【更新】ネットカフェ難民に月15万円融資・年収150万円以下なら返済不要!?

2008年08月24日 12:00

時節イメージ[読売新聞]は8月23日、厚生労働省が「ネットカフェ難民」の就職活動を融資するため、公共の職業訓練受講を条件に、訓練中の住居・生活費として月額15万円を融資する制度を2009年度に創設する方針を固めたことを伝えた。その制度では年収150万円以下の受講者は返済が免除されるため、実質的な給付となる。概算要求には関連予算として1億円を盛り込むとのこと。

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「ネットカフェ難民」とは住居を持たず定職にもつけず、短期間のアルバイトなどを繰り返しながらネットカフェなどを住処とする人たち(就労意欲を持つ都市型ホームレス)のことを指す。安い家賃の住居を借りようにも、敷金・礼金など初期経費をまとめて払うだけの現金も手持ちになく、住み込みの仕事も保証人などの関係で難しく、悪循環におちいっている。【ネットカフェ難民は全国で約5400人、20歳代と50歳代がそれぞれ約1/4に~厚生労働省初の調査結果まとまる】にもあるように、去年の初調査では全国で5400人ほどの人が該当することが確認された。

元記事によれば新制度では、雇用・能力開発機構の「技能者育成資金」を活用。職業訓練受講者に月15万円を貸し付けると共に、座学・企業実習を組み合わせた訓練(「日本版デュアルシステム」)を3~6か月に渡って実施。訓練期間中には収入源が断たれるため、貸付金を用意することで訓練に専念してもらう狙いがある。さらに訓練を無事に終え、年収が150万円以下であれば返済は全額免状。

対象はネットカフェなどで寝泊まりしながら日雇い派遣などで働く、30歳代後半までの「住居喪失不安定就労者」を想定。厚労省では年間数百人が利用すると見込んでいる。その一方、就労意思がない給付金目当ての受講者を防ぐため、厚生労働省ではハローワークの面接などを活用する方針。「不適当と判断すれば、希望しても訓練をあっせんしない」とのこと。

■利点
・手持ちの資金を気にせず
訓練が受けられる
(悪循環からの脱出)
■問題点
・制度悪用チェックの厳密性
・既存類似制度があるが
状況改善には至っていない

「はじめの一歩」がなかなか踏み出せずに悪循環に陥っている人たちの後押しをするということで、興味深い話ではある。「技能者育成資金」は【解説ページ】にもあるように、元々技術者育成のために職業能力開発関連の学校に通う優秀な訓練生を対象に融資を行う奨学金制度であり、使い方そのものは特に問題は無い。なお原資は貸付金の返却金と、「労働保険特別会計雇用勘定からの雇用開発支援事業費等補助金」から構成される。要は労働保険の保険料を利用しているということ。

問題なのは実質的に「給付」となる可能性が高いこと。もともとの「技能者育成資金」が原則融資であることと比べ、ハードルが低いことなどから、制度を悪用するケースが出てくることは容易に想像がつく。先の「技能者育成資金」にしても【会計検査院いわく】「回収チェックが甘い」「回収業務が十分に行われていない」とツッコミが入っている始末。「ハローワークの面接などを活用する」という記述はあれど、例えば生活保護制度を悪用する事例も後を絶たないことから、しっかりとしたチェックができるかどうかは未知数。

さらに、似たような制度としては「ネットカフェ難民」最大の拠点ともいえる東京都で、今年4月以降に同様の制度がスタートしているが(【東京発!住居喪失不安定就労者への支援~サポートセンター業務運営事業者を公募します!~】)有効な決定打となった、「ネットカフェ難民」が明らかに減少したという話はまったく耳にしていない。

現状はネットカフェ難民どころか、一般の元就労者にも就職が難しい状況。従って、どこまで成果が上げられるかは現時点では不明。なかなか「一般生活を送る」ための土台すら作れない人をサポートする事業として期待される一方、制度そのものの有効性や悪用の可能性も含め、仕組みを熟考する必要があるに違いない。


(最終更新:2013/08/03)

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