みずほ証券ジェイコム誤発注事件、解け合いの法的根拠は……

2005年12月14日 12:15

解け合いの決済も済み、事件は「一応」終息に向いつつある、みずほ証券によるジェイコム(2462)株式誤発注事件。ホルダーでもない当方(不破)がいつまで追いかけているのも問題だが、先日の記事で気になるコメントなどがあったので懲りずに取り上げてみる。

スポンサードリンク

【先の記事(ジェイコムの誤発注問題、渡すべきだった株券は9万6236株。強制決済の根拠も)】で、日本証券クリアリング機構が主張する「法的拘束力」につき、「もっとも当方(不破)の力不足からか、実例に挙げている「26年4月の津地裁判決」の具体的内容を探ることができなかった。またこの「26年」というのが「昭和26年」なのか「1926年」なのかも分からない」とし「判例が見つからない」と泣きついたところ、いくつかご意見をいただいた。

そのうちの一つ、【法務の国のろじゃあ】で、見事該当する判例が提示されていた。それによると「26年」とは昭和26年のことであり、具体的には「津地裁昭和26年4月18日判決(下級裁判所民事裁判例集第2巻4号530号以下)」のことを指すという。餅は餅屋というか、やはりその道の人にはかなわない(どこで調べたのだろうか……)。脱帽。

記事によると、今判例は先に何度か挙げている【1950年の旭硝子のヘタ株(増資新株・権利株)を巡る仕手戦】に絡む案件。具体的な「この部分を判例とする云々」については

従来の解合においては特段の事情のない限りその効果が委託者にも及ぶものと解すべきが妥当であり而も委託者はかかる事態の生じうることを当初から予想して委託をしたものと認められるし、且つ解合なるものが非常応急の措置なることに鑑みれば委託者の承諾なくして解合をすることができると考うべきであろう


と記述されている。とはいうものの、参照記事でも指摘のあるとおり一般上場株式とは異なるヘタ株に関する特殊事案であること、さらにGHQ(連合国総司令部……当時の日本はまだ連合国軍の占領下にあった)が絡んでいることなどから、「判例は判例だが、状況が丸っきり違うのではないか」という指摘がされる可能性がある。

さらに、判例案件では同時に「解け合いは悪しき風習である」「今回(判例事案)が解け合いをせねばならないのははなはだ遺憾」「今回を最後の解け合いとすべし」「本仲介案(解け合い)は仲介の当事者たる証券業者に対する勧告であって必ずしもその顧客を拘束するものではないことを表明したことが認められる」という記載がある。何度か読み直したが、判決文を判例として採用するのなら、機構の主張とは逆に、顧客への法的拘束力は無い、ということになってしまう。

【先の記事(ジェイコム株決済価格「91万2000円」は妥当な決済価格か、異論の声続出。「公募の1.5倍弱」の根拠はどこに?)】にある「91万2000円という回答が初めから用意してあり、それを裏づけするために約1.5倍弱という数字を出したけど、どう計算しても1.5倍などという値は出てこない」件と同様に、「法的根拠云々のケチをつけられないよう、とりあえず解け合いが実施された過去の事例を持ち出して法的根拠・過去の判例としてしまえ」という思惑で説明しただけであり、具体的な判決の中身やその主旨はあまり考察していなかった(どうせ誰も詳しくは調べないし突っ込まないだろう)……という勘ぐりをしてみたくなるのだが、どうだろうか。

すでに強制決済・解け合いは成り、本日12月14日からジェイコム株式は通常の売買が再開されている。現在のところ買いが殺到し、ストップ高買い気配で値は推移している。強制決済させられた個人投資家の地団駄は大地をダイヤモンドの堅さまでに踏み固めるものがあるだろう。彼らの疑問に応えるためにも、しっかりとした法的根拠を関係各所は提示してほしいものだ。

今件で露呈された他の疑問点(一例を挙げるとみずほ証券が誤発注の件を親のみずほと農林中金にだけ知らせ、公表は場が引けてから行った、インサイダーな件)もあわせ、明確に納得のいく合理的な決着をつけ、あるいは事実を導き出し、正すべきところは正さないと、【「世界の笑いものになる可能性も」みずほ証券の誤発注で指摘】にもある通り、日本市場は世界からあきれ返られ、笑いものにされ、見向きもされなくなってしまいかねない。

笑われるだけなら良い。見向きもされなくなってからでは遅いのだ。

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

スポンサードリンク



 


 
(C)JGNN||このサイトについて|サイトマップ|お問い合わせ