【更新】無料動画は「音楽」「アニメ」「ドラマ」が大人気、有料動画は……

2008年12月05日 06:30

インターネットイメージC-NEWSは12月3日、動画配信サービスに関する調査結果の一部を公開した。それによると、動画配信サービスの利用において、無料サービスでは「音楽」「アニメ」「ドラマ」関連のコンテンツを利用する人が多数を占めていることが明らかになった。一方で有料はほとんど使われていないことからまとまった数が提示されていないが、わずかな違いから「有料動画配信サービス」の活路を見出すことができる([発表ページ])。

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今調査は11月7日から9日までの間に、15歳から59歳で過去一か月間に映像コンテンツを視聴した経験のあるインターネットユーザー1000人を対象に行われたもの。男女比は1対1、年齢階層比は10代~50代の十年区切りで均等割当。

動画配信サービスにおいて、「無料」「有料」それぞれの料金体系で利用している動画のカテゴリーを回答してもらったところ、「無料」ではずば抜けて「音楽」が多く、唯一過半数をこえていた。

有料・無料サービスにおける動画配信で、利用しているコンテンツのカテゴリー
有料・無料サービスにおける動画配信で、利用しているコンテンツのカテゴリー

(少なくとも当方から見れば)意外だったのが「音楽」がトップについたこと。プロモーションビデオのようなものや、イメージビデオの類の動画を楽しむ人が多いということだろうか。この仮説が正しいとすれば、無料「動画」の普及が音楽配信ビジネス、さらには音楽CDのシェアを侵食している可能性もある。しかし逆に「無料動画で気に入った曲を見つけ、そのデータを元に公式サイトから有料でダウンロードしたり、音楽CDをアマゾンや楽天市場で購入する」といった、インターネット上の「気づきビジネス」が成立している可能性も否定できない。どちらが正しいのか、あるいはどちらのパターンが多いのか(要は「無料動画で満足する」か「さらに有料のコンテンツに手を出す」のか)は、別口の調査を行わないと判断できない。

無料動画利用者は
「音楽」以外では
テレビ番組の
1.補完
2.ランダムアクセス
を求めている。

「音楽」に続くのは「アニメ」、そして「ドラマ」。いずれもテレビ主体のコンテンツであることが分かる。リアルタイムで閲覧できなかった、あるいは録画を逃したものや、過去の番組を視聴するというところだろう。長年のデータを保有するテレビ局は、この層に訴えかければ多くのニーズを勝ち取るはずだ。また、順位は多少下がるが「バラエティー」や「その他の趣味・実用」も(前者は民放、後者はNHK)もテレビ局のお得意領域。「無料で」という前提があるが、そこを突破できるビジネスモデルを創造できれば、新たな道が開けるに違いない(各番組の著作権問題も大きなハードルだが)。

有料動画は……これがツボ!?

一方有料動画は、利用者がほとんどいないためか回答率が1ケタ台前半しか存在しない。しかしそのような「どんぐりの背比べ」の中でも、わずかながら「映画(洋画)」「映画(邦画)」「アダルト」の3項目が他項目よりも優位な位置にある。ここに有料動画のツボ、というか現状打開策があるように見える。

【別記事】で触れているが、有料動画は「ビジネスラインとして単体で採算をとるのではなく、付帯的なサービスとして提供しているだけで、単独では赤字でも全体として利益があがればよい、つまり呼び水的なものという立ち位置」で考えている企業もあるだろう。その場合は採算を考える必要は(あまり)ない。だが「できれば有料動画でも収益をあげられるように」という意向ならば、

1.利用者が少数でも利益が出る体制(原価を安くする、利用料金を高める)を作る
2.利用者が集まるような仕組み・コンテンツを考える
3.利用者「以外から」売上・利益を得られるようにする


いずれかを考えねばならない。まず「3.利用者「以外から」利益を得られるようにする」は広告的な動画(例えば新規売り出しのアイドルを、事務所から料金を徴収するなどして)の配信が考えられる。しかし無料視聴ならともかく、有料の動画において「利用者”以外”」からの売上を期待するのは本末転倒。さらに「ひとりでも多くの人に告知」したいのに利用者が限定される有料動画で配信するのは筋が違う。よってこれは却下。

「1.利用者が少数でも利益が出る体制」は言うのは簡単だが作るのは難しい。他からコンテンツを買い上げる以上、安値で買えるものは人気も低いし「お金を払ってでも見たい」と思う人は少ない。一方、料金を高くすれば「支払う代金と見たい欲求」のバランスが崩れ、利用者がますます少なくなる。これも非常に難しい。

・安く仕上げら価値のある動画を有料化する
・「お金を出してでも観たい」ものを提供する
 (訴求力が極めて強いもの)

唯一可能性があるとすれば「自前で安価に作れる、しかも人気の高い動画を配信する」こと。例えば芸能プロダクション自身ならこれが出来る。他には例えば「超カリスマの教師を抱える塾」なども容易に想定できよう。

一番可能性が高いのは「2.利用者が集まるような仕組み・コンテンツを考える」。ここで先のアンケート結果が活きて来る。有料でも閲覧されているカテゴリーの上位は「映画(洋画)」「映画(邦画)」「アダルト」。いずれも元の媒体において「質の高いものを求める傾向が強い」「(内容が良ければ)お金を出してでも視聴したい人が少なからずいる」分野である。「無料でも見られるからいいや」ではなく「有料でも是非見たい」と思わせるものを提供すれば、必ず一定数以上の利用者が集まる。しかも映画やアダルト系はライブラリ性が強いため、スケールメリット(量をそろえればその量の増加分に比例して、ではなく累乗的に効果が発揮される)も得られる。

あとは支払いの際の手間を出来るだけ少なくする、可能ならば携帯電話の有料コンテンツ利用時のような気軽さで使える仕組みを提供することができれば、有料動画の可能性も大きく広がることになる。


問題点は2点。「気軽な少額決済システム」と「画質」。後者は先にYouTubeがHDに対応したことから、ある一定の可能性が見えてきた。具体的にはHDに対応した動画をアップロードすれば、再生時のURL末尾に「&fmt=22」をつけることで、HD対応の動画を閲覧することができるようになるというもの。再生端末のスペックや回線速度の問題もあるが、利用者ベースの問題であり、それが解決できれば画質の面ではグゥのネも出なくなる(【これなどで実際に確かめて欲しい(GT5プロローグ オープニング HD画質バージョン)】)。※当方のパソコンのようにマシンスペックが低いとコマ送り状態になる。ご注意を。

もう一点の「気軽な少額決済システム」は日本における有料コンテンツ共通の課題。カード決済が次点的なポジションにあるが、カードを利用しない・もてない人もいるし、できるだけカードは使いたくない人もいるだろう。プリペイドカードの利用も考えられるが、規格が統一されているわけではない。あるいは携帯電話のキャリア側が、電話料金と一緒に徴収する形となり、円単位でのプリペイドナンバーを発行してくれるような仕組みを提供してくれるとありがたいのだが。

ともあれ、現状では「ダメダメ状態」の有料動画だが可能性がないわけではない。「視聴者自身からではなく、第三者から収益をあげる無料動画タイプのビジネスモデル」が動画配信においても(テレビ放送同様に)主流となり続けるだろうが、それでも映画やDVDソフトが世の中から消えないように、ニーズは必ずある。素材もある。あとは誰が「賢い仕組み」を作り、提供していくか、の問題だろう。

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