年長フリーターの状況改善せず

2008年11月23日 19:30

時節イメージ内閣府は11月21日、2008年度版「青少年白書(平成20年版)」を発表した。それによるといわゆる「フリーター」と呼ばれる人の数は全体としてここ数年の間に減少傾向が見られるものの、25歳~34歳が該当する「年長フリーター」の数はほとんど変わらず、状況に変化が見られないことが改めて示された。白書では「年長のフリーターの滞留傾向がうかがわれる」とし、警告を発している(【発表リリースページ】)。

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「青少年白書」は青少年の現状と青少年に関する施策を広く国民に紹介し、その理解を得るため昭和31年(1956年)から、関係省庁などのの協力の下に内閣府が編集・発行しているもの。つまり各種データは既存の公的機関の調査資料が元になっている。また、今回発表されたデータを元に12月上旬をめどに、書店などで紙媒体版が入手できる予定。

今回抽出する「フリーターの人数の推移」については、すでに発表済みの【厚生労働白書】を転記したもの。そこで、そちらのデータを元に再度グラフ化してみることにする。

ちなみに「フリーター」の定義は

・15~34歳
・男性は卒業者、女性は卒業で未婚の者
・1.「雇用者」(雇われて働いている人)のうち「パート・アルバイト」
 2.完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」
 3.非労働力人口のうち希望する仕事の形態が「パート・アルバイト」で家事も通学も就業内定もしていない
 のうちいずれか


の3条件を満たすものとしている。つまりパートやアルバイトを現在していなくとも、正社員の口ではなくアルバイトの働き口を探していれば「フリーター」になる。

フリーター人数の推移
フリーター人数の推移

なお1997年から2002年にいたる過程で定義を大幅に変更している。グラフの形成上同一視しているようにも見えるが、対象年齢層が同じだけで実際には大きな差異が生じていることに注意して欲しい(今グラフでは棒の部分の色を変更した)。

・フリーターの減少
 施策の効果
 若年層人口減少
 雇用形態の多様化
 (派遣など
  →フリーターの定義外)

さてグラフを見れば一目瞭然なのだが、ピーク時の2003年から少しずつではあるものの、フリーターの数は減少傾向にあることが分かる。その理由について青少年白書では触れていないものの、厚生労働白書では「フリーター25万人常用雇用化プラン」の施策効果と説明している。実際にはその他に若年層人口そのものの漸減や、派遣社員をはじめとした雇用形態の多様化で「パート・アルバイト」に該当しない人が増加したものだと思われる。

しかし一方で年齢階層別で見直すと、減少傾向にあるのは主に15~24年層であり、25~34歳のいわゆる「年長フリーター層」では減少率がきわめて小さく、雇用状況の改善に遅れが見られることが分かる。特に2007年においては、比較可能なデータが残っている2002年以降ではじめて「年長フリーター層の数が若年フリーター層数を上回る」結果が出ている。

年長フリーターの状況が改善されない理由について厚生労働白書では、

・フリーター経験がキャリアとしてプラスに評価されない
・フリーター状態が長いと不安定就労から抜け出せなくなる


と説明している。要は「フリーターのスパイラル状態」に落ち込むという説明である。実際に企業側の評価も例示されているが、フリーター経験については「6割……評価に影響しない」「3割……マイナスに評価」としており、フリーターの経験がますます正社員などの雇用状態の改善に悪影響を及ぼしていることが見て取れる。


両白書とも「年長フリーター」そのものには解説を加えているものの、年長フリーターの上の階層、つまりその他の定義はそのままで年齢部分が「35歳以上」については何らコメントをしていない。これは元々まとまった統計データが無いからだと思われる(分散している形では存在しているのだろうが……)。

25~34歳の年長フリーター層が問題視されている以上、それらの人たちが年を経て、年齢区分から外れた後の人数も今後増加するはずである。新たな定義をするのか(壮齢フリーターか?)、それとも既存の言葉の定義の解釈を広めるのかは不明だが、この数年のうちに実態調査が不可欠になることはほぼ間違いないだろう。


■関連記事:
【フリーター・ニートは減少中、ただし年長フリーターは……労働経済白書から】

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