人生の「レベルアップ」はある日突然ドアを叩く

2008年06月29日 12:00

コラムイメージ先日斜め読みをした週刊少年ジャンプで、漫画家を目指す人向けのアドバイスコーナー「ヘタッピマンガ研究所R」が目に留まった。『アイシールド21』の作画を担当している村田雄介先生が自身の経験などを踏まえ、色々なマンガの基礎を教えていくという内容なのだが、その中で「なるほど」と思わせる表現があった。それは「作画技術の向上は突然、階段の段差のようにやってくる」というものだった。

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技術向上は階段のイメージ

手元にその号のジャンプが残っていないので、多少うろ覚えになるが、次のような図で「作画の技術向上」について語っていた。

「作画」における技術向上
「作画」における技術向上

作業が単調で全然上手くならないと嘆いた生徒役の人に、村田雄介先生は次のように説明していた。いわく、一朝一夕で成果は出てこない。作画の技術は経験を積むしかない。そしてその経験が一日ごとに技術の向上として表れるわけではない。経験そのものは蓄積されればされるほど着実に身につくが、それが技術の向上(レベルアップ)には反映されない。

それがある日突然、自分でも劇的な変化として分かるように、腕が上がったのが分かる。この繰り返しで、「上手くなっていく」というのである。日々の努力や時間の経過と、突然起きるレベルアップを「階段状に進歩する」と表現したわけだ。

この説明と図を目にし、「これは作画の練習だけに言えることだろうか」と考えた。努力をすればするだけ成果があがることに違いはないが、その成果が逐次現れる場合と、ある日突然表れる場合、確かに二通りある。前者の場合は「手に取るように」成果が分かるのでモチベーションも上がるが、後者の場合は自分のやっていることが正しいのかどうか不安になるし、「練習した成果」がなかなか見えてこないので嫌気もさしてくる。しかし積み重ねていることが確かなら、いつか必ず「レベルアップ」の時がやってくる。

それはまるで『ドラクエ』のレベルアップのように

経験の積み重ねが目に見えた成果として表れない。しかしある日突然、レベルアップをしたかのように、手に取るような成長が自分自身でも分かる」。この成長過程、どこかで見たことがあると気になっていたが、『ドラゴンクエスト』をはじめとする多くのロールプレイングゲームのシステムと同じものだった。

イメージ的にはこのような形になるのだろう。

「階段式レベルアップ」におけるステータス画面イメージ
「階段式レベルアップ」におけるステータス画面イメージ

自分の技術がどのようなレベルにあるのかは大体自分自身でも把握できる。しかしながら自分の日々の努力や学習が、どれくらいの経験として自分の中に蓄積されているのかは、その具体数が隠されていて分からない。レベルが上がるまではどれだけ努力しても同じレベルのままなので、「ちから」も「すばやさ」も「たいりょく」もそのままだから、見た目や成果も何ら変わるところがない。

レベルアップイメージしかしある日突然、レベルアップに必要な経験値が溜まり、あのおなじみのファンファーレ【♪ぱらららっぱっぱー】と共に自分のレベルが上がったことが知らされる。「ちから」も「すばやさ」も「たいりょく」も上がり、直前までスライムとの戦闘ですら四苦八苦していたのに、それより強いスライムベスともまともに戦えるようになる。行動範囲も広がり、新たな世界が見えてくる。装備も強いものを持てるようになり、戦闘の幅も広がってくる。そして改めて、自分の能力が向上したこと、そしてこれまでの努力(経験)が無駄でなかったことが実感できるのである。

レベル1から2に上がるための経験値が100だとすれば、経験値が0でも50でも、そして99でも同じ「レベル1」には変わりない。努力や訓練の蓄積が0でも、ある程度の蓄積があっても、そしてレベルアップに必要十分なまでにあと一歩でも、「レベル1」には違いない。

ましてや現実では、ゲームのように経験値が見えるわけではない。時間経過やこなした量は分かるが、それがレベルアップに必要な経験としてどれだけの「成果」につながるのかは分からない。「成果があがってないのでは?」と誤解してしまうこともあるだろう。

しかし効率の違いはあれど、そしてその「経験」の蓄積度合いは見えないものの、確実にレベルアップのための蓄積は行われている。あの「レベルアップのファンファーレ」に向けた足取りは、一歩一歩進んでいる。

「レベルアップ」はある日突然ドアを叩く

「レベルアップ」はある日突然ドアを叩くイメージ「あとどれくらい努力をすればレベルアップするのか」。ゲームならば一目瞭然だが、現実ではそれは分からない。受験勉強にしても、100冊参考書を読めば「レベルアップ」して合格の粋に達するのなら、誰もが100冊に目を通すだろう。しかし実際には「合格」へのレベルアップの道筋は個人差があるし、1冊読むごとに得られる経験値も人それぞれなので、確実な道はない。

しかし同時に、日々蓄積・努力をこなしていけば、それが明日か、半年後か、数年後かは分からないが、「レベルアップ」は必ずいつかやってくる。まるで突然懸賞の当選を知らせる郵便を届ける郵便配達の人がドアを叩くように。

もちろん「成果が見えない」からと途中であきらめてしまったら、そこで今までの「経験」は台無しになってしまう。また、「見えない経験値」を効率よく稼ぐための方法もあるだろう。しかしそれが本当に経験値の蓄積に役立っているかどうかは、結局のところ分からない。何しろ「見えない」のだから。

もしかしたらある項目の経験値は確かに効率よく蓄積されているが、逆に別の経験値を削る羽目になっているかもしれない。言葉巧みに誘いかける、安易な「攻略法」には注意すべきだろう。


この「階段式技術向上法」「「レベルアップ」はある日突然ドアを叩く」という考え方、あるいは技術向上過程の説明は、色々な状況において当てはまると考えている。例えば当サイトでは毎月【運用レポート】をお伝えしているが、それを見ればお分かりのように2007年11月から12月にかけて、突然アクセス数の急増が起き、その後その状態からさらに上積みされるような形になっている。この時期に何か特段変わったことを実施したわけでもなく、レポートでは何度と無く「ブレイクスルー(現状突破・急成長)」現象と表現していた。

しかし今回の思考方法を知るに至り、この時期に「サイトの運営・来場者数におけるレベルアップがあったのか」とも思うようになった。そのように判断した方が説明がつきやすい。

今もなお、次なるレベルアップに向けた経験値の蓄積は行われているはず。ただ、まだレベルアップに必要な経験値まで達していないだけの話。そのような考えなら納得もできるし、モチベーションも高まるというもの。次なる「レベルアップ」を目指し、さらに日夜努力を積み重ねていくことにしよう。

サイト運営だけでなく、ありとあらゆることにおいて。


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(最終更新:2013/09/06)

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