住宅価格下落でアメリカでは6世帯のうち1世帯が「債務超過」に

2008年10月21日 06:30

住宅販売中イメージ先に【イギリスでは200万家族が「資産マイナス」状態に】でイギリス・アメリカにおいて住宅価格が急落し、多くの家庭が「債務超過世帯」状態に陥っていることについて触れた。元記事はイギリスに関するお話だったためアメリカ事情のことはほとんと言及しなかったか、今回は改めて【Wall Street Journal紙の該当記事(「住宅オーナーの六人に一人が債務超過」Housing Pain Gauge: Nearly 1 in 6 Owners 'Under Water')】を見てみることにする。

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概要的な事情は先の記事と変わらない。アメリカにおいても、住宅ローンの支払いが継続する一方でローンを組んで手に入れた住宅の価格が急落。ローンの残高と住宅の時価とを差し引きした場合、世帯単位で「債務超過状態」におちいる世帯が急増している。つまり現時点で住宅を売り払ってもローンを返しきれずに借金だけ残るという計算だ。

そして調査機関ムーディーズの調べによると、アメリカでは平均で住宅価格がピークから3割ほど下落した今現在、7550万世帯のうち1200万世帯・16%ほどが現時点で債務超過にある。言い換えれば六人の住宅保有者のうち一人(つまり六世帯に一世帯の割合)が債務超過状態。

住宅価格下落の割合を表す図の一つ。過去五年間に住宅を購入し、現時点で「債務超過」におちいっている人の割合。赤い色が濃いほどその数が多いことを示している。
住宅価格下落の割合を表す図の一つ。過去五年間に住宅を購入し、現時点で「債務超過」におちいっている人の割合。赤い色が濃いほどその数が多いことを示している。

住宅販売中イメージ図からもわかるように、概して住宅密集地帯、特に西海岸とフロリダ地域に住宅価格の下落による「債務超過状態」世帯が多いことが分かる。詳しくは元記事の図表を見て欲しいが、ボストンでは平均15%、マイアミやラスベガス、サンディエゴでは平均32%の住宅価格下落が起きている。そして住宅価格の下落が大きいところほど、当然「債務超過」の割合も増えてくる(図表上の赤ゲージの最高値が84.6%とあるので、84.6%の人が債務超過状態の地域も存在するのだろう)。

「債務超過状態」はさまざまな影響を及ぼす。その世帯においては消費行動が極端に制限される(節約傾向が高まるのはもちろん、他のローンが組めなくなるので高額の買い物が出来なくなる)だけでなく、住宅そのものの差し押さえの恐怖におびえながら生活する羽目になる。そして差し押さえを受けた住宅は、その周囲の他人の住宅の価格をも下げる傾向がある。「住宅(評価)価格の下落」「差し押さえ」「価格下落の周囲への波及」「周辺住宅の差し押さえ」「さらに周囲への価格下落の波及」という、マイナスの影響が浸透していく傾向すらある。

過去5年間に
住宅を新規購入した人の
3割が今や
債務超過状態に

具体的な値もいくつか掲載されている。2006年に住宅を購入した人のうち6%、2007年なら4%、過去5年間にさかのぼってまとめてみれば実に29%の住宅購入者が債務超過状態にある。

債務超過におちいっていない残りの住宅保有者の状況はどうなのだろうか。6400万世帯(原文ママ)のうち、2400万世帯は完全にローンを支払い終わり、自分の手の内に住宅を納めている人、そして残り4000万世帯はローンは残っているものの、現時点で売却できれば手元に現金を残せる人(住宅売却価格>ローン残高)という計算である。ただし後者については需給関係がかなり怪しいものとなっているため、実際に売却するとなればそううまく話は進まないかもしれない。

そしてやっかいなことに、住宅価格はすぐに反発して値を戻す、ということが少ない。例えば1990年代においてロサンゼルスの住宅価格は1990年6月にピークに達したあと1996年3月まで低迷・下落を続け、そのあと4年をかけてようやく1990年のピーク価格にまで戻ったという。

中古物件ですらだぶついて値が下がる一方の状況であるから、当然新築住宅の数も減少の一途をたどっている。

アメリカの住宅新築数の推移(月ベース)
アメリカの住宅新築数の推移(月ベース)

グラフ中の説明によると、新築住宅の着工件数は今年の8月には過去17年来の低い水準とのこと。

一度落ちた住宅価格は、消費行動をはじめ他のさまざまな経済領域に影響を及ぼす。特にアメリカの場合、「上昇した住宅価格とローンの差額を担保にお金を借りて、それを消費に回す」という消費行動の傾向が見られたため、その反動も大きなものとなっている。先のロサンゼルスの住宅価格のパターンに従えば、住宅価格が底を打ってから4年は経過しないと元に戻らないという計算になる。

そして今現在もなお、アメリカの住宅価格は下落の一途にある。根本的な状況の改善はまだまだ先になりそうだ。

(最終更新:2013/08/02)

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