予断を許さない状況…2008年6月分の景気動向指数は現状3か月連続・先行き4か月連続の下落

2008年07月09日 12:00

景気イメージ内閣府は7月8日、2008年6月における景気動向の調査こと「景気ウォッチャー調査」の結果を発表した。それによると、各種DI(景気動向指数)は相変わらず水準の50を割り込んでおり、さらに多くの値で昨月より悪化している。基調判断は先月の「景気回復の実感は極めて弱い」からさらに悪化する形の「景気回復の実感はさらに一段と弱くなっているとのことであった」であり、また先行き判断も先月からさらに悪化しているなど予断を許さない状況にある(【発表ページ】)。

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資源高に地震でダブルパンチ

文中・グラフ中にある調査要件、及びDI値についてはまとめページ【景気ウォッチャー調査(内閣府発表)】上ので解説済み。そちらを確認してほしい。

6月分の調査結果は概要的には次の通り。

・現状判断DIは前月比マイナス2.6ポイントの29.5。
 →3か月連続の低下。「悪化」「やや悪化」が増えている(※あわせて7割近く)
 →家計はガソリンや身近な商品の値上げでネガティブに。企業は原油・原材料価格の高騰が続き、さらに受注の減少も一部に見られることで低下。雇用は新規雇用減少傾向が続くことで下落。岩手・宮城内陸地震の影響で、東北地方の消費者の購買意欲低下が顕著に。
・先行き判断DIは先月比マイナス3.0ポイントの32.1。
 →4か月連続のマイナス。
 →身近な商品の価格上昇、原油などの上昇による消費意欲減退。今後の価格上昇継続の憶測や企業の倒産、雇用調整の懸念から低下強まる。


先行き判断の下落が加速

それでは次に、それぞれの指数について簡単にチェックをしてみよう。まずは現状判断DI。

景気の現状判断DI
景気の現状判断DI

家計動向関連も企業動向関連も押しなべて軟調。非製造業がかろうじて「誤差の範囲か」というレベルの下落にとどまっているが、他は大きな低下を見せている。中でも小売関連・飲食関連・住宅関連などが大きな下げ幅を見せ、それらにおいてDI値が30を割り込んでしまっているのが目立つ。中でも飲食関連の「26.8」は、今年1月のそれをさらに下回る数字。他の多くの項目でも1月の値よりも下落しているものが多く、「1月より今(6月)の方が景気が悪い」という実感を多くの人が抱いているのが想像できる。

続いて景気の現状判断DIを長期チャートにしたもので確認。

2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)
2000年以降の現状判断DIの推移(赤線は当方で付加)

現時点ですでにITバブル崩壊後の不景気時期にあたる2002年~2003年(日経平均株価が7000円台を記録)の時期の水準に近い状態が続いている。2月から見せた反発の兆しも4月分で再び下落し、さらに6月分では急降下が続いている雰囲気。調査母体がこの表を意識していることはないだろうが、2001年後半につけた大底の水準にほぼ達する勢いである。今年3月の一時的な上げは2001年初頭の小型反発のそれに似ていることもあり、同様のパターンを踏襲する雰囲気を見せている。

・再び下落の流れ。
・「雇用と全体の下落逆転」は
継続中。
・合計のDIは2002~3年の
不景気時代水準に近づく
→直近はともかく将来には
希望が見える「下げ」か?

注意すべきなのは今年に入ってから何度と無く指摘しているように「前回(2001年~2002年)の急落時には、家計や企業、雇用動向DIにぶれがあったのに対し、今回の下落では一様に、しかも急速に落ち込んでいる」こと。景気状況がいっせいに悪化したことを表している。これも今年後半から急激に加速した資源高(特に「8.17.ショック」と呼ばれるサブプライムローン問題関連)が引き金となっているのだろう。

一方これまでの傾向として見られた「直近の最底値の際には雇用関連の指数が全体指数より下側に大きくクロスして落ち込む傾向」が3月では小規模ながらも見られ、4月以降継続していることが注目に値する。反転が行く先に期待できる「大底」時に見られる「全体指数より雇用指数が下回る」現象が確認できたことは心に留めておく必要がある。

ただし直近の小反発の水準が前回よりもやや低めなこと、雇用関連がまだ(前回比で)高めなことを見ると、合計の指数でももう一段の大きな下げ(つまり前回「以上」の不況感)が実現する可能性もある。

景気の先行き判断DIについては、先月比で家計動向が大きく下落、企業動向では下げ幅がまだマシなレベル、という結果が出ている。住宅関連がかろうじてプラス、製造業がプラマイゼロだが、誤差の範囲か、リバウンドのレベルに過ぎない。

景気の先行き判断DI
景気の先行き判断DI

家計動向の下落の度合いはここ半年の間で最大級のレベル。止まらぬ物価高に将来を悲観する思いがそのまま現れたのかもしれない。特に飲食関連の値が30を切っているのが気になる。お客の消費性向の減退や素材高に加え、ガソリン価格の高騰で自動車利用の来客も減るというトリプルパンチから、先行きの不安が広がっているのだろう。

2000年以降の先行き判断DIの推移
2000年以降の先行き判断DIの推移(赤線は当方で付加)

6月は5月に続き現状判断も先行き判断も下落している。企業動向は5月と比べればまだ下落率が減っているように見えるが、家計動向では同じか、一部ではさらに加速しているように見える。このままではここ数か月示唆しているように、2001年頭のような「微妙な上昇をしたあとに急速に下落する」というパターンを踏襲しそうである。

2003年以降よく見受けられるようになった上昇・安定時の傾向「雇用指数が全体指数を大きく上回る」がまだ確認できず(それどころか大きく悪化している)、クロス・逆転も起きていないので、先行き判断指数から見ると「直近における景気感の底打ち」は残念ながら今月においても「先送り」になりそうだ。企業の現状・先行き感は底打ちに向かいつつあるが、物価高から消費者の判断は大幅な下げを見せており、これが消費性向の低下・企業の売上の低下・営業成績の悪化と連鎖を見せる可能性も否定できない。

発表資料には現状の景気判断・先行きの景気判断それぞれについて理由が詳細に語られたデータも記載されている。簡単に、一番身近な家計(現状・全国)に関して事例を挙げてみると、

・ガソリン価格の高騰により、軽自動車の販売を主とする当社にとっては追い風が吹いている。しかしその一方で、競争が激化している(乗用車販売店)。
・タスポの導入で、来客数は前月比30%増、たばこの売上は前年比40%増と好調だったが、パンを中心とした中食が落ち込み、全体では同5%増であった。最近は記念硬貨や古銭、古いビール券での買物がみられ、客の財布は厳しくなっている(コンビニ)。
・岩手・宮城地震(平成20年岩手・宮城内陸地震)の影響でイベント中止が発生した。材料費の値上がりを転嫁できず、利幅も少なくなってきている(都市型ホテル)。
・一部商品の値上げをして1か月たったが、客が「仕方ないよね」と言いながら、暗い表情をしているのを目の当たりにしている(一般レストラン)。
・これまでに輪を掛けて厳しくなっている。今まで女性が消費を減らさなかった美容分野でも販売量が減少しており、全分野において厳しくなってきている(百貨店)。


など、先月以上に物価上昇など現状を認識し、消費者が苦しい状態に置かれているのが分かる。特に昨今においてブームとなりつつある「中食」ですら落ち込んでいるとの意見や、(普段は記念的にとっておいてある)記念硬貨を使ってまで支払いをする状況が見られるなど、「首が回らない」状況が進んでいる様子が見て取れる。


過去のパターンを
踏襲するのなら
今後半年前後に
「クライマックス」到来か。
しかも前回よりも
キツい状況の可能性も。

掲載は略するが、企業部門のコメントでは現状・先行き共に「資源高」「注文量減少」「建築確認遅延」「求人減少」「販売価格の再値上げ」などのキーワードが乱舞している。「先行き」部門の消費者性向においても低価格商品へのシフト、ドライブを控える動き、価格高騰を見据えた買い控えなどが見受けられるなど、言葉どおり「景気の良い」話はほとんど見られない。

また雇用部門では民間職業紹介機関の「業種間で差はあるが、登録者の中で退職理由が企業のリストラにより退職する例と企業倒産でやむなく退職している例が増えてきている」という、企業の現状を垣間見る意見なども目に留まる。

本文中でも何度か指摘しているが、今回の景気悪化が2001年から2002年にわたった景気悪化のパターンを踏襲するのなら、全体の指数の底打ちと前後して「大幅な雇用関係指数の下落・他指数との乖離(かけはなれること)」現象が見られるはずである。この予測が正しいとすれば、今後しばらくはこのような(そしてさらなる)景気低迷状態は続き、今後半年前後の間に大きな山場を迎えることになることだろう。

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