ガソリン高がもたらすアメリカの消費性向の変移と

2008年07月10日 12:00

アメリカイメージ当方が巡回している海外系のサイトの一つに【USA TODAY】がある。1982年に創刊された一般大衆紙で、文字も大きく図版や写真をダイナミックに取り入れているのが特徴。そのUSA TODAY紙は(アメリカ全州で販売されていることもあり)数々の世論調査を行うことでも知られている。直近の世論調査において、アメリカの消費性向の変化をうかがい知れるものがいくつか見つかったので、二つほど紹介してみることにする。

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ガソリン代高騰。買い物のスタイルはどう変わる?

日本人と比べて移動手段として自動車を用いることが圧倒的に多いアメリカ人。しかしその自動車がガソリン代の高騰で自由に使いづらくなっているのはすでにお伝えしている通り。そこで「ガソリン代が高くなっているが、買い物のスタイルはどう変わってる?」と質問した(複数回答)ところ、「買い物回数を減らす」と答えた人がもっとも多く40%を占める結果となった。



ガソリン代高騰で買い物のスタイルはどのように変化したか

ガソリン代高騰で買い物のスタイルはどのように変化したか

【貯蓄を大いに盛り上げる6つのクーポンなコツ】で解説したように、日本と比べてアメリカではクーポン券を利用した買い物が浸透している。クーポンをさらに活用するという意見が4人に1人も占めているのはアメリカらしい。また、安売りを待って買い物をするのは世界共通の話。

直接ガソリン代高騰で影響しているのは「自宅近所で買い物」と「回数が減った」だろう。両者とも、ガソリンを少しでも使わないようにするため「自動車を運転するにしても近距離で」「自動車の稼動回数そのものを減らす」結果ともいえるからだ。

しかしこれらの傾向はそれぞれ、「広域コミュニティの形成における商用エリアの拡大」「大量生産・大量消費」というアメリカならではの消費スタイルに真っ向から反するものとなる。元々大都市圏を除けばアメリカは土地が広いため、お店の所在地も広域に渡っている。近場で購入する機会が増えれば、各地域の購買量は増えるかもしれないが、自動車による移動を前提としている郊外の商店(例えばウォルマート)の利用客は減少する可能性が高い。また、買い物の回数が減ることにより、消費量そのものも減退するかもしれない。

・まとめ買いに走る傾向
→保存しやすい商品の需要拡大
→地域情報とクーポンをセットにした
 コミュニティサービスのニーズ拡大
→大型冷蔵庫も売れるかも?

近郊商店はそのような事態を防ぐため(つまりガソリン代を払っても来た甲斐があったと利用客に思わせるため)大規模なセールスを余儀なくされるだろう。一方で、地域密着型のネットコミュニティや情報サービスのニーズは増す。まとめ買いが出来るような商品(冷凍食品など)や、保存しておくための大型冷蔵庫の需要は伸びるかもしれない。

夏のバカンスも縮小方向

もう一つは夏の休暇期間における旅行プランについて。こちらは現在もアンケート中なので表の順番がばらばらだが、すでに2500票以上が投じられており、ここから大きな差異が生じることはないだろう。

結果は次の通り。

費用がかさむ昨今、今年の夏の休暇の旅行プランは・・・
費用がかさむ昨今、今年の夏の休暇の旅行プランは・・・

「旅行ぐらいは物価高騰云々という現実を考えなくとも」という意見からなのか、あるいは元々シンプルな旅行プランだったのか、「特に変更無し」が2割ほどいる。しかしそれ以外では、先の買い物事情と同様に、ガソリンを食う自動車の走行距離をできるだけ少なくするべく「遠出はせずに自宅の近場でがまんする」という意見がほぼ半数を占めているのがわかる。その他も、色々と出費を減らそうという工夫が見受けられるものに、票が集まっている。


今回は「買い物」「旅行」の2要素しか取り上げなかったが、この両要素からだけでも「ガソリン代の高騰」で、従来自分たちの社会・文化を形成する上で欠かせなかった「自動車利用の自由」を半ば奪われたアメリカの人たちのライフスタイルに大きな変化が生じているのが分かる。そしてその変化は恐らく、歩きや自転車、鉄道などの公共機関でも行き来可能な都市圏より、自動車が移動には必須の地方・近郊地域で大きなものとなるだろう。

地域コミュニティイメージ行動範囲が狭められることで、周辺地域とのコミュニケーションが疎遠になる一方、地元周辺地域内での交流が活発になる。これは地元愛の高まりというプラス面もあるが、同時に排他性が強化されるというリスクも考えられる。アメリカは州の集まりによる連邦国家のようだが(元々アメリカ「合衆国」なのだから)、住民の意識レベルでの連邦国家としてのつながりが弱まり、都市や地域ごとの「都市国家群」のまとまりのような感覚になる可能性もないとはいえない。まるで中世ヨーロッパのように。

一方で「インターネットを使えば距離感など無視できるから、そのような心配は無用」「サブプライムローン問題で住居を追われ引っ越さねばならない人も増えているので、地域社会そのものの住民間の結束も弱体化するのでは?」という意見もある。

どれか一つが正しくて他が間違いというわけではない。むしろそれら複数の要素が影響しあい、新しいアメリカの社会文化を形成していくのだろう。

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