喫煙者の3割が「自販機で買わない」taspo(タスポ)導入で起きる変化

2008年05月15日 08:00

たばこイメージネットリサーチのDIMSDRIVEは5月14日、たばことtaspo(タスポ)に関するアンケートの結果を発表した。それによるとtaspoの導入後、taspoカードを申し込むと答えた喫煙者は全体の6割に達していることが明らかになった。一方で3割近くが「申し込まない」(=自動販売機でたばこを買わない)と答えており、taspoのシステム導入でたばこの販売状況に少なからぬ変化が生じることを予見させるデータが出ている(【発表リリース】)。

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実際に導入されてからあわてて行動

当調査は2008年4月2日から2008年4月10日にネット経由で行なわれたもので、有効回答数は6727人。男女比は43.4対61.1。年齢階層比は30代35.9%、40代27.3%、20代17.2%など。今調査では喫煙そのものについても多数のデータが報告されているが、今回はtaspo(タスポ)に焦点を絞ってみる。

taspo(タスポ)とはたばこ販売機での成人識別用ICカード。詳細は【公式ページ】【日本たばこ協会の説明ページ】に説明されているが、「taspo」によって認証システムは「未成年者の喫煙防止に向けた取り組みの更なる強化の一環」として導入されるもの。すでに各地で試験導入が行なわれ、一部地域では本格導入も行われている。この自動販売機でたばこを買いたい人はあらかじめ自分が成人であることを証明した上でtaspoカードを申請。利用者は取得したカードを自動販売機の読み取り部分にタッチし、購入希望者が成人であることを明らかにすることで、はじめて購入できるようになる。

「taspo」を単に免許証のような承認カードとして使うだけでなく、独自の電子マネー(ピデル)をチャージしておくことで「承認カード+電子マネー」として用い、「taspo」だけで成人チェックと購入が可能となる。なお現状ではEdyやSuciaなど他の電子マネーとの共用性はない。

taspoは「未成年でもたばこが気軽に買える環境を無くす」というメリットがある一方、「成人でも手間がかかるようになるため、たばこの自動販売機離れが進む」という一部懸念もあった。今調査では喫煙者のみに対しtaspoカードを申し込む意向があるか、あるいはすでに申し込んだかをたずねたところ、6割以上が「申し込む」派として回答した。

taspoカードを申し込むか・申し込んだか
taspoカードを申し込むか・申し込んだか

年齢階層別では歳を経るにつれて「すでに申し込んだ」人が増える一方、「必ず申し込む」「多分申し込む」の「これから申し込む」人が少なくなる傾向がある。さらにtaspo導入時期別で比べると、導入時期が遅い地域ほど「申し込んだ」人が多いことが分かる。

導入時期別taspoカードの申し込み状況
導入時期別taspoカードの申し込み状況

これらデータを見ると次のような状況が想像される

・高齢者ほどtaspoカードの導入までは安穏としていて、導入後実際に買えない状況を体験してからあわてて行動する率が高い。
・実際にtaspoカードが導入されて(時期を間近にして)カードがないと自販機で買えない立ち位置を実感し、「購入を決意する」「自販機での購入を止める」の両極端の意思決定をする人が増える。


試験勉強もダイエットも、切羽詰ってこないとなかなか決断・行動しないのが人の常というもの。taspoカードにしても人の習性は変わらないようだ。

taspoスタートで「たばこ止めよう」という人も

taspoカード導入派・非導入派それぞれにその理由を尋ねた結果も今レポートでは報告されている。それを見るとtaspoカードの導入が、喫煙派にも少なからぬ行動の変化をもたらしていることが分かる。

導入派
導入派
非導入派
非導入派

導入派は「現状維持のために」、非導入派は主にtaspoカードそのものの仕様を嫌ってという理由以外に、「買う場所を自販機からその他の場所に変える」「この際たばこそのものも止める」など、行動意識の変化が生じている意見も見受けられる。元々未成年者へのたばこ供給リスクを無くすための制度が、成年喫煙者にも影響を及ぼす結果となっているのが分かる。

「自販機からコンビニへ」

カードの持参や購入時の手続きなどハードルが高くなる自動販売機でのたばこ購入。taspoの導入で「成人の」自販機におけるたばこの購入度合いがどう変化するのか気になる人も多いはず。少なくとも「増える」という人はほとんどいないだろうが、調査結果では予想通り「自動販売機での購入は減る」と答えた人が多かった。一方、たばこそのものの購入頻度の減少やたばこを止めるという人は「あまり」見受けられない。

taspo導入後のたばこそのものの購入頻度
taspo導入後のたばこそのものの購入頻度
taspo導入後の自動販売機での購入頻度
taspo導入後の自動販売機での購入頻度

この2項目を見ると「taspo導入でたばこの購入量そのものに変化はないが、自動販売機での購入頻度は相当量減る」ことが容易に想像される。43.9%はこれまで通り「買う」と答えているものの、約4割が「減る、無くなる」と答えており、少なくともこの部分は減少することが予想されるからだ。

購入量全体は変わらず自販機での購入が減る。差分はスーパーやコンビニに回ることになる(5割強がその意志を持っている)。金額そのものは大きくないが来客数の増加という点では小売店、特にコンビニにとってはたなからぼたもち的な「taspo特需」が生じる可能性もある。


今調査時にはすでに宮崎・鹿児島両県でtaspoが導入されており、導入地域のデータも抽出されている。母数が21人と少ないため参考値以上のものではないが、それによると「52.3%が導入後自動販売機ではまったく購入しなかった」と回答している。「減った」も合わせると実に「6割近くがtaspo導入で自販機離れを起こしている」。

taspo導入は
未成年者の喫煙防止以外に
たばこそのものの抑制効果も!?
一方でコンビニなどの
taspo特需の可能性もあり

両県の調査結果は上記の全体地域の結果と比べ、taspoによる自販機離れが一層進んだ形に見える。これが誤差の範囲なのか、それとも今後導入される他地域の実情を先行反映したものなのか、今のところは分からない。同社の追調査を切に望みたいところだ。

前述したとおりtaspoは未成年者のたばこ購入機会を無くすために導入されたもの。言い換えれば世界的な嫌煙ムードの高まりで、(便利であるとはいえ)未成年にもたばこがすぐに買えるような環境を提供するとは何事か、という意見に対応するためのもの。

とはいえ導入前から指摘されていたように、たばこそのものの購入機会を面倒にすることで間接的にたばこ離れを後押しする意味合いもあったようだ。taspo導入には費用や手間がかかるし、導入後は利用・購入される頻度も減るので採算が取れず撤去される自動販売機も増えてくる。少なくとも今回の調査結果を見る限り、表向きの思惑はもちろん、もう一つの思惑もうまくいっているように見える。

他方先に指摘したように、自動販売機で購入していた人の何割かはコンビニエンスストアやスーパーなどに購入元を切り替える傾向が見られる。コンビニでたばこだけを買う人もいるだろうが、「せっかくだから」と他の商品を買う人も増えるだろう。コンビニにとっては降って沸いたような「taspo特需」が見込めそうだ。こちらは今後、コンビニの月次報告などの数字に表れることだろう。

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