吉野家の業績予想の謎を質問してみた

2008年04月16日 19:40

牛丼イメージ4月15日に発表された【吉野家(9861)】の2008年2月期決算短信(【該当リリース、PDF】)では先に発表された特別損失による、前年期と比べての利益の大幅縮小の他、2009年2月期の連結業績予想も掲載されていた。その数字において中間期と通期との間に、数字だけでは説明がつきにくい大きなかい離が見られたため、一部投資家の間で話題となった。今件について当方(不破)も気になったため吉野家のIRに問い合わせたところ、回答を得ることができたので、ここでまとめておくことにする。

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「説明がつきにくい」とは次の通り。

4月15日発表の決算短信における、2009年2月期の吉野家の業績予想
4月15日発表の決算短信における、2009年2月期の吉野家の業績予想

表を見れば分かるように、中間期と通期における売り上げが2倍強であるのに対し、営業利益や経常利益、当期純利益が3倍前後にまでふくらんでいる。この数字だけではなぜそうなるのかは理解しがたく、一部掲示板の意見の中には「希望的観測を織り込んだのではないか」とするものまであった。

今件について「どうして売り上げと各種利益の間にこのような開きがあるのか」と吉野家IRに問い合わせたところ、次のような回答を得ることができた。

1.アール・ワンの事業立ち上げ(再建)時にかかる費用が上期には大きく負担となる

【プレスリリース(PDF)】にもあるように昨年夏、吉野家では「びっくりラーメン」ブランドで名を知られているラーメン一番本部などの事業を民事再生支援の形で買い取っている。現在吉野屋の子会社「アール・ワン」の指導のもと(というよりアール・ワンが)、再建(不採算店舗の閉鎖をはじめとした運営の効率化)が進められているが、この再建費用が2009年上半期には負担としてかかるとのこと。下期には黒字に転換し、以後黒字化継続の予定とのことで、下期にはその分の経費があまり計上されなくなるため売り上げに対し利益の幅が大きくなる。

2.販売促進費の上期への大規模投入
 
3月から牛丼販売24時間体制が復帰したのに伴い、宣伝費などの販売促進費を大きめに投入し、相乗効果を狙うとのこと。その分経費がかかるため、売り上げに対し上期における利益の伸びが押し下げられている。下期は通常に戻すため、利益幅も大きくなる。

3.吉野家自身の特徴

これはIR側から指摘されてはじめて気がついたのだが、吉野家は同社の上期よりも下期の方が売り上げが大きくなる傾向がある(【月次販売データ】)。2007年の場合は3月1日から牛丼の販売時間延長措置をとったため、これまでとは違った傾向が出たとのこと(絶対額があればもっと詳細に分かるのだが)。また、新規展開店舗の効果が下期に出るとのこと(上記アール・ワンも含まれるのだろう)。


1~3のうち3は売り上げそのものにも大きく作用するので、「売り上げの倍率を超えた利益の倍率」の事由説明は主に1と2によるものだろう。15日の決算記者会見ではそのあたりも一部触れたようだが、報道では限りアール・ワンの件などには触れられているものの、「だから上期と下期では利益率が違ってくる」の説明まではされていなかった。今後は簡単でよいから短信上でも説明があるとありがたい。


予想営業利益71億円がロイターのアナリスト予想の85億円を下回っていることなどや、メイン事業の牛丼以外の事業が足をひっぱる形が見えていることから、業績予想下方修正のリリース以降吉野家の株価はやや低迷している。色々と気になって今回電話取材をして確かめたわけだが、消費者の消費モチベーションの低迷や原材料費の価格上昇などネガティブ要素はあるとはいえ「少々叩かれすぎかな」というのが正直な感想。【IT Media】の記事にもあるように、今や「ブランド」として立派に通用する業態・企業である以上、「よほど間違ったことをしない限り」においては、じきに正しい評価がなされるのではないか、そう思うのだがどうだろうか。

閑話休題。こうやって分からないことについて直に質問して、答えがちゃんと得られるというのはやはり面白いし、やりがいもあるというもの。当方のように素人でも、やってできないことはないと実感したのが今件の取材結果だった。身近な企業の話なだけに、興味も尽きぬものである。

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