「収入増えずに支出が増加」消費者感覚ではすでにスタグフレーションへ

2008年07月06日 12:00

不況イメージ日本銀行は7月4日、6月に行なった「生活意識に関するアンケート調査(第34回)」の結果を発表した。消費者感情としてはこの1年間で収入は「変わらない」かむしろ「減る」傾向にある一方で、支出は「増えた」と答える人が増えていることが明らかになった。物価上昇と購買力の上昇が対になるインフレーションではなく、購買力がそのままなのにも関わらず物価が上がるという「スタグフレーション」化の状況を、消費者は肌身を持って認識しているようだ(【発表リリース、PDF】)。

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今調査は日本銀行が定期的(3か月ごと)に行なっているもの。今回調査の期間は5月15日から6月10日、20歳以上の個人を対象にしたもので、4000人に対して郵送調査方式で行い、2378人から有効な回答を得られた。

1年前と比べて、収入と支出それぞれについてどのように変化したかをたずねたところ、収入の面ではほぼ変わらない回答となったが、支出では3か月前の前回調査と比べ「増えた」の層が大きく上昇しているのが分かる。

収入面で現在を1年前と比べると
収入面で現在を1年前と比べると
支出面で現在を1年前と比べると
支出面で現在を1年前と比べると

収入面でもやや「変わらない」が減り、「増えた」がちょっぴり、「減った」がそれなりに増加している。これを「収入の二極化」と表現することもできるが、それを断じるにはやや変化量が少なすぎる。むしろ「誤差」の範囲におさまるだろう。むしろ支出面の違いに注目すべき。

支出面では「変わらない」「減った」の値がそれぞれ減り、その減った分のほとんどが「増えた」に回った計算になる。「増えた」の増加率は6.1ポイントであり、これを「誤差」と解説するには多分の無理がある。

これらの調査結果を見ると、消費者感覚では「手取りは増えずに物価が上がる」スタグフレーション、つまり【スタグフレーション突入の兆しか? 「物価大幅上昇」「収入は減少」という意識調査結果】【石油と食料品急騰で懸念されるアメリカのインフレ加速・金利引き上げの噂も】で解説したように

●スタグフレーション
物価が上昇しているにも関わらず賃金は上がるどころか低下し、景気が後退するという、「インフレーション」+「スタグネーション(stagnation、沈滞)」の造語「スタグフレーション」。需給バランス・経済の安定化へ向かう1ステップには違いないのだが、単なるインフレよりも消費者は生活の大変さを経験させられる。


におちいっていると認識している可能性が高い。関連官公庁ではインフレともスタグフレーションとも明確な言及は避けているが、現場の消費者は(その言葉自身は知らなくとも)雰囲気的にその状況下に自分たちが置かれている、と考えているのだろう。


1年後についてイメージちなみに「1年後」についても同調査では結果を発表しているが、それによると「収入は減るだろう」という意見が比較的大きめに増大する一方、「支出は減らしていく」という意見も漸増しているようすが分かる。周囲の状況を冷静に判断し、無駄を省いて支出を減らし、自己防衛を図ろうとする消費者の考えが見て取れる。

今後ますます、支出の面では優先順位が低い分野(例えば娯楽やぜいたく品)において、消費者の財布のヒモが固くなり、売上が減少する可能性は否定できない。少なくとも「1年後の支出を減らす」層の数が減少傾向を見せない限り、消費性向の減退は継続することだろう。


■関連記事:
【景気回復はサラリーマンからは遠く……給与は9年連続減少、格差も拡大方向に】

(最終更新:2013/08/04)

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