年齢層別の交通事故死者数をグラフ化してみる

2009年01月05日 06:30

横断するのを待つ老夫婦イメージ直前の【戦後の交通事故・負傷者・死亡者をグラフ化してみる】で元資料である【平成19年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について(PDF)】や関連報道をチェックしていた際に、気になる表記が目に留まった。曰く、「今後は今まで以上に高齢者対策に力を注ぐ」というものだ。確かに人口ピラミッドを見ても全体に占める高齢者の割合は増加しているが、それ以上の傾向か何かか見受けられるのだろうか(いや、比率云々は別にして、絶対数で増加していること自体が問題なのだろうが)。そこで今回は年齢階層別に交通事故死者数「など」をグラフ化・グラフの抽出をしてみることにした。

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資料はやはり「平成19年中の交通死亡事故の特徴及び道路交通法違反取締り状況について」。今月中には2008年のデータを反映させた最新版が出るだろうが、現状では2007年分までのデータを元にする。

まずは年齢階層別、そして積み上げた、事故死亡者の推移。これは他の記事同様「事故発生から24時間以内の死亡者」に限定している。

年齢層別交通事故死亡者推移(積み上げ)
年齢層別交通事故死亡者推移(積み上げ)
年齢層別交通事故死亡者推移(年齢層別)
年齢層別交通事故死亡者推移(年齢層別)

全体数が減少の傾向を見せているのはすでにお伝えした通りだが、茶色が濃い層、つまり高齢者(65歳以上)のバーの部分がさほど縮んでいないように見えるのが分かる。また、折れ線グラフの各年齢層別を見ると、75歳以上がほとんど横ばいであるのがわかる。

そこで今度はこれを各年毎の死亡者数全体に占める割合でグラフにしたのが次の図。一つが棒グラフで各年ごとに占める割合が分かりやすいように、もう一つは折れ線グラフで各年齢層毎の割合の変化を見たもの。

年齢層別事故死亡者の推移(全体に占める各年齢層の割合、各年毎の割合)
年齢層別事故死亡者の推移(全体に占める各年齢層の割合、各年毎の割合)
年齢層別事故死亡者の推移(全体に占める各年齢層の割合、各年齢層の割合の推移)
年齢層別事故死亡者の推移(全体に占める各年齢層の割合、各年齢層の割合の推移)

死亡者数は各年齢層で減少しているが、75歳以上がやや横ばい、65~74歳の減少率が低いため、全体比率では逆に増えてしまっているのが確認できる。

それでは高齢者の交通事故による死亡はどのような傾向を見せているのか。それが分かれば減少のかぎがつかめるかもしれない。そこで65歳以上の高齢者における、交通事故死亡状態別人数推移を示したのが次の折れ線グラフ。

高齢者(65歳以上)の状態別死者数推移(人)
高齢者(65歳以上)の状態別死者数推移(人)

「交通事故」であるにも関わらず、「歩行中」によるところがもっとも多く、次いで「自動車乗車中」、そしてそれとほぼ同じく「自転車乗車中」が上位についている事がわかる。

ちなみに同様のグラフを年齢階層別で作ったのが次の立体グラフ(資料から抽出)。

年齢階層別状態別死者数推移(人)
年齢階層別状態別死者数推移(人)

他の年齢層が自動車・自動二輪車乗車中による死亡事故が多いのに対し、65歳以上の高齢者では「歩行中」「自転車乗車中」による(=自動車などに巻き込まれる)事故による死亡が圧倒的に多いのが改めて確認できる。


グラフの作成は略するが、高齢者に限って死亡事故数が多い、そして全体における交通事故死者数の比率増加の要因の一つとされる「歩行中の死亡事故」「自転車乗車中の死亡事故」の法令違反別区分を見ると、

・自転車
 安全不確認……30.0%、交差点安全進行……10.5%、一時不停止……8.7%
・歩行中
 走行車両の直前後横断違反……20.4%、横断歩道外横断違反……17.3%、信号無視……6.8%


が上位三位を占めている。高齢者以外の割合とも大きく異なっており、その多くが「自分自身の身体能力への過信」が引き金になっていることが分かる。

自動車やバスなどの交通車両を運転している人なら、横断歩道が無い場所を平気で横断するお年寄りに遭遇したことは一度や二度ならずあるだろう。彼ら・彼女らの心境としては、「かつて交通量が少なかった時代と同じように(「渡りきるまで車などこないさ」)」「以前の若い頃の自分のように素早く」渡れると判断しているか、あるいは「自動車が来ても自分が歩いているのだから止まってくれるだろう」という甘い判断で横断している場合が多いものと思われる。

信号待ちをする老夫婦イメージしかし「飛び出すな 車は急に止まれない」の標語にもあるように、横断中の人間を見かけたドライバーが瞬時にブレーキをかけても、すぐ止まるわけにはいかない。結果として「カウント」されるような事態におちいった場合、本人はもちろん家族も、そして半ば巻き添えを食った形となる自動車運転手にも大きな不幸が襲い掛かることになる。

高齢者の人口そのものが増加するにつれ、事故対象者の絶対数・全体に占める割合においても高齢者が増えてしまうのは、統計学上仕方ないと見る向きもある(例:同じ1%でも100人ならば1人でしかないが、1万人の場合は100人となる)。しかし一方で、「絶対数」として見た場合、「仕方ないで良いのか」という考え方もある。高齢者の場合、「カウントされるような事故」の発生起因はある程度特定されることを考えると、今後はこれらの対策への注力も考える必要が出てくるだろう。

……とはいえ。自動車乗車中ならともかく、自転車・歩行中の場合、自動車側に出来ることは少ない(車体全体にクッションをつけて衝撃を抑える、時速20キロ以上の走行を禁じるわけにもいくまい)。徹底した啓蒙活動と、周囲の注意がまずは求められよう。

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