「姉歯ショック」に揺れる建設業界

2005年11月24日 04:30

建設イメージ先日発覚した【構造計算書の偽装事件(「耐震強度偽造問題でシノケン(8909)が都内の2棟解体を記者会見で発表」など)】で建設業界が大きく揺れている。「耐震問題の話なのだからゆれている、だなんてシャレている」などという冗談が通じないくらいの危機感が業界内にはあるようだ。

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元々地震国日本において耐震性は建築物にとって重要な問題。東海大地震の予見はまだ幸いにも現実のものとはなっていないが、【姉歯建設設計事務所が関与した住宅は22都道府県で194件】の記事でも述べたように、阪神淡路大震災や新潟県中越大地震をきっかけに多くの人が建物、特に住居となる戸建やマンションの耐震性を重要視するようになった。建設業界もそのニーズに応えるべく、法定基準を上回る耐震性を持たせたり、免震技術や制振技術など新たな技術を開発し導入してきた。

住宅にとって地震や火災はそのすべてが奪われてしまう可能性のある災害。火災はまだある程度防ぐことができても、地震はそれがかなわない。住宅への耐震に関する注目が集まって当然だろう。

そんな矢先にこの事件が発生した。

リフォーム詐欺や欠陥住宅問題などで、「大金を投じて一生涯をかけて住む住宅なのだから、人にまかせっぱなしにせず、第三者機関や本人がしっかり監視する必要がある」という認識が広まりつつあるものの、素人には限界がある。ある程度その道のプロに「信頼」するしかない。そもそも住宅に限らず、ビジネスとはそういうものだ。

だがこの「姉歯事件」はこのルールを根底からくつがえしかねない衝撃を建設業界に与えている。

守られるべきルールが守られず、チェックすべき機関がその機能を果たしていなかった。さらに事態が発覚しても一部の誠意ある態度を見せた企業をのぞき、関係する団体や個人、法人は「うちも悪いかもしれないがあちらにも責任がある」「うちは本分をまっとうした」「責務は果たしている」などと責任のなすりつけ合いをするばかり。挙句の果てには被害者感情を逆なでするような発言を繰り返しつつ「建替えをするにはお金が足りないから国が出してくれないと(【参考記事:NIKKEI NeT】)」と自己責任という言葉からは180度かけ離れた、訳の分からない発言をして開き直る会社も出てくる始末。

昔と違いそのようなやりとりはすべて、テレビやラジオ、新聞、そして何よりもインターネットなどメディアを通じて不特定多数の人間に伝えられる。それらの情報を見聞きした人がどう思うか。いわずもがな。

「姉歯事件」が明らかになってから、関係のない建築関係会社や役所には「自分のマンション(住宅)は大丈夫なのか」という問合せが殺到している。業界全体への不信感は高まり、株価にも大きく影響し、不動産関連銘柄やREIT(不動産投信:資金を集めて不動産を購入、賃料や売却益を投資家に分配する金融商品)は大きく値を下げている。

建設関連の上場企業も気が気ではない。「姉歯事件」の物件と係わり合いがあったシノケン(8909)の株価は報道後、ストップ安を続けたまま底がないようにすら思われる下落を続けている。

ここ数日、東京証券取引所に提示された【適時開示情報閲覧サービスセンター】にも多くの発表が行われている。おもなものをざっとあげても

●「姉歯建築設計事務所」と無関係だと発表した企業など(調査中も含む)
・ラ・アトレ(8885)
・R-日レジ(8962)
・M-セキュアド(2392)
・タカラレーベン(8897)
・R-クレッシェ(8966)
・R-ユナイテド(8960)
・ランドコム(8948)
・シーズクリエ(8921)
・ダイナシティ(8901)
・日神不(8881)
・M-アルデ(8925)
・R-ADR(8978)
・R-ジョイント(8973)
・ジョイント(8874)
・R-Jシングル(8970)

●なんらかの関係がある物件を所有していると判明、その対応を発表した企業
・名鉄(9048)
・三重交(9050)
・シノケン(8909)
・明豊エンター(8927)
・京王(9008)


とこれだけある(リリース自身はそれぞれの企業や上記サービスセンターを参照のこと、順不同、11月23日現在)。

「ピンチはチャンス」という言葉がある。もし本当に誠実で顧客のためになるビジネスをしていると自覚しているのなら、今こそそれぞれの企業はそれを明らかにし、さらに対策を講じ、顧客の不安を払拭すべきだろう。業界そのものへの不信は一社だけでは拭いきれるものではないし、もっと深いところに「問題」がある可能性もないとはいえない。

しばらくは業界そのものと共に、各企業は(たとえまったく姉歯建築設計事務所とは関係なかったとしても)低迷を続けるかもしれない。それくらい今回の「姉歯ショック」のインパクトは大きい。だが正しいことをなし続け、対応を誤らなければ、必ず機会は巡り、信頼回復は成し遂げられることだろう。

■「関連」記事
【耐震基準満たさない建築が「優秀賞」 業界団体が選定(asahi.com)】
【「まったく心外」、ヒューザーが反論(NIKKEI NeT)】

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