「国破れてサンガリアコーヒー」は本当だった

2008年10月06日 08:00

サンガリアイメージ当方がよく使う駄洒落(だじゃれ)の一つに「国破れてサンガリアコーヒー」というものがある。「国敗れて山河あり」とコーヒーを中心とした大阪の飲料メーカー「サンガリア」をかけたもの(さらに飲料メーカーであることを明確にするために「コーヒー」をつける)で、当方が初めて考えたわけではなく、どこかで見た言い回しが気に入り、いつの間にか口ずさんで(タイピングして)いたもの。恐らくは誰か昔のタレントか漫才師のネタかと思っていたのだが……

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実はギャグネタでも何でもなく、会社名そのものの由来が「国破れて山河あり~」であって、そこから「サンガリア」という社名がつけられたことが分かった。【企業案内】には

中国・唐の詩人、杜甫の作中にある「国破れて山河あり、城春にして草木深し...」の「山河あり」に由来するサンガリア。衿を正して詠吟させるこの魅力ある人生観は厳しい研究姿勢を貫く企業体質に強く通じ(以下略)


とあり、杜甫の五言律詩「春望」の最初の句が社名の由来であることが明言されている。ちなみにこの「春望」の該当部分は次の通り。

国破山河在 (国破れて山河あり)
城春草木深 (城春にして草木深し)
感時花濺涙 (時に感じては花にも涙をそそぎ)
恨別鳥驚心 (別れを恨んでは鳥にも心を驚かす)
烽火連三月 (戦争による火は三月になっても消えず)
家書抵万金 (家からの手紙は万金に値する)
白頭掻更短 (自分の白頭は掻けば更に短く)
渾欲不勝簪 (髪が少なくなりかんざしすら通せない状態になった)


自分の身の不遇さと世の中の動向の激しさから湧き上がる虚空感。そしてそれでもなお同じ表情を見せ続ける自然の偉大さに接している、杜甫自身の心境を実にたくみに表現している。

「国破れて山河あり」という言い回しは日本ではむしろ松尾芭蕉の「奥の細道」にある「国破れて山河あり、城春にして草青みたりと、笠うち敷きて時の移るまで涙を落としはべりぬ」の一節が有名。一部ではこちらを由来としている説もあるが、会社自身が杜甫の「春望」を例示し明言している以上、「春望」が由来であると断じてよいだろう。

サンガリアのテレビCMイメージなお当方は見た記憶がないのだが、この「国破れてサンガリア」という言い回しは、同社のテレビコマーシャルがその発祥のようだ。同社のコマーシャルライブラリには【1983年に「国やぶれてサンガリア編」】が収録されており、そのセリフ回しの中で「国破れて サンガリア」が用いられている。

コマーシャルそのものは赤い服を着た女性陣と謎の忍者軍団が、なぜか手からレーザービームを発しながら戦いあうという、わけのわからない奇抜で斬新でシュールな内容。戦いあう登場人物のバックに流れる「国破れて サンガリア、敵も味方も ヨンダリア みーんなで仲良く 飲んだりア」という解説が、シュールさとインパクトに拍車をかけている。

ともあれ、「サンガリア」の社名由来が杜甫の「春望」にある「国破れて山河あり」であることに違いはない。単なる駄洒落かと思いきや、意外な時代背景と意味を持つことを確認でき、あらためて感極まった今日この頃だ。

……「国破れてサンガリア」で感極まるのもどうかと思うのだが(笑)。

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