テレビ朝日の下方修正をグラフ化してみる

2008年12月17日 08:00

テレビ朝日イメージ【テレビ朝日(9409)】は12月16日、2009年3月期の連結決算について下方修正の発表を行った。それによると10月に発表した今期期末の連結純利益26億円が、1億円(-96.2%減、前年比-98.4%)になり、テレビ事業単独の個別決算では営業利益だけでなく最終純利益でも開局以来初の赤字になる予想であることが明らかになった。主にテレビ広告の出稿減が下方修正の原因であるとリリースでは説明している。なお今期見通しの下方修正は今回で3回目となる(【発表リリース、PDF】)。

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連結において売上は前回予想と比べて-1.6%・40億円に過ぎないが、本業だけの利益から算出される営業利益が-80.7%・33.5億円と(金額ではなく)割合で大幅に減少している。これは本業における採算分岐点ギリギリのところまで売上が減少しており、これ以上の売上減はダイレクトに赤字に直結することを意味している。

また、経常利益も-54.2%・32.5億円となり、本業以外の事業での挽回がうまく行っていないことを意味する。さらに最終純利益が1億円と計上されているが、経験則上、上場企業において「最終純利益予想が1億円(などのギリギリな、そしてキリの良い黒字額)」の場合、数字合わせ的に黒字化させる計算が行われている場合が多く、決算時にはこれがマイナスに触れる可能性は否定できない。

テレビ朝日連結決算業績予想(前回予想との差異)
テレビ朝日連結決算業績予想(前回予想との差異)
テレビ朝日個別決算業績予想(前回予想との差異)
テレビ朝日個別決算業績予想(前回予想との差異)

リリースでは今回の下方修正について

金融危機に伴う世界経済の減速により、株式市場は不安定な状態が続いており、景気の先行きも、雇用情勢の悪化など、厳しさを増しております。このような経済状況のなか、テレビ広告市場は、東京地区のスポット広告の出稿量が前年同期を大幅に下回るなど、大変厳しい状況となっております。タイム、スポット収入の落ち込みや、当社の保有する上場株式について、評価損の発生が見込まれることなどから


と説明している。

すでに何度と無くお伝えしているように、テレビ広告の中でも番組と番組の間に流す「スポット広告」は減少を続けており、これが大きく売上に響いている。一部報道ではテレビ朝日におけるスポット広告の通期減少割合を前年比で-10.8%減としているが、これまでの状況を見れば2ケタ台のマイナスは避けられないだろう。本業外事業でやや頑張っている(減少額が多少持ち直している)ものの、特別損失(保有しているインデックスHDなどの株式評価損)などもあり、本業の減少分をまかなうまでには至らなかったようだ。

特に個別業績(テレビ事業部分)では今期は最終的に本業部分の営業利益、さらには純利益も赤字となる。これが予想通りなら、開局以来の赤字転落ということになってしまう。その上すでに触れているが連結の最終黒字も「1億円」で、多少のぶれで赤字に転落する可能性もあり、場合によっては「連結決算でも今期は最終赤字に転落」となるかもしれない。

【KDDI、テレビ朝日、朝日新聞社による連携ビジネスの推進について(PDF)】の発表にもあるように、先日テレビ朝日では朝日新聞・さらには【KDDI(9433)】と連携して相互情報提供・相乗効果を期待できる事業展開に関する提携を結んでいる。これも手持ちの経営資源を用いて売上をかさ上げする方策を模索した上での結論の一つだろう。

リリースでは「経済減速で広告出稿が減った」とある。しかし出稿を減らした企業が、広告展開すべてを打ち切ったわけではない。なぜテレビ広告、特にスポット広告が「優先順位が低い」として打ち切られ、減少の憂き目を見ているのか。そのあたりから考え直す必要が、テレビ局には求められているのかもしれない。


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