各国の過去2年間における消費者物価指数変化率をグラフ化してみる

2008年12月02日 06:30

物価上昇イメージ総務省統計局は11月28日、東京都区部における消費者物価指数の中間速報値を発表した。総合指数は101.4となり、前年同月比で+1.1%を記録した。上昇機運は継続中であるものの、夏以前の急騰ぶりからはやや落ち着きを見せつつある。そして公開データには主要国の過去二年間における、消費者物価指数の変化率も掲載されていた。物価や資源の価格動向を確認する良い資料なので、ここにグラフ化することにする(【発表ページ】)。

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消費者物価指数とは、全国の世帯が購入する家計に関係する財やサービスの価格などを総合した物価の変動を、時系列的に測定するもの。家計の消費構造を一定のものに固定して、これに要する費用が物価の変動によって、どう変化するかを指数値で示したもので、毎月作成・公開される。指数計算に採用している各品目のウエイトは総務省統計局実施の家計調査の結果などに基づいてる。諸外国の消費者物価指数も細部こそ異なれど、概要は同じようなものである。

さて、まずは日本国内における消費者物価指数の、前年同月比における変化率をグラフ化する。対象となるデータは2006年10月から今年の10月まで。

日本の消費者物価指数変化率
日本の消費者物価指数変化率

主要資源価格の動向は【4か月で20分の1に! 鉄スクラップの価格をグラフ化してみる】などで詳しく解説しているが、2007年夏の「サブプライムローンショック」で株価が急落した後、投機マネーが商品先物市場に殺到し、それ以降価格が急騰。証券市場の不安定感が増した今年春から初夏にかけて再び上昇を見せ、その後せきを切ったかのような急落を見せている。案の定物価指数もそれに近い動きを見せているのが分かる。

また、グラフのコメントに記載しているが、今年の8月~9月以降は「昨年の」夏以降の急騰以降1年が経過しているため、「前年」同月比では数字がある程度抑えられているのも見て取れる。一部石油輸出国では「現状はオーバーシュート(下がりすぎ)だ」という意見もあるが、ここしばらく(短期で、という意味)は今夏のような「異様な状況」に戻ることはないだろう。ともあれ、日本の物価は去年夏以降急速に「上昇」していることは理解できるはずだ。

さてそれでは次に、同じように主要国の物価指数変化率をグラフ化することにする。但し書きとしては、イギリスが小売物価指数(RPI)、イタリアは「たばこ」をのぞいた総合値であること。厳密には他国と併記するのはやや難があるが、概要をとらえるのならば許容できる範囲といえる。

主要国の消費者物価指数変化率
主要国の消費者物価指数変化率

ぱっと見で「日本の物価上昇率、他国と比べたらまだ低い水準なのか」というのが見て取れる。その他、気がつくことを箇条書きにまとめると、次のようになる。

・去年夏の「サブプライムローン・ショック」以降の物価上昇は各国共通。
・ただし「イギリスはそれ以前から物価上昇が続いている」「中国は世界に先んじて物価上昇の機運が見られる」などの特異例もある。
・上昇率では中国がもっとも大きく、期間も長い。
・2008年初夏前後の「商品市場価格の天井値」に向けた物価高騰とその後のシーンでは、他国がほぼ同時系列で並んでいるが、中国は数か月早くピーク(2月~4月)を迎え、急落を見せている。
・今夏の商品先物市場の急落後は各国とも物価指数も下落を見せているが、イギリスは高止まりを見せ、韓国は下げ幅が低く高水準を維持する傾向が見られる。


これらの値はあくまでも「消費者物価指数」の「前年同月比」であり、商品市場そのものを反映しているわけではない。大抵において、商品市場動向との間には多少のずれを見せている(原材料が値下げしても商品価格がすぐには下がらないのは、皆が肌身を持って理解しているはずだ)。それでもなお、各国の物価指数・消費者の生活の苦しさと共に、それぞれの国の経済動向を推し量る手立てにはなるはず。

今後の動向には商品市場の動向をはじめとして、注意深く監視を続けていく必要があることに違いない。しかし少なくとも現状では「日本はそれなりにうまく立ち回っている」のではないかと思われてくる。あくまでも比較論でしかなく、「他人の家の生活事情を見て自分の生活が楽になる」わけでも決して無いが、「感情論やデマゴーグを基にした情報ではなく、正しい数字を元に」色々と再認識することは可能だろう。


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【各国の消費者物価上昇をグラフ化してみる】

(最終更新:2013/08/01)

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