「仕事場ではバナーはクリックしません」!? その理由を考えてみる

2008年04月29日 12:00

コマーシャルイメージ【Webマーケティングガイド】が4月25日に発表した調査結果によると、自宅と職場・学校でのネット上のバナー広告の認知度やクリック率には大きな違いがあることが明らかになった。非常に興味深い内容だが、閲覧時における環境の違いが、このような結果を導き出しているものと思われる。

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今データは4月11日から14日までの間、ネット経由で20歳以上の男女(学生と会社員限定)500人に対して行われたもので、男女比は1対1。年齢階層比などは非公開。

広告の認知度やクリック率を見る前に重要なのが、閲覧する環境。自宅・職場・学校それぞれの環境において、当てはまる項目を答えてもらったところ次のような結果が出た。

それぞれの利用環境で当てはまる項目
それぞれの利用環境で当てはまる項目

要は「自宅では誰にも気兼ねすることなくのんびりと使える」、職場では「詳しく使えるが(他人の目が気になるため)プライバシーが気になり、'下手なこと'はできない」というあたりだろうか。一方で職場・学校でネットを使う理由で最多の得票を得ているのが「気分転換」「暇つぶし」とあり、「他人の目を気づかいながらウサ晴らしをしている」職場環境が目に浮かぶ。

この前提を頭に入れた上で、次からのバナー広告に関する調査結果を見ると「なるほど」ということが分かるだろう。まずはバナー広告の認知度。

バナー広告の認知度
バナー広告の認知度

常日頃からバナー広告に注力している人(頻繁に行う人)は自宅でも職場でも同じようにチェックをするが、それほど気にかけない人は職場ではそのチェック度を大いに減らしていることが想像できる。

さらにバナーをクリックするかどうか、その経験率となるとさらにその率は減る。

バナー広告のクリック率
バナー広告のクリック率
・職場でのクリック率低下
→「リンク先が不明、怖い」
・職場での「頻繁にクリック」増加
→探していた案件の回答先として
バナー広告とリンクを認識

「あまり行わない人」の数に違いはさほどないが、「ときどき行う人」が半減し、「まったく行わない」人がほぼ倍増している。自宅ではバナー広告の行き先がどのようなページでもさほど気にすることはないが、職場の場合は行き先次第(例えば職場では閲覧がはばかられるような内容の表示や、困った動画・音声の再生が行われる)では色々と面倒なことになるリスクがあり、ちゅうちょしてしまうのだろう。

一方で「頻繁に行う」のクリック率も倍増している。こちらは仕事などでネットを利用している際に、資料をはじめ「欲していた情報」がバナー広告の先にあると認識し、広告としてではなくリンクの一つとしてクリックするためと思われる。バナー広告ではないが、検索結果一覧に寄せてキーワードに関連するリンク広告が表示される「リスティング広告」が良い例だ。

先に何があるのか分からない場合、職場でのバナー広告のクリック率は下がる」「探しているものがリンク先にあると分かりやすいバナー広告は、職場での(確固たる目的意識で利用している人による)クリック率が上がりうる」という傾向を裏付けるのが次のデータ。資料請求の割合について。

資料請求率
資料請求率

上記は資料請求率についてだが、他にブログや会員登録など「目的がはっきりしたもの」については職場での利用経験率が高い結果が出ている。


サンプルバナー2種類イメージ急ごしらえだがサンプルとなるようなバナーを右に作ってみた。職場でこのようなバナーを見かけた場合、どちらをクリックしうるだろうか。

そもそも(A)では「誤解をした」ユーザーによるクリック率は上がるかもしれないが、目的意識とは反する人が多く、成果も少ない。当然この事例(職場での閲覧を設定)でもクリックはされない。一方で(B)なら自分の目的に合致するサイトがリンク先にあるかもしれないと考え、クリックされる可能性は高くなる。この時点で(B)は単なるバナー広告ではなく「有益なリンク」の立ち位置に変わるわけである。

どちらも「世界の有名リゾートホテルへの予約が出来るポータルサイト用バナー広告」を想定したものだが、(A)はリンク先のことをほとんど語らず、イメージ(しかも誤解を受けるような)だけでアピールしている。一方(B)はリンク先のサイトがどんなもので「何ができるのか」がはっきり分かるものとなっている。

自宅でならリンク先がどのようなサイトでも特に問題なく表示できるが、職場ではそうもいかない。「詳しく使えるが(他人の目が気になるため)プライバシーが気になり、'下手なこと'はできない」ため、リスクの香りがするバナーは極力避けられる傾向があり、結局(A)のようなイメージ的で扇情的、錯覚を与えるような広告は避けられることになる。一方、(B)のようなオーソドックスだがシンプルで、ストレートにリンク先にあるものが分かるような(バナー)広告は、リンクそのものの価値を認められ、クリックされる割合が高くなる。

まとめると、

・自宅では目的意識がはっきりしている場合でもそうでない場合でも、他人の目を気にすることはない。よってバナー広告の認識度やクリック率は個々の案件次第。

・職場や学校の場合は「不特定多数の環境下」におけるアクセスなので、他人の目を気にせざるを得ない。リンク先のリスクを考えるので、気分転換や暇つぶしの際には「行き先がどのような場所か想像できない」バナー広告はクリックしない。

・一方で、はっきりとした目的意識を持った上で使っている場合、「行き先がはっきりと分かるバナー広告」は、有益なリンクとみなされる。そして職場でも積極的にクリックされるようになる。


ということになるだろう。これは上で記した「検索結果に並列表示されるリスティング広告」などのテキスト広告にもいえること。

バナー広告が出回りだした直後は、珍しい事もありリンク先がよく分からないような、イメージやインパクトだけで訴えるものが多かった。しかし今やバナー広告はちまたに満ちあふれ、珍しくもなくなり、むしろ「なんだかよく分からないことしか描いていない邪魔なもの」扱いすらされる傾向にある。興味や好奇心によるクリックを期待する時代はすでに過去のものといえる(第一バナー広告自身に興味があっても、リンク先が期待外れなら意味はない)。

利用者が求めているのはあくまでも有益な情報。そのリンク先に利用者が求める「有益な何か」があることを素早く訴えかけることができる、シンプルでスマートで分かりやすい内容がバナー広告に求められているのだろう。そして職場などの特殊環境下では特に、そのシンプルさによる効果がクリック率や成果率に現れるものと思われる。

もちろん一番なのは「有益なものであることがすぐに分かる」そして「注意をひきつける」広告なのだが。

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