イギリスでも燃料費高騰によるタンカートラックの大規模スト発生中(現在進行形)

2008年06月14日 12:00

シェルのタンカートラックイメージ先に【空のガソリンスタンド、たなから消える生鮮食品……スペインのストライキ続報】【「ガソリン高すぎ!」 ヨーロッパ各地で発生するストライキやデモ】で、ヨーロッパにおいてガソリンなどの燃料価格が高騰し、トラック運転手や漁師によるストライキが相次いでいることを、スペインにおける現状を例にしてお伝えしたが、同様のストがイギリスでも起きているようすが【Mail Online】で伝えられた。記事のタイトルによれば「十分な量はあるから慌てずに」という政府の忠告にも関わらず、ドライバーたちはガソリンスタンドに殺到し、品切れのビラを用意するスタンドが相次いでいるとのこと。

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イギリスのネットワークニュース【ITN NEWS】が伝える、イギリスのトラック運転手らによるストライキ(公式提供動画)
ストを起こしているシェルのタンカートラック(Mail Onlineより)。
ストを起こしているシェルのタンカートラック(Mail Onlineより)。

元記事によれば、ガソリン輸送のタンカートラックらによるストライキが始まったのは6月13日金曜日。ストが始まってから早くも数時間で、空になるガソリンスタンドが相次いだ。週末に至るストライキでガソリンの供給がおぼつかなくなる可能性が報じられたとき、同時に「手元の自動車のガソリンを無駄使いしないように」という警告が発せられ、逆にそれがきっかけとなって多くの人がガソリンスタンドに駆け込んだ。結果として1000件以上もの「品切れ」ガソリンスタンドが登場する可能性すらあると、専門家は伝えている。

また、供給不足に当て込んだ便乗値上げを懸念する声もある。トラック運転手の団体と、彼らの雇用主であるガソリンメーカー(元記事では「Shell」とあるので以後はシェルと記述する)との、ガソリン価格高騰に伴う輸送経費への補助・賃上げに関する交渉は決裂したようで、次週の週末もまたストライキが起きるのではないかとの声もある。すでにメーカーと契約している2つのトラック運転手団体は(交渉が決裂したので)来週週末もストを実施するように、と所属するトラック運転手に伝えたとも報じている。彼らいわく「原油高でシェルは大儲けしてるが、俺たち運転手にはまともな支払いをしてくれない('Shell profits gush' and 'Drivers' pay trickles')」。トラック運転手の団体側では(輸送コストの急騰に対応するため)の賃金引上げ(7.3%)を1月にさかのぼって実施するよう企業側に求めたがこれは拒否されたという。

イギリス各地ではストライキに参加したグループによるピケライン(いわば「通せんぼ」)が敷かれ、混乱を避けるために他のトラック業者もピケライン通過を断念するものが相次いでいる。むしろ同調する動きを見せており、さらにガソリンの供給不足に拍車をかける事態を導いている。

ピケットラインを形成するトラック運転手とプラカード。「SHELL GALLONS OF GREED(シェルはガソリン高騰に乗じた欲張りだ)」との文字が見える。
ピケットラインを形成するトラック運転手とプラカード。「SHELL GALLONS OF GREED(シェルはガソリン高騰に乗じた欲張りだ)」との文字が見える。

ガソリン不足の影響を直接受けるイギリス国民自身はというと、不便さを感じつつも、冷静に事態を判断し対応すると共に、ストライキを起こしているトラック運転手には同情と同意を示しているようだ。それだけガソリンなどの燃料高騰が、自分の身を持って分かっているかららしい。

ガソリンスタンドに出来る長蛇の列。
ガソリンスタンドに出来る長蛇の列。

一方政府側やシェル側ではストライキを起こしている運転手たちを(当然のことながら)非難すると共に、自動車ドライバーに対し「買う燃料は必要な分だけにとどめて欲しい」と訴えている。いわく「旅行をひかえて制限スピードに気を配り、燃費に気をつけるべきである」と。シェル側では「すでに870のうち7か所のスタンドで品切れの報告が届いている。ガソリンが供給されない週末の間、どれだけのスタンドが空になるかは分からない。しかし、ガソリンの売り上げが急増したことや、自動車ドライバーが暴挙に出なかったことには感謝している」とコメントした。

また報道では6時間に渡り高速道路でトラックによるデモが繰り広げられ、同道路が使用困難におちいったことも伝えている。彼らは政府側にガソリン税の引き上げを撤廃するようにも要求しているとのこと。

ガソリン価格の高騰の度合いがどれほどのものなのか。イギリスにおける現状を示す、ガソリン価格上昇を示す数字も記載されている。平均的な自家用車1台を満タンにするだけのガソリン費用は一年前と比べると10.27ユーロ(1700円)上昇。2台の自動車を持つ一般的な家庭が1か月に用いる燃料費は、一年前と比べて44.02ユーロ(7300円)増加しているとのこと。ベースとなる燃料の量が記載されていないので単純比較は出来ないが、相当な負担増であることに違いはない。

「品切れです」のカバーがかぶせられた、給油ポンプ
「品切れです」のカバーがかぶせられた、給油ポンプ

ガソリン価格の高騰に端を発するストライキやデモの影響は、直接ガソリン不足以外にも見え始めている。1万人以上の自動車工場に勤める人が、スペインにおける部品生産が(ストで)鈍化しているので、就業において不安定な状態にさらされていると元記事では伝えている。他に、燃料高騰に憤慨した輸送関係者が港湾と空港を閉鎖し、輸出を止めようとする動きを見せていることや、オックスフォードなどにあるBMWの工場では6100人以上の労働者が「(部品が届かずに稼働率が下がっているので)木曜には来なくて良い」といわれているとの話もある。ダービーシアのトヨタの工場でも4000人以上の労働者が同じく木曜の夜、作業の停止を指示されているとのこと。

元記事のコメントでも今件について、読者からさまざまな意見と共に、イギリスの現状が伝えられている。例えばある医師は近所のガソリンスタンドがすでに底をついており、月曜までに問題が解決されないと、患者のもとにはタクシーでいかねばならず、患者に余計な負担をかけてしまう(そして患者に怒鳴られる)という話がある。他に、以前にも4日間のストライキはあったし、冷静に行動すればガソリン不足など心配することはないというガソリン小売業者の話。ストを起こしているトラック運転手を首にしろ、その仕事につきたい人は山ほどいるはずだという意見。政府と企業が手を結んでるから、こんなことになったんだという嘆きの声などさまざま。

恐らく当方のアンテナが鈍いか、それともあまりにも多すぎてうずもれているのかは不明だが、似たような話はヨーロッパ各地で起きているものと思われる。アメリカでも【ガソリン高騰で苦境におちいるアメリカの地方社会】にあるように、1ガロンあたりの価格が心理抵抗線の4ドルを超えたため、似たような動きが出てくる可能性は否定できまい。


(最終更新:2013/08/05)

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