろう。その「提案」が面白ければ、消費者はこぞってその「祭り」に参加するに違いない。ダイヤモンドを散りばめ5億円のチョコレートを作りましたというような、高嶺の花の商品でイメージつくりをするのも一手ではあろうが……。


(最終更新:2013/09/04)

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