「強引な値切りの中止」「派遣などの労働条件改善」を・テレビ制作現場が放送局に直訴

2009年01月28日 08:00

直訴イメージテレビ番組を制作する制作会社の連盟としては日本最大級の規模を誇る全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)は1月27日、【在京・在阪の放送事業者への緊急のお願い】を発表した。不況下の中で番組制作会社の経営が悪化し、さらに元受に当たる放送事業者(いわゆるテレビ局など)からの制作費の締め付けなどを受けて、東京・大阪の放送局に対して委託契約時の着手金支払いなど6項目を求める内容となっている。

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今件はすでに民間放送連盟と在京のキー局、さらには在阪の準キー局へ通達済みとのことだが、6項目の概要は次の通り。

1.現況ではキャッシュフローの確保が厳しい。番組制作委託契約時に制作費の一部を着手金として交付して欲しい。

2.4年前に制定された下請法で定められている、番組予算額が記入された発注書面の交付がなかなか実践されていない。制作現場のプロデューサへの徹底を要請。

3.制作費の削減が求められているのは理解できる。しかし「無条件に一律カットを製作会社に求められることは、下請法の禁止事項である『買いたたき』にあたる」ことを確認してほしい。

4.制作費の削減が求められているとはいえ、「再放送の増加が程度を超えるとテレビメディアの魅力を損なう自滅行為に通じかねない」。次世代の作り手たちが「夢」をもって制作にあたれるような魅力的な放送番組の開発にエネルギーを傾注すべき時期に来ているのではないか。

5.AD(アシスタント・ディレクター)不足がとりわけ情報バラエティ番組の領域において顕著。派遣契約による制作現場においても同様。労働条件の改善に協同で当たるべき。

6.放送事業者が独占している著作権について、中長期的な視野・制作会社の経営安定・二次展開の可能性・現場人材のモチベーションの向上もあわせ、再検討を願いたい。


制作会社の制作費問題については、先の「発掘! あるある大事典II」のねつ造問題で(事実上)初めて公に数字が露出したが、これによれば

スポンサーの花王が電通に渡した広告料……1億円

電通による管理費:1500万円(15%)

放送事業者の「電波料」:4800万円

放送を行う関西テレビの「電波料」:500万円

下請けの日本テレワークの経費(スタジオゲストの出演料、収録料、最終編集費など):2340万円

最終的な孫請けプロダクション(制作会社)に渡る制作費……860万円

※「あるある」の事例。週刊東洋経済2009年1月31日号、事件後の各種報告書などから作成


という図式が成り立っている。ちなみに「電波料」とは地方局の経営の補助のために、キー局から割り当てられる形となっている補助金・中間マージンのことをさす。要は「権利で得られるお金」。

先の「あるある」ねつ造事件や、先日発覚した「ネット上の情報にはうそが多い、という情報そのものの説明が制作側の自作自演だった」件も、遠因には制作現場に渡る費用が少な過ぎるのがあるとされている。「3.」や「4.」でATPが訴えている事情もこのあたりにあるのだろう。

また、6項目の要望の中身を見直すと、昨今において社会問題化され報道などが声をあげて取り上げ、非難糾弾している内容と一致する部分がいくつも見受けられる。ATPがこれらの要件について改善を求めているということは(ATP側が虚偽の意見を述べていないとすれば)現時点ではこのような状況が、放送事業者と制作会社間に(放送事業者側の意図で)まん延していることになる。

今後どのような形でこの訴えを受け取った側が対応するのか(「報じるのか」も含め)、注目していく必要があるだろう。

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