ゲーム・エンタメ系雑誌の部数変化をグラフ化してみる(2008年7月~9月データ)

2008年11月30日 12:00

「ニュータイプ THE LIVE」イメージ【社団法人日本雑誌協会】は11月28日、2008年7月から9月分の印刷部数を公表した。主要定期発刊誌の販売数を「印刷証明付き部数」ベースで公開したデータで、各紙が発表している「公称」部数より正確性はきわめて高く、雑誌の現状を「正しく」把握できるデータでもある。今回は、前回の一連の記事において当サイトのメインテーマにもっとも近い「ビジネス・マネー系雑誌」よりも読者の閲覧数が多かった「ゲーム・エンタメ系雑誌」についてデータをグラフ化し、前回からの推移を眺めてみることにする。

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具体的なデータは、【直近が2008年7月~9月のもの】。先に記事にしたのは直近データが4月から6月のものだったので、それから3か月が経過したことになる。いずれも「1号あたりの平均印刷部数」で、印刷証明付きのもの。つまり「この部数を間違いなく刷りました」という証明がついたものであり、雑誌社側の公証部数ではなく、また「販売部数」でもない。雑誌毎に季節による売上の変動や個別の事情があり、そのまま比較すると問題が生じる雑誌もあるが、その場合は個別で説明していくことにする。どこまで雑誌数の印刷(≒販売)部数が変わっているが気になるところ。

それでは早速、まずは2008年の4~6月期と7~9月期における印刷実績を見てみることにする。

2008年の4~6月期と7~9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績
2008年の4~6月期と7~9月期におけるゲーム・エンタメ系雑誌の印刷実績

大きな順位変動は見受けられない。やはり「Vジャンプがずば抜けている」「週刊アスキー、なかなか奮闘してるよね」「アニメ系ではニュータイプが先頭か」などの傾向は3か月前通り。もっともわずか3か月で順位がいくつも変わるほど劇的な展開が起きるとも考えにくい。その雑誌が大ヒットする連載記事でも開始されれば話は別だが。

一連の記事で考慮している「季節特性」(夏休み・盆休みが期間に入るため、「通勤・通学の際に購入されやすいタイプの雑誌の印刷数が減る(=販売数が減る)」)と「データ特性」(提出データの精度が変わることで実情的には同じ値でも計算上は差異が生じてしまう)において、後者はともかく前者は「学生が休みを取りエンタメ系の雑誌をよく読むと思われる」ことから部数が伸びる要因になるとの仮説も考えられた。しかし実際にはゲーム・エンタメ系雑誌においても、そのほとんどが印刷部数を減らしているのが分かる。

さて次に直近3か月における印刷数の変移はどのようなものか、グラフ化してみることにする。

雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)
雑誌印刷実績変化率(ゲーム・エンタメ系)

前回記事のグラフが1年単位の変移であったのに対し、今回は3か月単位。より一層「作品の良し悪し」「新作映画やゲームとの関連」といったイレギュラー性の高い要因に大きく左右される可能性が高いのだが、それを考慮しても軟調ぶりが目立つ。前期比でプラスなのは3誌しか見当たらない。

「季節特性」「データ特性」、さらには直上で理由を説明した「イレギュラー構成要素」に配慮をし、「ぶれ」の範囲をプラスマイナス5%台とやや甘めに見ても、7誌までもがそれ以上の下げ率を見せている。あるいは「夏休み」は素人の当方(不破)が思っている以上にゲーム・エンタメ系雑誌が売れない季節なのだろうか。

「Vジャンプ」「ニュータイプ THE LIVE」は「ボラが大きい雑誌」!?

なお「Vジャンプ」については前回の記事掲載後「あの躍進ぶりの原因の一つは、オマケとしてついてくるプレミアカードに秘密がある。そのカードを求めて一人で何冊も買う人もいる」という意見をいただいた。確かにVジャンプにはそのような特典がつけられるし、読者層を考えれば指摘通りの購入衝動に走らされるのも何ら不思議ではない。機会があれば触れることもあろうが、とても賢い「ルソンの壷」式の仕組みを導入しているものとして評価すべき。

特定アイテムやテーマで
多くの読者を呼び込む雑誌は
対象次第で大きく印刷部数が
調整される可能性がある
(市場用語なら「ボラが大きい」)

逆に考えれば「7~9月期」はたまたま「複数買い」が行われるような(魅力のある)プレミアカードが付録につかなかった可能性もある。あるいは逆に前回の「4~6月期」に非常に人気の高いカードが付録だったのかもしれない。そのように考えれば今回の印刷部数減少数の原因は「内容のイレギュラー性による印刷数(=販売数)の変動の範囲」である可能性が高い。

同様に「ニュータイプ THE LIVE」も特撮ヒーローを中心にしたファン雑誌の傾向が強く、「お目当てのヒーロー」(やその関連情報、付録)が内包されていない場合、購入されない可能性は高い。それならば「-18.2%」という下げ率も納得はできる(もっとも部数的には3万3000部から2万7000部の5000部減に過ぎないので、単なる生産調整の枠内との考えもありうる)。

以上のような理由から「Vジャンプ」「ニュータイプ THE LIVE」が市場用語でいうところの「ボラが大きい(ボラティリティ=変動性が大きい)」雑誌の可能性は高い。「PASH!」も女性専用アニメ雑誌ということから、その傾向があるものと思われる。と、なるとそれに該当しない「YOMIRUI PC」や「ネットワークマガジン」などの軟調ぶりがかえって気にかかる。


他のジャンルの雑誌でもコメントしているが、「季節特性」「データ特性」やわずか3か月間の変移であることから、今回の印刷部数、そして前期との変移がその雑誌の中長期的な傾向を表しているとは限らない。たまたまイレギュラー的な数字を拾ってしまった可能性もある。

その「ぶれ」を回避し、できるだけ正しい「中長期的傾向」をつかみとるには、3か月後に発表されるであろう「10~12月期のデータ」を取得した上でグラフ化し、推移を眺める必要がある。さらに来年の「1~3月期データ」まで取得・グラフ化すればはっきりとした、そして精度の高い傾向を見渡すことができるはずだ。


■関連記事:
【ゲーム・エンタメ系雑誌の部数変化をグラフ化してみる】


(最終更新:2013/09/05)

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