飼料価格の値上がりをグラフ化してみる

2008年06月22日 12:00

飼料イメージ先に酪農農家向けの飼料価格が高騰しているニュースをお伝えした。ガソリンや食料品と異なり、飼料は直接人間が口にしているわけでもなければ、スーパーやコンビニ、ガソリンスタンドで見かけることもないため、多くの人にとって身近な存在とは言いがたい。しかし飼料価格が上がれば(農家の廃業による供給量減少も相まって)肉や卵、乳酸品の価格上昇に拍車がかかるのは明らか。それでは実際に、飼料価格はどのくらいのペースで上がっているのか。グラフ化してみることにした

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農協をはじめ飼料に関する各団体では前期比の上下幅の公開は行われているものの、具体的な価格については非公開。そこで相対価格でしかないが、【社団法人配合飼料供給安定機構のデータベース】から過去の年度別・直近の月別データを抽出し、グラフ化することにした。

まずは年次動向。2000年を100とした場合の相対値で、1975年~1990年までは5年刻みとなっていること、2008年については1月から3月の平均価格であることに注意してほしい。

配合飼料の価格動向(年次)
配合飼料の価格動向(年次)

あくまでも各年における価格(相対比)であって、各時点での物価上昇率は考慮していないので参考値以上のものではないが、現在の飼料価格が過去に例を見ないほどの高値であることが分かる。

直接石油をまいて穀物を育てるわけではないが、1975~1985年の価格上昇はオイルショックによるものや、途上国の消費量向上が原因。さらにこの時には食糧の「戦略物資化」が露骨なものとなり、食糧そのものが政治的な「武器」としても用いられた。ただしその後、世界的な食糧増産が叫ばれ、需給のバランス関係から価格は安定に向かった。

続いて直近2年間、2006年4月から2008年3月までの月次データ。こちらも相対価格でしかデータが用意されていない。しかも基準価格が2000年のものではなく2005年=100となっているため、このままでは年次グラフとの連続性がなくなる。そこで2005年における各相対比から逆算し、2005年ではなく(月次グラフ上にはないものの)2000年の値を100とした形でグラフ化した。

配合飼料の価格動向(月次)
配合飼料の価格動向(月次)

「なんだ、さほど上がっているようには見えないけど」と思われるかもしれない。しかしこれは年次データと同じ縦軸(価格比)で月次の変動が描かれているのが原因。これを縦軸の下限を100に、つまり「2000年の価格と比べての上昇分」としてグラフ化したのが次の図。

配合飼料の価格動向(月次その2)
配合飼料の価格動向(月次その2)

例えば2006年4月なら約115%、つまり2000年比で15%のアップだったのに対し、2008年には約145%、45%のアップということになる。あくまでも単純計算だが、この2年間で飼料費は30%値上がりした計算。

7月からの1500円/トンの飼料価格引き上げにおいて、政府側では緊急対策費の計上を打ち出しているが、手続き上の問題などですぐに酪農家に反映されることは難しい。その一方で飼料価格の高騰はすぐさま経費の上昇に結びつく。また、「値上がりしたから交付金で補う」という付け焼刃では、根本的な解決には結びつきにくい。

とうもろこしの生産の低迷や世界的な気候変動、新興国の需要拡大、さらにはバイオエタノールなどの新たな分野ニーズの登場などから、数年単位では穀物価格、しいては飼料価格が1980年以降に見られた安定化に向かうとは考えにくい。短期的な手当てはもちろんだが、中長期的な戦略に基づいた食糧・飼料計画の立案とその実行が求められることだろう。

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