6割が「値上げしたら違うブランドの安い商品を買う」・日本の主婦にも広まりつつある「トレードダウン」

2008年09月05日 06:30

主婦の買物イメージ女性、特に主婦層のマーケティングを行うハー・ストーリィは8月28日、主婦層の景気感と節約行動に対する調査結果を発表した。それによると値上げされた商品に対して、主婦がもっとも多く取る行動は「違うブランドの安い商品を買う」だった。値が上がっても気にせずに買う人は1割程度しかおらず、生活防衛のために主婦がさまざまな工夫をしていることが垣間見れる(【発表ページ】)。

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今調査は全国の主婦に対して4月28日に行われたもので、有効回答数は531人。年齢階層比は30代が45.6%、40代が35.8%など。

今調査項目では食品などの生活必需品か、それとも娯楽品なのかの縛りは無く、単純に「値上げされた商品」とだけある。このような問いの場合、一般論として判断・回答したものと見てよいだろう。さて「値上げされた商品に対してどのような行動をとるか」の回答だが、一番多かったのは「違うブランドの安い商品を買う」で過半数の56.5%に達していた。

値上げされた商品に対してどのような行動をとるか
値上げされた商品に対してどのような行動をとるか

具体的にどのような「違うブランドの安い商品」なのかは、その一部が【「買う量、数を減らす」主婦たちの賢い節約意識が市場を左右する!?】でも語られているが、「牛肉から豚肉・鶏肉」「ナショナルブランドからプライベートブランド」「通常店舗での購入から100円ショップ・ディスカウントストアでの購入」などが挙げられる。

これは先に【この頃アメリカで流行っている「トレードダウン」という考え方】で紹介した、生活防衛のための手段「トレードダウン(格下げ)」(買い物をするスーパーやデパートのランクを下げて、生活を防衛する。より安いものを買ったり溜め込んだりすること)が、家計を守る最前線で戦う日本の主婦にも広まってきたことを意味する。

買い物をする行き場所のランクを落とせば、必然的に購入する商品の価格帯も下がる。これがトレードダウン(トレーディングダウン)
買い物をする行き場所のランクを落とせば、必然的に購入する商品の価格帯も下がる。これがトレードダウン(トレーディングダウン)(再録)
値上げをすると
6割近い購入層から
「サヨナラ」される
可能性が生じる

また「買うことを止める」「買うことを当分の間ひかえる」をあわせた32.9%は(トレードダウンをしていないので)、そのジャンル自身の購入頻度が減退(あるいは無くなる)したことになる。また、ジャンルでは無く特定の個別商品から見れば、値上げしたことで6割近い購入層から見捨てられ(56.5%+5.6%)、さらに残りのうち3割近い購入層(27.3%)からは購入頻度を減らされるリスクが生じる、という概算になる。

スープヌードルイメージもちろん6割近くは「トレードダウン」をしているので、その行き先に自社製品が位置していれば、損失は最小限にとどめることが出来る(例えば「カップヌードル」から「スープヌードル」)。しかしそれが出来なかった場合、大いに自社製品の売上を減らすことになるだろう。


今回の問いとその結果は全般的な一般論に対するもの。具体的な商品(食べ物か、娯楽品かなど)や上昇価格帯(5%の値上げか数十%の値上げか)、そして代替品があるか否かやその代替度合によって、「買い控え」「買い止め」「トレードダウン」「そのまま買い続ける」の選択も変わってくるだろう。さらに時間の経過と共に値上げに慣れ、離れていた顧客が少しずつ戻ってくる可能性もある。しかし小売業者にとって一番のお得意様である主婦が、全般的にこのような考え方を持っていることは知っておいた方が、消費・景気動向を推し量る上でも良いことに違いは無い。

【値段上げたのに売上が減る!? 総務省の統計データから明らかに】でも伝えているが、値を上げたことにより価格上昇分以上の売上個数減が生じ、個数はもちろん売上も大きく落ち込む商品が出てきている。単純に「値上げの有無」だけを前提して質問しても、6割の人がその商品から「サヨナラ」しうるのだから、値上げにはよほど慎重になる必要があるだろう。そしてもちろんこの「6割」をくつがえすような納得のいく説明と工夫が各小売企業には求められるに違いない。


(最終更新:2013/08/03)

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