「2016年までには住宅価格は昨年のピーク時レベルにまで回復する」ただしイギリスのお話

2008年09月07日 12:00

住宅販売イメージ過剰供給と、いわゆる「サブプライムローン問題」で手持ちの住宅を手放す人が増え、需給関係のバランスが崩れたことにより、アメリカでは多くの住宅が空き家状態となりつつある。しかしこの「住宅問題」は何もアメリカに限ったことではなく、日本やヨーロッパなどでも進行しつつある。特にアメリカ以上に状況の悪化が懸念されているのがイギリス。イギリス各誌では毎日のように住宅価格の下落関連ニュースが報じられている。そのイギリスの一紙、【Mail Online】で気になるニュースが伝えられた。ある住宅関連会社の研究機関の発表によるものだが「去年ピークを迎えたあと下落を続けている住宅価格が、これから何年待てば元の水準まで戻るか」というものだ。

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イギリス全土における、2007年のピーク時の住宅価格にまで値が戻る予想年数(Savills資料より)。色が赤っぽい地域ほど早く復帰する。また、地域名下の「%」は、住宅価格が回復するであろう2020年において、2007年の平均価格と比べてどれくらい値が上がっているかを示している。
イギリス全土における、2007年のピーク時の住宅価格にまで値が戻る予想年数(Savills資料より)。色が赤っぽい地域ほど早く復帰する。また、地域名下の「%」は、住宅価格が回復するであろう2020年において、2007年の平均価格と比べてどれくらい値が上がっているかを示している。

これはイギリスを中心に世界各地にグループ会社を持つ不動産関連の外資系企業【Savills】が調査した結果を発表したもの(【レポート公開ページ】)で、もっとも回復に時間がかかるであろう地域(スコットランド地方、イギリス南東部)では2016年まで待たないと住宅価格は2007年の水準までに戻らないことを意味する。元記事ではこの状況を指して「最近住宅を買ったイギリス人は、8年くらいは住宅価格が購入時より下落した状態で気分も憂鬱のまま。少なくとも買値より高値にならないと売りに出すことも出来ず、マイナス資産として手持ちに残しておかねばならない」と表現している。

上記の図において、地域によって住宅価格の回復度合いに違いがあるのは、地域毎の雇用情勢や経済状態の回復状態の違いによる。特に住宅価格が下落した原因は、金融市場の信用収縮で、特に若年層がローンを組み入れることができず、需要が縮小したことが原因としている。もっとも予測レポートでは、このような状況もじきに改善され、2020年までにはすべて回復しているとしている。

Savillsいわく「2020年には住宅価格は2007年のピーク時(22万ポンド=4136万円)よりさらに50%割増価格(32万3240ポンド=6080万円)になっていると予測。この予想は最近住宅価格関連で悪い話ばかりを耳にし、「もうずっと住宅価格は元に戻らないのでは」と考えていた関係者にっては福音のように聴こえるに違いない。

一方でSanford Bernstein銀行の調査によれば、昨年夏の住宅価格のピーク時から最大35%もの価格下落を見せた住宅もあったという。5000万円で購入した家なら今や3250万円。全体では11%に相当する130万戸の家が「資産価格よりも高い総額となるローンを支払っている」状態。

住宅価格は昨年以来、1920年代の「世界大恐慌」以来最速のペース(昨年8月から12.7%)で落ちている。「今年どころか来年終わりまで住宅価格が下落する」という予想もあり、これらはもうしばらくの間多くの人を住宅市場から敬遠させるだけの材料になりうる。

イギリスに限らずアメリカ、そして日本でも急速に住宅価格の下落が続いているのは、大きく区分すると

・造りすぎで供給過多
・金融市場の信用収縮でお金を借りるのが難しくなり、ローンを組んで住宅を買い難くなった(=需要縮小)
・原材料費の高騰で「定価」が高値に。しかし買い手はその価格では満足するはずもなく、仕方なく「定価」から値を下げざるを無くなる
・「まだ下がるのでは」という思惑から、買い手が買い控えをしている
・買い手側のおサイフのヒモがきつくなった(買い手が住宅を買う余裕が無い、あるいは居住用住宅なら買うより貸し家・アパートやマンションの方が良いと判断している)


などの理由がある。Savillsのレポートによれば「イギリスでは2009年の終わりまでに『貸し家を借りるコスト』と『建売住宅の購入のコスト』がほぼ横並びになる。それ以降は住宅へのニーズは再び高まることだろう」と予想している。

販売中の住宅イメージ「2009年がイギリスの住宅市場のターニングポイントになるだろう」というSavillsの予想は、多分に楽観的な要素を含んだ上でのものといえる。経済そのものや金融市場の動向次第でさらに数年は後ろにずれ込む可能性もありうる(逆にいえば前倒しになるパターンもあるが)。

日本の場合も状況は似たようなもの。大手の買い手である外国資本が(本国における金融信用問題で現金が必要になり、あるいは直近の成長をあきらめ)利益確定・損切りなどで資金を引き上げ、買い手もローンは組みにくくなり、特に若年層の購買意欲と購買力は激減。オマケに金融機関は不動産企業への血流たる貸出金を貸しはがし始め、ばたばたと関連企業が倒れる始末。住宅購入を考えている人も、住宅価格の下落はまだまだ続くと見て、買い控えを続ける傾向も見受けられる。

イギリスでは少なくとも来年終わりまでは住宅価格の低迷が続くと、専門の企業が分析している。日本ではどうだろうか。少なくとも需給のバランスが均衡化し、買い手がローンを組みやすくなる状況に達するまでは、回復の兆しは見えてこないだろう。大規模な政策が行われて市場の雰囲気が一変しない限り、早くとも今年度一杯は難しいかもしれない。

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