新車が売れ衣服が伸び悩む……2008年5月の家計消費状況の結果発表

2008年07月12日 12:00

時節イメージ総務省統計局は7月11日、2008年5月分における家計消費状況調査の調査結果を発表した。それによると物価高や景気後退感などから消費者の消費性向が大きく後退し、支出が減っていることが明らかになった。また価格が下落している耐久消費財では、下落度合いがそのまま支出に反映されているようすもうかがえる(【発表ページ】)。

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家計調査は、全国の世帯を対象として、家計の収入・支出、貯蓄・負債などを毎月調査し、国民生活の家計収支の実態を把握。国の経済政策や社会政策の立案のための基礎資料を提供することを目的としている。結果は逐次データ化され、毎月発表されている。また、通常のデータとあわせて話題性の高い案件と家計との関連を示すデータも、追加参考資料として報告される。今回調査分は集計世帯数は1万6896件、世帯人数は平均3.15人、有業人数(働いている人)の平均は1.54人。

各項目について季節ごとの変動を除外して見られるように、前年同月比でグラフ化する。なお5月分のデータが掲載されていない(未調査、有意なデータが得られなかった)項目については表記しない。また、後ほど改めて触れるが、あくまでも「支出金額における前年同月比」であり「個数・件数」の比較ではないので、比率の変化の理由においては「対象商品の価格変動」によるものと「購入意欲の増減」によるものの、双方を考える必要がある。

まずは通信・放送受信部門

通信・放送受信部門
通信・放送受信部門

移動・固定電話料金共に低下しているが、これは使用量の減退ではなく各社の値下げ競争の成果によるものだろう。ケーブルテレビ系が増えているのは普及率の向上によるものと思われる。

家具など
家具など

続いて家具。こちらはくだんの「改正建築基準法」による住宅建築不況の影響を大きく受けており、軒並みマイナスを示しているのがわかる。なぜか「ベッド」だけ飛びぬけてプラスだが、原因は不明。せめて寝るときくらいは幸せなひとときを、という想いからだろうか。しかし「寝具」というカテゴリが上昇しているのなら「布団」も該当するはずだが、その傾向は見られない。あるいは単に、ベッドが値上がりしているからなのかもしれない。

衣服は特に和服の下げが目立つ。

衣服
衣服

背広も婦人用スーツも誤差の範囲における変動でしかないが、和服があまりにも下げすぎている。デパート部門の売上不振の一因として、得意分野の衣服の売上が落ちているというのがあるが、それがここにも表れているのだろうか。

自動車関連では興味深いデータが見られる。

自動車関連
自動車関連

ガソリン代高騰で新中古共に売上が落ちていると思いきや、中古車は落ち込みが激しいものの、新車は大きな伸びを示している。これは既存の自家用車より燃費のよい車両への買い替えが進んでいることを示唆しているのだろう。中古車では燃費の良さを期待することもできないため、新車へのニーズが高まっているわけだ。

家電系は多種多様。

家電系
家電系

【灯油+29.2、スパゲッティ+30.2%、即席めん+18.4%……必需品で急騰する物価】にもあるように、この分野の価格は中期的には大きく下がる傾向にあり、支出額も減る傾向にあるはずだが、一部商品では逆に大きく支出を増やしている。これは、「普及率の増加……携帯電話、デジタル放送チューナー内蔵テレビ、ビデオデッキ」「省エネ品への買換え需要……洗濯機、エアコン」などの二通りに大別できるものと思われる。パソコンの支出額下落率は価格下落率とほぼ一致しており、売買台数に大きな変化はないようだ。

気になるのは医療関係。

医療
医療

医療制度の改正でむしろ支払いをしなければならない医療費負担は増えている。ジェネリック医薬品の普及による医薬品代の減少だけでここまでの減退率が見られるとは思えない(第一、歯の治療や出産にはほとんど関係ない)。これがたまたまなのか、それとも何か他に理由があるのかは今データだけでは把握できないが、あまり良い感は無い(ちなみに過去データをさかのぼってみたが、少なくとも今年に入ってからこの傾向、特に出産入院料の減退は続いている)。

最後にその他項目。

その他
その他

冠婚葬祭においても支出の減少傾向は顕著に見られる。しかし一方で教育関係に関してはむしろ増える様相を見せている。懐具合が厳しくとも、わが子に託した思いは変わらず、というところか。


冒頭でも触れたが、今件はあくまでも「支出額の前年同月比」であり、「消費・購入量の前年同月比」ではない。支出額が減っていても、それがそのままその項目の利用・消費の減少を意味するものではいことに注意してほしい。

例えば(こちらも繰り返しになるが)パソコンの場合は20.1%の下落を見せている。しかしほぼ同時期の2008年4月におけるデスクトップ型パソコンの前年同月比の消費者物価指数は18.9%のマイナス、ノートパソコンは38.8%のマイナス。ウエイト比はノートパソコンがデスクトップにほぼ倍する値を見せているので、むしろ「価格下落率>>消費額減少率」であり、購入量は増えているものと推測される。

そして今回チェックをしたデータはあくまでも2008年5月のものだけなので、たまたま今月だけの特異データだったという可能性もある。しかしそれでもなお、これまで他所で伝えてきた消費性向などを裏付ける内容も数多く見られ、興味深い結果といえよう。

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