主な急落相場の株価下落比率をグラフ化してみる

2008年11月03日 12:00

グラフ化イメージ先の【日経平均株価の上昇率上位ランキングをグラフ化してみる(10月30日版)】などでもお伝えしているように、去年の夏以降株式市場全体が軟調化し、特に昨月10月は史上まれに見る大荒れの相場が展開されている。主な原因はサブプライムローン問題やCDS問題など、一連の「金融工学」による「実体化していないマネー」の暴走にあるのだが、まだまだ先行きは不透明な感がぬぐえない。先日アメリカの株式市場の動向を探れればと【歴代のアメリカ市場急落の下落率を比較してみる】を記事にしたところ、「日本の市場のグラフはないのか?」という問い合わせをいくつかいただいた。そこで今回は日経平均株価のデータを元に、主な急落相場の株価下落比率をグラフ化してみることにした。

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グラフの対象とした「急落相場」と「グラフ作成上の条件」は次の通り。

●対象「急落相場」
・石油危機(1972年12月~)
・ブラックマンデー(1987年10月~)(プログラム暴落とも呼ぶ)
・ITバブル崩壊(2000年4月~)(ドットコムバブル崩壊とも呼ぶ)
・バブル崩壊(1989年12月~)
・金融工学危機(2008年6月~)(現時点で進行中)

●グラフ作成上の条件
・対象急落期間は急落後、株価が持ち直し上昇を始める「まで」
・月単位、月末の日経平均株価を参照(※月半ばで一層下落している場合もあるが、ここでは除外する)
・直近の日経平均株価最高値から、どれくらいの割合で下落したかをグラフ化する


これらのルールに基づいて作成したグラフは次の通りとなる。

主な急落相場における日経平均株価の直近高値からの下げ率(月次)(クリックで拡大表示)
主な急落相場における日経平均株価の直近高値からの下げ率(月次)(クリックで拡大表示)

いくつか解説を加える必要があるだろう。まず一日では最大の下げ幅を記録した「プログラム暴落」こと「ブラックマンデー」関連だが、株価の回復は1か月半ほどで果たしている。これは当時まだ未熟だった条件付プログラム売買が一斉に作動したことによる暴落であり、対応も比較的容易だったからというのが要因。

「石油危機」は「オイルショック」とも言われる、今や歴史的なレベルのお話。意外に株価下落の割合は低く、直近高値の30%ほどで底を打っている。一方「バブル崩壊」では1年半経過したあたりで底値のように見えてじわりじわりと低迷・下落を続け、結局3年ほどかけて底値を探っている。相場格言に「小回り三月、大回り三年」というのがあるが、まさにそれを地でいった感がある。「ITバブル崩壊」は底値を1年半ほどでつけてから低迷が続くが、こちらもやはり三年近くの月日を要している。

さて今回、現在進行中の「金融工学危機」だが、グラフを見れば分かるように2008年の9月・10月で大きく下落し、一挙に直近高値の50%を割り込んでしまったことが分かる。しかしその一方で、先のアメリカ株式のS&P500のグラフと比べると、他の急落相場とあまり変わらないような形なのが、意外といえば意外。

9・10月の急落は4月以降の上昇相場への調整?イメージ仮にこれらの「急落相場」の下げ率を今回も踏襲(とうしゅう)するとすれば、下落率の余地はあと10%ほど。直近高値から現時点の下落率-52.7%にさらに10ポイント上乗せした下落率で下値を計算すると、6765.6円となり、【どこかで聞いたような値】に近い結果が出てくる。

気になるのはやはり9・10月の急落ぶりだが、「ITバブル崩壊」のチャートに近い動きをしていたものの、4月からの一時上昇機運で乖離が起き、それを解消するための急落と考えることもできよう(実際にはチャートの形の調整などまったく関係がなく、ファンドの投売りや為替の急変が主要因なのだが)。


「バブル崩壊」「ITバブル崩壊」と
歩みを同じくするのなら
「底値は6500円前後」「その後1年強は低迷」。
奇しくもそれは投資格言から導き出された
推論の答えとほぼ一致する。

チャートはその形そのものが事象を決定付けるものではなく、結果を表すものであり、市場参加者の心理に影響を与えるものに過ぎない。国際情勢次第(金融市場的には最近新興国やロシアがきな臭い)では、「10ポイント」どころかそれ以上の下落の可能性も否定できない。しかし直近過去二回の急落相場である「バブル崩壊」「ITバブル崩壊」にある程度追随する形となるのなら、「下げてもあと10%くらい」「底値は6500円前後が目安」「その後1年強ほどの低迷期が続く」という予想が立てられる。

そしてそれは奇しくも「小回り三月、大回り三年」「半値八掛け二割引き」など、過去の教訓から形成された投資格言から導き出された結論とほぼ一致する。非常に興味深い話ではある。

(最終更新:2013/08/02)

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