電機大手の決算予想をグラフ化してみる(完全版)

2009年02月07日 12:00

家電イメージ先に【電機大手の決算予想をグラフ化してみる】で大手上昇電機企業の2009年3月期(2008年4月~2009年3月)における業績修正がほぼ出揃ったとしてグラフを生成したが、その後【パナソニック(PDF)】【シャープ(PDF)】がそれぞれ業績修正の発表を実施。ほぼ予想通りの内容が展開されていた。そこで今回は先のグラフを補完すると共に、追加でいくつかのグラフを生成し、動向をより深く眺めてみることにする。

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主要電機メーカー9社の2009年3月期連結業績見通し
主要電機メーカー9社の2009年3月期連結業績見通し
主要電機メーカーの2009年3月期連結業績見通し(営業・純損益のみ)
主要電機メーカーの2009年3月期連結業績見通し(営業・純損益のみ)

上のグラフは売上、営業損益(本業の損得)、純損益(本業、本業以外、特別な損得を加えた最終的に「どれくらい儲かったか」)を昨年時点の見込みと、直近の見込みで比べたもの。現時点でまだ2009年3月期は終了していないため、あくまでも見込みでしか無いが、直近のデータを参考にしているので、よほどのことが無い限り大きなぶれはないはず。概要としては、各社とも売上を落としているのが分かる。とはいえ上のグラフでは売上が大きすぎ、営業利益や純損益が分かり難い。そこでその二つだけを抽出したのが下のグラフ。

9社のうち7社までが最終的な損得勘定で赤字に転じている。黒字を示しているのはわずかに三菱電機だけ。三洋電機はプラスマイナスゼロだが、ぴったりゼロになることはほぼありえないので、恐らくは下ぶれするものと思われる(その点では三菱電機の「100億円」というのも多少きな臭い感がある)。残り7社はすべて赤字。昨年時点ではすべて「今年は最終黒字」を予想していたのだから、大変な急落ぶりだ。前回「赤字見込み」と掲載した部分も確定し、実際の数字を埋め込んで見ると、あらためて現状が把握できるというもの。

各データを良く見てみると、売上高の予想変化が5~15%の減少であるのに対し、純損益が大きく下ぶれしているのが分かる。これは単に本業の業績が急速に悪化しているだけでなく、景気下降に伴いさまざまな特別損失(有価証券評価損や、事業の撤退・リストラクチャリングなどに伴う損失)を計上していることによるもの。本業と本業以外のダブルパンチがやってきたことになる。

家電量販店イメージこれら大手家電メーカーは、売上を製品の輸出に頼るところが大きい。直接製品を売るだけでなく、部品なども大きく関与してくる。海外でも景気後退で消費が減退していることに加え、急激な円高で日本商品の価格的魅力が薄れたのが痛いところ(例えば、日本国内で同じコストで生産しても、円高が2倍に進めば、海外での販売価格も2倍に跳ね上がる)。特に日立製作所の最終損益予想7000億円の赤字は衝撃的で、かつてのソニーショックならぬ「日立ショック」という言葉が市場関係者の間で語られたくらいのものだ。

2009年度(2010年3月期、2009年4月~2010年3月)は、2008年度以上の厳しさが予想される。前年度は急速に景気が悪化する秋以前の、比較的堅調な時期の売上も計上されているからだ。さらに、為替や消費動向の点で、現状から回復する兆しは見られない。今後各社とも、新しい商品戦略はもちろんのこと、全般的な研究開発生産体制の見直しがせまられることだろう。

ただし今回の「営業損益」と「純損益」の間にある「特別損益」の中には、この「戦略」「見直し」を大規模に行う、体制変革用の費用が含まれていることを付け加えておく。例えばパナソニックの場合では、保有株式の評価損780億円の他に、「国内外の拠点統廃合、固定資産の減損および雇用構造改革を中心とした事業構造改革費用3450億円」が含まれている。単に大規模な純損益が大幅にマイナスへと触れたからといって、即「もうダメだ」という考えは短絡に過ぎるといえよう。

さて。

これでこの記事を終わりにしてもよいのだが、前回掲載時に「過去からの推移も見たい」というリクエストがあったので、せっかくだからグラフ化してみることにする。会社四季報掲載の過去6年分を今回の直近予想とあわせ、その推移を見ることで、状況の急激な変化があらためてわかるはずだ。

電機大手直近7年間の売上高推移(2009年3月期は直近予想)(単位:億円)
電機大手直近7年間の売上高推移(2009年3月期は直近予想)(単位:億円)
電機大手直近7年間の営業損益推移(2009年3月期は直近予想)(単位:億円)
電機大手直近7年間の営業損益推移(2009年3月期は直近予想)(単位:億円)
電機大手直近7年間の純損益推移(2009年3月期は直近予想)(単位:億円)
電機大手直近7年間の純損益推移(2009年3月期は直近予想)(単位:億円)

売上高の減少割合に対し、営業損益・純損益の下落の急さが把握できるが、これは元々売上高営業利益率(売上高に対する営業利益の比率)がさほど高くないことに加え、売上があっても無くても発生する固定費用(建物の維持費や人件費など)が高いこと、さらに原材料費の高騰などが要因として挙げられよう。

ともあれ、騰落率が2009年3月期に大きく下落したこと、そして全社に大規模な状況の変化が起きていること(中には以前にも売上を落としていたが営業・純損益はトントンだったところもあったが、今期はまったく状況が異なる)があらためて理解できるはずだ。

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