2008年7月の新設住宅戸数、前年同月比19.0%増

2008年08月30日 12:00

住宅イメージ国土交通省は8月29日、2008年7月における新設住宅戸数のデータを発表した。それによると7月の新設住宅着工戸数は前年の同月比で19.0%増の9万7212戸となり、13か月ぶりの前年同月比で増加したことが明らかになった。着工床面積も同じく13か月ぶりに増加しており、久々に景気のよい数字が発表されたことになる(【発表リリース、PDF】)。

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具体的な内訳は持家が23.1%、貸家は22.7%、分譲住宅は12.7%の「増加」。民間資金・公的資金双方の値が増加したため、全体として増加したというコメントが寄せられている。地域別ではすべての地域でプラスの値が出ており、中部圏の5.7%増以外の地域では20%を超す値となっている。

改正建築基準法の施行、そしてそれに伴う行政側の準備不足・不手際(特に「大臣認定プログラム」や審査担当者絶対数の不足)が昨年夏以降の住宅市場における混乱と、新設住宅戸数の減少をもたらしている(俗にいう「官製不況」)のはいうまでもない。さらに昨今の資源高・賃金上昇、金融機関の貸し渋り傾向の強化などの要因も強まる傾向にあり、状況はより悪化している。加えて主な購買層である消費者の消費性向の低下も、住宅需要を押し下げている。その上、同業他社の破綻も、各不動産業者にとって少なからぬネガティブ要因としてのしかかっているのは否定できない。

ただし今年の7月は、改正建築基準法の施行直後で大幅に数字が下振れした2007年7月からちょうど一年ということもあり、その反動から「前年同月比」の値が大きく上に振れたように見えたものと推測される。

新設住宅戸数の変遷
新設住宅戸数の変遷(2008年7月分まで)

昨年8月~10月の大低迷から上昇傾向を継続していていた前年同月比割合だが、今年に入ってから一進一退の攻防……というより、前年同月比マイナス5%あたりを天井とし、上げては弾かれて下げ、また上げては下げを繰り返す状況が続いていた。今回発表分の2008年7月分は、改正建築基準法の施行により大きく不動産・建設業が下向きを見せた2007年7月からちょうど一か年が過ぎた月であり、どこまで回復しているかが気になるところではあった。今回のデータを見る限り、少なくとも「新築住宅戸数」においては、最悪期を脱する雰囲気が見られるということになる。

ただしこれはあくまでも「新築住宅戸数」であり、実際に売れた数ではない。需給の関係が大きく供給過多に傾いており、新築数そのものを抑える傾向が不動産業者に見受けられること、その不動産業者も在庫処分が出来ずに「倒れて」いくところが相次いでいる現状を見るに、油断は禁物。

着工床面積概要(前年同月比16.6%増)も戸数同様に増加しており、全体では13か月ぶりの増加を見せた。情報通信業の708.9%増、不動産業の100.0%増という、とんでもない増加ぶりを見せる用途別区分もあるほど。

耐震強度偽装問題を教訓にした
「改正建築基準法」の施行

・行政の不手際などで
新築戸数などが激減
・昨年夏で底打ちに見える。
・3月再び下落・失速感。

施行直後の大混乱・低迷期と
比べればマシになったように
見える……かも?

国土交通省では同日、住宅着工に一か月ほど先行するといわれている建築確認件数も発表している(【「最近の建築確認件数等の状況について」発表リリース】)。これによると今回発表された7月分データでは55.0%プラスとなり、6月分データの8.1%マイナスからは大変大きく増加しているのが分かる。来月分の住宅着工は今回発表分よりさらに良いことが期待できる。

今回の7月分データは、昨年夏の「どん底期」と比べれば現状はずいぶん改善されていることを見せるものといえる。しかし繰り返しになるが、これらはあくまでも「建築する住宅戸数」関連の数字に過ぎない。実際に各不動産企業はこれらの物件を完成させて買主に受領させ、代金を受け取らねばビジネスになりえない。

昨今の住宅の供給過多(要はだぶつき)状態を見るに、仮に来月以降も新築住宅戸数が堅調に推移しても、それらが「売れない」限りは、現場の企業たる不動産会社の不景気感は継続する。さらに昨今の状況を見た上で、金融機関が猛烈な「貸しはがし」をしているのもリスク要因としてプラスされる。金融機関による貸し出し口の「整理」が進む今秋、そして需給のバランスがとれたと確認されるまでは、各部門とも慎重な対応が求められよう。

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