「日本株は割安感」で本当に割安”そうな”銘柄を探してみる

2008年05月21日 19:35

株式イメージ昨年夏から続いた「サブプライムローンショック」、そして特に今年3月に経験する羽目になった「日経平均1万1000円台」の恐怖を乗り切り、昨今市場はやや安定を見せている。一方で金融市場を取り巻く状況はむしろ不安定度を増し、昨今の上昇は今後に向けたエネルギー充填状態ではないかという話もある。そんな中、日本株の急落振りは世界にも知られたところとなり、「豊富な優良資産を持つ老舗企業のPBR(株価純資産倍率)が依然として解散価値の1倍を割り込むなど「ゆがみ」」が生じているという記事が5月7日に報じられていた。

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PBR=1株あたりの資産額と株価の割合・外資が狙う「お買い得」銘柄

詳しくは元記事に目を通してほしいが、要はヘッジファンドなどの換金売りで必要以上に売り込まれた優良銘柄が、資産価値を超えた値の下げ方をしている状態にあると指摘している。株価指数のうちPBRと呼ばれる値が1を切る銘柄が、東証一部上場銘柄に限定しても1710銘柄中800銘柄を超えているというのだ。

ちなみにPBRとは株価純資産倍率のことで、

PBR(Price to Book Ratio)=株価/一株あたりの純資産額


で計算できる。この値が1.0以下の場合は、非常にざっくばらんに表現すると「この時点で会社を解散して資産を全部売り払って現金化したら、株価以上の現金が手に入るよ」ということになる。仮に0.1なら、その時点で会社を解散したら株価の10倍の価値がある、ということだ(あくまでも計算上の話)。

元記事では「800を超え」とあるが、今の時点で計算したところ927銘柄。54.2%がPBR1.0割れを起こしている計算。昨今相次ぐ決算発表と次期予想、それに伴う保有有価証券評価損などの修正で会社の純資産額が減少する可能性は高いものの、PBRが大きくぶれることは(よほどのスットコ会社でない限り)ありえない。

そこで現在のような「大バーゲンセール」の時期においては、「お買い得銘柄」が確実に潜んでおり、外資もそれを狙っている……というのが元記事のお話。

「偉い人」の選択3条件

多くの銘柄がPBRで1を割っている状況。これは「解散した方が良い会社」なのか「非常に割安で絶好の買いタイミング」かどちらかと判断することもできる。人により投資判断はさまざまだが、当方の巡回サイトの一つで、外資系投資銀行に勤めているという人のブログ【VALUE * VALUE】において、次のような分析が行われていた(「この1年、200社くらい取材し、色々考えたなりのチェックポイント」だという)。

1) 赤字(利益、CF)が出ていない会社か? → 赤字が継続していれば、純資産は減るわけですし
2) バランスシートで「投資有価証券」が多くないか? → 50%以上下落すれば、減損で純資産が一気に目減りします。持ち合いが多い企業・業態はきついね。
3) 運転資本が多い企業 → 年間に必要とする資金が多いため、有事の際はバランスシートが急速に悪化するから


お宝イメージ順を追って補足。1)は赤字が出ていれば純資産が減ってしまい、PBRが1を割っているというメリットがなくなる。要はせっかく「解散したら株価以上の価値がある」手持ちの株式の価値が、じわじわと削られていくわけだ。 2)は先に述べた「株価下落に伴う手持ち株式の純資産額評価損」。売り買いしたわけじゃないから別にいいじゃん、と文句を垂れても「時価総額評価」というルールには勝てない。 3)は説明の通り。お金の出し入れが大きい会社に何かあると、急速に資金繰りが悪化する。その分貯金(準備金)があれば問題ないが、準備金も資本として積み増しされているから、そんな余裕があるのなら元々「運転資本が(相対的に)多い」会社ではなくなる。

「で、具体的にどうよ?」ということで、元記事では銘柄選択(スクリーニング)の条件として次の3項目を挙げている。

1) 大型銘柄(時価総額2000億円以上)
2) 銀行、建設銘柄は除く
3) 景気のボトム(今だといいけど)においても黒字が確保できている


なるほど、確かにこれなら納得がいくし分かりやすい。1)は有事の際のバランスシートの変化にも耐えられる、3)は投資有価証券の減損処理をしても黒字が出せているから&赤字で資産が削られることがない。そして2)は主に「投資有価証券の減損」に起因しているものと思われる。

実のところ2)は、「今回の市場不振や景気後退局面で大きく影響を受けるため、リスクが高すぎる」という理由もある、ような気がする。その観点からすると、銀行は金融全般(その他金融、保険など)、建設には不動産も含めた方が良いだろう。

実際に選り分けしてみる

これらの条件でスクリーニングをすると、次のような結果が出る。

1)東証一部上場銘柄で時価総額2000億円の銘柄は352銘柄
2)そのうちPBR1.0割れの銘柄は41銘柄(41÷667=11.6%)
3)41銘柄中、金融・その他金融・保険、建設・不動産、さらにそれら業態に近しいものを除き、さらにそこから直近決算期で純利益がマイナスのものを除くと銘柄は

・帝人(3401) ・日本製紙グループ(3893) ・三井化学(4183) 
・フジテレビジョン(4676) ・新日本石油(5001) ・コスモ石油(5007)
・新日鉱ホールディング(5016) ・出光興産(5019) ・住友ゴム工業(5110)
・日本板硝子(5202) ・太平洋セメント(5233) ・東洋製缶(5901)
・豊田自動織機(6201) ・富士重工業(7270) ・ユニー(8270) ・上組(9364)

の16銘柄。


ざっと見渡してみると、昨今の資源高、特に原油高を背景として石油関連銘柄を中心に証券番号5000番台の銘柄が多いのが見て取れる。また「一応業態は金融や不動産以外だが、この業界もここしばらくは軟調だろうな」というものもある。

これらの銘柄はあくまでも上記の条件に、現時点で合致したものという意味以上のものは何も持たない。当方がお勧めするわけでなければ、「優良銘柄だ」と認定したわけでもなく、ましてや今後確実に株価が上がるというものでもない。「このような考え方もあるし、その考え方で検索するとこれらの銘柄が該当する」という話に過ぎない。

とはいえ、こういう類の「思考ゲーム」そのものは非常に楽しいものであることも、また事実だろう。


(最終更新:2013/08/29)

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