株価急落で信用取引買いの損失急増・危険領域の「30%」を超える

2008年10月04日 12:00

株式イメージ9月15日に起きた、アメリカの証券銀行リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけとした市場の大暴落と、その後に相次いで発表された対抗策による相場の持ち直し。この時期における株価動向と信用取引の買い方・売り方の信用取組、売買動向の推測などを【「リーマン・ブラザーズショック」前後の相場展開を信用売方買方の状況からグラフ化してみる】でお伝えした。その後、金融信用収縮が急速に進み、さらに金融危機救済法案がアメリカ議会下院で否決されるにいたり、アメリカの株価は史上最大の下げ幅を記録するなど大幅に下落。日本市場も含めた世界の株式市場を巻き添えにした。特に今週一週間は日経平均株価が1万1000円台を割り込むなど、目も当てられぬ状況におちいり、信用取引の買い方の損失割合も「危険領域」といわれている30%を超していることが明らかになった。

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松井証券では2002年7月17日約定分から、信用取引に関する残高や評価損益率などを当日公開している。今データは松井証券に口座を開き専用ツールで閲覧するか、誰でも無料で購読できるメールマガジン「松井証券マーケットプレゼンス」(【メルマガ発行スタンド(まぐまぐ)】)で確認できる(【サービス開始リリース、PDF】)。対象データは松井証券の顧客に関するもののみだが、各種信用取引に関する同社発表データは、相場全体の様相を確認するのには役立つ指標となる。

「信用評価損益率」とは、個人投資家などが信用取引を使って株式を購入した場合における、その株式の含み損益を表す。要は「借金をして買った株の評価損益」。マイナスなら含み損、プラスなら含み益という具合。信用取引では一般に半年間で売り方も買い方も取引を精算する必要があるため、損切りラインの設定も現物取引と比べるとシビアな場合が多く、通常はマイナス10%を超えると「損切り」、つまり損失確定売りが増えるといわれている。

【信用評価損率が算出来で30%超・「投げ売り」増加中】にもあるように「30%」は去年夏の「サブプライムローンショック」や、年初から春先にかけての急落で一時的に見られたくらいで、「滅多にない」、そして「危険な」領域。要は「借金してまで買った株が3割も損をしている」のに他ならないのだから。その「危険領域」が今週後半において、再び姿を見せるようになった。

9月29日~10月30日週の日経平均株価動向(終値)
9月29日~10月30日週の日経平均株価動向(終値)
9月29日~10月30日週の評価損益率の変化
9月29日~10月30日週の評価損益率の変化

上記のグラフを見ればお分かりのように、10月2日時点で信用の買い方の含み損は危険領域の30%を突破。3日にはさらに上積みされ、33.662%の含み損を抱える羽目となった。あくまでもこれは松井証券の顧客のみの統計データだが、恐らくは市場全体もさほど変わりはないだろう。

一般に信用取引においては、担保(現金や保有株式の評価額)の3倍までのやり取りが出来る。逆に、委託保証金率が約3割(証券会社によって異なる。松井証券の場合は25%)を切ると「追証(追加で入金し担保を積み増す)」必要が生じ、それが出来なければ持ち株を強制的に売却させられてしまう。

株式市場が低迷すると担保としている株式の評価額が下がり、利用できる信用保証額上限が減ってしまう。従って市場下落は信用取引による買い方の立場から見れば、「含み損の拡大」だけでなく「信用保証額上限の下落、追証のリスク増大」にもつながることになる。買い方の含み損の増加は、さらなる「投売り」の可能性をもたらす可能性が十分にある。早急に手仕舞い(手持ちの株式の売却)をしなければ、強制売却のうめきにあう。一方で当然のことながら、売り方は含み益を積み増している。

9月29日~10月30日週の信用残りの変化
9月29日~10月30日週の信用残りの変化

日経平均株価がやや持ち直した10月1日には売り方が信用売りを多少積み増しており、売買のうまさが見て取れる。一方で信用買い方はこの一週間で少しずつポジションを整理しているようすが明らかに見て取れる。しかしその額はいまだに1600億円あまり残っており、多くの人が損を抱えたまま、信用買いのポジションを維持していることになる。

今後さらに株価が下落すれば、(何も手を打たなければ)信用買い方の含み損がさらに増加することになる。それと共に追証の可能性、さらには損失発生覚悟の投売りも増えてくるだろう。


10月2日・3日の株価急落の背景には、金融市場の信用収縮に伴う疑心暗鬼からの売り、そのような状況を見越した(そして先進諸国の市場では唯一空売り規制の緩い日本市場を狙った)空売り、信用取引の買い方で維持率を割り込んだ結果生じた追証売り、そしてさらにファンドのポジション整理や古参・大型投資家の換金売りなどがある。特に最後の要素では、大口の現物売りが手堅い大型銘柄を襲い、相場全体を大きく下げさせる要因として作用している。

先ほどアメリカの議会下院で金融危機救済法案は可決成立したが、材料出尽くしとの意見や法案そのものの効用性などへの疑問、そして利益確定売りからアメリカ市場は値を落とし、結局マイナス引けで場を終えている。日経平均株価の週足のパターンから見れば、来週(10月6日から始まる週)も陰線をつけることが予想され、さらに厳しい市場環境が待ち構えていることだろう。

SBI証券では9月24日の時点で利用者に対し「信用取引に関する注意」というタイトルで、株価下落の際に生じる信用取引のリスクに関する警告文を配信している。松井証券だけでなく、ネット証券最大手のSBI証券でも、信用買い方の含み損が急増し、追証売りが多発しているものと思われる。松井証券における「33%の含み損」を持つ信用買い方が自分のポジションを整理し、市場に売り投げたあたりが「本当の底」になるのかもしれない。

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