欧米主要六紙に見る「新ブラック・マンデー」の衝撃

2008年10月01日 08:00

新聞イメージ先に株式市場雑感(08/09/30)内で触れたように、アメリカの金融危機救済案は政府と下院議会主導部との間で調整の末合意が得られたにも関わらず、下院における投票の結果否決されてしまった。それをきっかけに市場は失望売り一色となり、9月29日のニューヨーク株式市場ではダウ工業株30種平均が前週末比で777ドル68セント(6.98%)安の1万0365ドル45セントで場を引けた。この下落幅は「9.11.」以降初の取引となった2001年9月17日の下落幅である684ドル81セントをはるかに超え、ダウ市場最大の下げ幅となった(下げ率では1987年10月19日のブラック・マンデーにおける22.6%、1929年の世界恐慌時のブラックサーズデーの12.8%を下回る)。そこでここでは、当方(不破)が巡回している欧米の新聞社ニュースサイトにおける、この「金融危機救済案否決と株価急落」いわゆる「新ブラック・マンデー」直後の状況を並べて見ることにする。どれだけ大きなニュースであったかが分かるはずだ。

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Financial Times
Financial Times

まずはイギリスの経済系専門誌【Financial Times】。トップで「House rejects US bail-out bill(アメリカ議会は金融危機救済案を否決した)」と題目があり、状況を伝えている。下に続く記事も、その議会の否決が元で株価が急落したり、金融市場全体の不安定感からか原油市場まで値を落としている様子が伝えられている。

The Wall Street Journal
The Wall Street Journal

続いてアメリカの経済紙として一番知名度が高いであろう【The Wall Street Journal】。トップ記事のタイトルは「金融危機救済案は議会で僅差にて否決。市場は急落し、事態解決のための緊急対策が求められる」とある。トップに映し出された人々の表情(左は静止画、右は動画)の表情も非常に暗い。右下にある市場データの「ダウ……-777.68(-6.98%)、S&P500……-106.62(-8.79%)、ナスダック……-199.61(-9.14%)」の値が痛々しい。

USA TODAY
USA TODAY

次は【USA TODAY】。1982年に創刊された、アメリカでは初の一般大衆紙。アメリカ全州で発売されているのが特徴。見やすいデザイン、分かりやすい図解での説明など、大衆向け記事構成に配慮している。トップ写真は議会における記者会見の様子。コピーには「House:Bailout talks to continue(下院議会では救済法案に関する採決に向けた話し合いは続けられている)」とあり、否決されてしまったもののすべて投げ出されたわけではなく、引き続き調整が行われている状況が説明されている。

BBC NEWS
BBC NEWS

小ネタを時々利用してる、イギリスの有名な報道機関【BBCのオンライン版】もトップはアメリカ下院議会で金融危機救済案が否決されたことを説明。「下院で法案が否決されたので、株価は大暴落してしまった」と率直な説明。先のUSA TODAYよりむしろ大きな扱いをしているのが、多少違和感を感じるところ。よりビジネスに傾倒ということか。

Mail Online

Mail Online
Mail Online

イギリスの大衆紙「Daily Mail」のオンライン版、【Mail Online】。特に女性と動物の写真が多いことで有名な新聞サイト。ここではトップを飾ったのは銀行役員がタクシー待ちをしている際に犯罪に巻き込まれた話。アメリカの株価急落はどうでもいいのか、と思ってスクロールさせると、中段あたりにようやく該当記事が。いわく「7000億ドルの救済法案が否決されたせいで、アメリカ市場は1日の最大の下げ幅を記録した」というもの。それなりに大きな扱いではあるが、やはり多少緊迫感に欠けているような気がする。

The New York Times
The New York Times

最後に、権威はあるが最近は一部スタッフの影響などもあり、偏見に満ちた反日的記事が展開されることが多く、前回は取り上げなかった【The New York Times】。こちらはダイレクトに「救済案否決。株価暴落。投票結果が出た後、ダウは777ポイントも下げた」というインパクトの強い単語の羅列により、衝撃の大きさが語られている。写真はしかめっ面をしながら記者会見に臨むポールソン財務長官。


以上、やや片寄ったリストアップとなったが、欧米の主要経済六紙について、「金融危機救済案否決と株価急落」いわゆる「新ブラック・マンデー」直後の状況のトップページを見渡してみた。いかに大きなニュースだったことが分かるだろう。……が、先の【欧米主要五紙に見るリーマン・ブラザーズ破綻の衝撃】と比べると、悲壮感・驚き度が1ランクは低いような雰囲気があるのは否めない。これは引き続き関係各員の間で調整が行われており、「最終的には再度審議され可決されるだろう」というポジティブな見通しがされていることが大きな要因だと思われる。

また、株価の下げ方も「ダウの下げ幅」でこそ市場最大だったものの、下げ率ではまだまだ歴史上の大暴落と比べて小さかったのが幸い(わざわい?)したのだろう。今後金融危機救済案がどのような進展を見せるのか、そして可決された場合、どれほどの効果を生み出すのか、注意深く見守りたいところだ。

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