誰が空売りをしているのか!? 東証・大証が空売り残高情報を公開開始

2008年11月12日 08:00

株式イメージ東京証券取引所と大阪証券取引所はそれぞれ11月11日、「空売りをした指定有価証券にかかる残高情報」の公開を開始した。大口の空売り実施者のデータを公開するもので、今後定期的に情報が提供されることになる。具体的には、(大口に限定されるが)誰がどの銘柄を空売りしているかが把握できるようになるというもの。(【東証該当ページ】【大証該当ページ】)。

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「空売り」とは言葉通り「手元に該当株式がない(空)のに、まずは株式を借りてきて売りを行い、株価が下がってから株式を買い戻し差益を得て、借りてきた株主に返す」という、「売り」から入れる投資方法。通常の株式投資では「買い」からしか入れないが、投資手法の選択肢を広げるものとして、またリクスヘッジ(持ち株の下落危険性を考え、同一、あるいは同じような値動きをする他銘柄を空売りし、株価上昇にも下落にも対処するというもの)の手法としても用いられる。

その一方、「騰げている時より下げている時の方が冷静な判断を失いやすく、パニック行動を誘導しやすい」人間心理から、空売りをダイナミックに行って株価を下げ、株主保有者のパニック売りを誘い利益を得る手段としても用いられることも多く、空売りを嫌う投資家も多い。さらに一般投資家には空売りできない銘柄も、機関投資家や証券会社は色々と手を尽くすことで事実上の空売りができるため、「個人投資家に対する差別」ととらえる向きもある。

今回公開が開始されたのは、空売り規制の強化に伴う金融商品取引法施行令の一部改正が施行されたためで、初日として11月7日の分が11日15時15分と17時に公開された。具体的にはそれぞれの銘柄の発行済み株式数の「0.25%」かつ「50単元(投資単位)」の空売りの委託申し込みを行った投資者は、証券会社などに空売り株式の残高や商号・名称・氏名・住所・所在地などの情報を提供。その情報が証券会社経由で東証から公開される仕組み。今後情報提供から2営業日後の夕方(7日の分は2営業日後の11日だったわけだ)に公開される。

11日に発表された資料では、機関投資家・証券会社の自己売買部門・個人など延べ33投資者。実に多種多彩な投資者が色々な思惑で空売りをしているのが分かる。例えば[アイフル(8515)]の場合、

Hachiman Capital……0.28%
Nomura International……4.81%
ドイツ証券……5.73%


で、合計10.82%もの株式が空売りのポジションを維持されていることになる。


効果と問題点

今回の空売り情報公開開始は、市場に必要以上の影響を及ぼす空売りを規制するのが目的。禁止するわけではなく、情報を公開することで「情報が公開されたら気まずいようなことはしないように」という、間接的な抑止力になる。元々これらの情報は証券会社など内部関係者には明らかにされていたものであり、市場における情報の公開性・平等性という点では間違いなくプラスに働く。

かつて手口情報を公開するか否かについて論議されていた際に、色々と(特に情報の不平等さでメリットを得ている筋から)反対意見やその理由がつけられ、結局非公開とされてしまった事例があるだけに、今回の空売り情報公開は画期的ともいえる。

「買うべきである」と
顧客に推奨して
自らは「大量に空売り」という
格付け機関の「矛盾行為」を
確認できる。

役立つ事例といえば、例えば急激に値を下げた銘柄があった場合、それが株主による投売りを起因とするものなのか、それとも空売りによるものなのかを推測することができる。また、「欲しい銘柄を安く仕込みたいため格付けを下げ、高く売りたい銘柄の格付けを上げているのでは」という疑惑が絶えない自己売買部門を直接・間接に持つ格付け機関の信用・信頼性を確認する一つの手立てになる。

例えばA証券が銘柄Bの格付けや目標株価を思いっきり上げ、その一方で大量の空売りをしていることが判明すれば、「A証券は高値で空売りして有利なポジションを得たいために、格付けを変更したのでは。自社の格付けに自信と信頼があるのなら、自分で推奨した銘柄Bを大量に売る行為はおかしい」ということになる。そのような行為が見つかれば、その機関の格付けは(たとえ格付け部門と自己売買部門が同一セクションでなかったとしても)信用性を失うことだろう。信用・信頼性といえば「主幹事会社が担当した銘柄を大量に空売りする」事例が発覚すれば、少なくともその会社からは(たとえ上場時にお世話になっていたとしても)そっぽを向かれる可能性が高い。

・情報の平等公開性
・証券会社の
「不誠実な格付け」確認
・インサイダー的動向の確認

他にも不祥事を起こしたり、破たんして大きく株価を下げた銘柄の直前に空売りをしている人物・団体が対象銘柄と深い係わり合いがありそうな人物だった場合、インサイダー取引の可能性をチェックすることができる。

問題点としては、公開ラインが「発行済株式数の0.25%かつ50単位」であるということ。そこまで面倒なことをするかどうかは不明で、悪質なルール回避には独自に東証・大証から指導があると思われるが、公開ラインにぎりぎり抵触しない(0.249999%など)範囲の空売り小口を大量に作り、公開対象から逃れるという考え方がある。

また、公開方法も現時点ではPDFによるもののみ。公開していることに違いはないが、使い勝手が今二つなのも事実。他の情報提供サービスのように、Excelなどの表計算ソフトで読み込めるタイプのデータ提供を切に望みたいものだ。

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