ビッグ3の本気度を公式ページでかいまみる

2008年12月15日 06:30

フォード社イメージ一般報道や当サイト他記事でもお伝えしているように、アメリカの主要産業である「自動車産業」の象徴ともいえるビッグ3ことGM(ジェネラル・モーターズ)・クライスラー・フォードが経営危機におちいっている。救済法案がUAW(全米自動車労組)と共和党の間における賃金引下げ交渉決裂で破たんした今、金融危機救済資金ことTARP(不良資産救済プログラム)で何とか救済できないかと各方面で動きを見せている。それでは各社は自社公式ページで分かりやすく何かアピールをしているのだろうか。現時点における3社の公式ページを見てみることにした。

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GM……自社の技術的進歩を強調

GMの公式サイト
GMの公式サイト

GMの公式サイトのトップを見ても、企業救済(BailOut)に関する記載を見つけることは出来ない。前面にプッシュされているのは同社の子会社が運営している、車載通信サービスOnStarの技術力と便宜性の素晴らしさ。自動車内部からインターネット経由でホテル、レストランなどの予約が出来たり、緊急時にはGMから救急車を派遣したり、遠隔操作でドアを開けたり、さらには自動車が盗難にあった時にも位置を追跡する(日本でも警備会社が導入している、あのサービスだ)システムだ。

あえてOnStarというGM独自のサービスをアピールしているのは、GMそのものの「世界最大の自動車メーカー」という意地、「GMの技術力の高さ」をアピールすることで「GMは破たんさせるべきではない」という好意的解釈を期待しているのだろう。一方で「万一うちがコケたら、子会社運営のOnStarがどうなるか分からないよ?」という、利用者に対するブラフの意味もあるのかもしれない。

フォード……「自社の未来は明るい」と計画提示

フォードの公式ページ。右側上部に目立つ形で「計画を提示します」のメッセージ
フォードの公式ページ。右側上部に目立つ形で「計画を提示します」のメッセージ
具体的プランの画面。CEO自らが動画(YouTube)でその抱負を語る
具体的プランの画面。CEO自らが動画(YouTube)でその抱負を語る

フォードもトップページはごく普通のように見える。しかし右側に「計画がありますよ」というメッセージ。ここをクリックすると、具体的計画内容を見ることができる。

CEOのビル・フォード氏が動画に登場して抱負を語るこの計画は「実にシンプル。現在、そして未来においても最良の車を作り続けること」というもの。「現在すでに進行中」「安全性を高める」「あらゆる技術を導入し、製品に反映させてきた」「質の面でトヨタやホンダとデッドヒートを繰り広げてきた」との説明……ではあるが、今ひとつ説得力に欠ける。先のGMにおけるOnStarのような、アピールが心に響くだけの具体的材料が無いのだ。

クライスラー……「同情するなら金を貸せ」

クライスラーの公式ページ。単純明快。
クライスラーの公式ページ。単純明快。

最後にクライスラー。ある意味、これほど分かりやすいものもない。メッセージに曰く、「倒産しないために企業救済を求めているわけではないのです。成功を手助けしてくれるための貸し出しをお願いしているのです。環境に優しい自動車、電気自動車などを開発中で、2010年初頭には素晴らしい電気自動車をご提示できるはずです」とある。そして右下のクリックボタンには「なぜあなた方がアメリカの自動車産業に手を差し伸べなければならないのか」という説明があり、【専用のページ】と共に数々の説明が行われている。

専用の説明ページはともかく、トップページに自社製品やイメージ展開でなく、率直に、恥も外聞もかなぐり捨ててまで問いかける文章は、現状がダイレクトに感じられるともいえる。


現状を皮肉った自動車広告イメージ。意味は「どーせうちのへタレ車なんてお前ら買ってくれないだろ。でもいいんだ、どのみちお前らの税金からいただけるんだから。破たん救済は来年1月です」以上3社のサイトを見て回ったが、率直な感想としては「一番頑固なのがGM、切実なのがクライスラー」というところだろうか。現時点における3社の財務状況はざっと説明すると

・GM……年末までに40億ドル、2009年3月末までに120億ドルが必要。
・フォード……他環境に変化がなければ来年までの資金繰りは問題なし(2006年に借り入れた230億ドルが効いている)。
・クライスラー……サーベラス・キャピタル・マネジメント(プライベートエクィティ)が株式の大半を保有。そのため政府融資=サーベランス~への融資とも認識されるため、問題が生じている。他社との合併が必要不可欠との分析も。「なぜサーベラス自らが救済に乗り出さないのか」という意見もある。
・三社とも……UAWとのコスト削減交渉、大規模なリストラが必要。計画の甘さも指摘。


いずれにせよ、何かを決断するにしても、残された時間はさほど多くない。年末までには大きな、新たな動きがあるに違いない。

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