「おじいちゃん・おばあちゃんにもゲームを」ゲームがお年寄りの脳機能を改善させる可能性

2008年12月24日 06:30

老人イメージ【HelathDay】が12月23日に伝えるところによると、アメリカ・イリノイ大学のChandramallika Basak氏らの研究によって、「テレビゲームが老人の認識機能を改善する可能性がある」ことが明らかになった。まさに「脳トレ」を地でいく研究結果といえる。同研究は「Psychology and Aging」12月号に掲載されたとの事(【イリノイ大学の発表リリース、12月11日発】)。

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元々テレビゲームは若年層の問題解決能力を訓練させることや手術の技術向上(昔「ザ・ブレイン」という脳手術を再現するゲームすら存在していた)に役立つことで知られている。今回Chandramallika Basak氏がトレーニング用に使ったのは『Rise of Nations』(日本語版は『ライズ オブ ネイション~民族の興亡~』)。多数のコマが同時に動くゲームの舞台の中で、自分の国を栄えさせ、国力を増強させ、敵に攻め込んでいくという「リアルタイム戦略級シミュレーションゲーム」である。もちろん自分のコマも大量にゲーム内に存在し、それらに適切な指示を与える必要がある。「マルチタスク能力」が求められているわけだ。

大学の近所に住む60~70歳代のお年寄り40人(ゲームプレイの経験無し)を対象に、このゲームのプレイ前後での認証能力試験を行った。まず最初に全員に認証能力試験を行い、次にお年寄りを2グループに分ける。半数にはゲームによる「トレーニング」をした(2か月に渡って23.5時間)上で、もう半分は「トレーニング」をせずにもう一度、同時期に試験を実施した。

実験の結果、ゲームをプレイしたグループは、記憶力、推理力、さらには変化する事象に対する反応への能力にも優れた結果を出した。ゲームをプレイすることにより、老化でこれらの能力が衰えてしまったと感じている人にとって、有益な結果をもたらす可能性が導かれたわけだ。

例えば若年層には複数の料理を一度に作ったり、ドア越しに応対したり、電話で話すのはたやすいことかもしれない。しかし歳を取ると料理を焦がしてしまうなど、思うがままに出来ないこともありうる。要は複数の行動を同時に行うことがうまくできなくなる。しかしゲームのプレイを重ねることでこれらの能力、すなわち「マルチタスク能力」の訓練となり、能力自身が改善するかもしれない。さらに興味深いのは、ゲームが精神的・認識能力的な能力だけでなく、他の機能をも活性化させたことだ。

ただし問題なのはゲームをプレイした老人が元々認識力が高いかったかもしれないということ(もちろん事前に認識力調査は行っているが……)。本当にゲームで遊ぶことで認識力があがるのかについて、さらに調査をしなければならないとBasak氏はコメントしている。

一方、独りでゲームをプレイしてばかりいると、認識力などが上がっても他の健康面(例えば社交性)でマイナスを生じる場合があると警告する専門家もいる。しかしチェスを始めとする思考型のゲームを(ネットワークを通じて)他人とプレイすることにより、社交場のマイナス点が生じるという問題点をクリアできる。それに「認識力が向上したという結果が出ても、それは統合的な結果であり、その過程でさまざまなプラスの効用が生じている(。だからそれら多数の効用のことを考えればもっと注目してもよいはずだ)」とはBasak氏の弁。

Basak氏は続ける。「テレビゲームを楽しむ人の脳は、遊びたくない人と比べて違いがあるに違いない」「もちろん社交的な行動や運動、そして食生活への注力も忘れてはならないだろう。ゲームをすることだけがお年寄りにとってプラスとなる行動というわけではない」。

パソコンや携帯電話、携帯ゲーム機が普及し、高齢者もごく普通にこれらの機器に触れる、利用する機会が増えてきた昨今。日本でも「脳トレ」周り以外でも、本格的に高齢者のトレーニングとゲーム機との関係を調べる研究が発表されてほしいものである。


(最終更新:2013/09/05)

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