スピードは現行ヘリの2倍! 新型ヘリは二重反転ローターで超高速

2008年04月13日 19:30

X2イメージ【Defensenews.com】が伝えるところによるとアメリカのヘリコプター開発会社大手の【Sikorsky(シコルスキー)】社が開発中の新型ヘリコプターの実験機「X2」が公開されたが、巡航速度が従来のヘリコプターの2倍近い時速250キロノット(時速462キロメートル)となることが明らかになった(【シコルスキー社のX2ページ解説】)。

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X2 TECHNOLOGY。要は技術検証のための実験機
X2 TECHNOLOGY。要は技術検証のための実験機

X2イメージ高速ヘリとしてはすでに【最新軍用ヘリオスプレイ、実戦配備のためイラクへ派遣・移動開始】などで報じたオスプレイが有名。この機体なら300キロノット(時速550キロ)は余裕で出すことができる。しかしオスプレイは通常飛行時にはプロペラ部分を垂直にして飛行機のような形で飛行するので、ホバリング(空中待機)能力にはやや欠けるところがある(だからこそその分水平飛行の時に速度を出せるのだが)。

一方ヘリコプターは前に進むときには機体そのものを前面に傾け、前面方向のベクトルを増やし前進する。より速く移動しようと(=前面部分のベクトルを増やそうと)前のめりになると、今度は上昇方向の浮力が減ってしまい高度が取れなくなるという弱点がある。

今回開発中のX2はプロペラ部分を二重にし、しかも反転式のローターにすることでこの弱点やプロペラ回転によって生じるねじれ(トルク)を解消する。X2は右図にもあるようにこの「二重反転式ローター」を用いることで、「従来のヘリコプターよりも高速で(オスプレイ並)、しかもホバリング能力はそのまま」というおいしいところ取りとなる機体を目指している。

シコルスキー側はこのX2を機銃やロケット弾、ヘルファイアなどの対戦車ミサイルが搭載できる軽戦闘ヘリ用の機体として「提案」する予定。また主な顧客であるアメリカ陸軍に対し、どのようなスペックが求められるのかを協議している最中だという。もし仮に250キロノットというスピードが実際に出るのなら、現在使用されているアパッチ対戦車ヘリの「巡航速度100ノット・最高速度170ノット」に比べてかなりの、そして輸送ヘリのUH-60ブラックホークの「最高速度135ノット」の2倍近いスピードを得ることになる。

兵器としての価値を決めるにはスピードは大きな要素となる。その点X2が通常のヘリコプターの倍近い速度を得て、オスプレイのような「飛行機もどき」ではなく通常のヘリコプターと同様のホバリング機能を有しているのは魅力的といえる。


航空ショーで展示されていたX2と社員へのインタビューや飛行中を想定したグラフィックなど。どのような機体なのかが一目で分かる。

ただし速ければ他の性能がすべて切り捨てられても良いというわけではない。元記事でも「既存のヘリコプター同様の搭載能力があるのか」「航続距離は十分か」などの問題が指摘されている。要はバランスが必要なのであって、速いだけで航続距離が短かったり、積める兵器の量が少なければ採用はされないだろうとしている。

さらに元記事では指摘されていないが、二重反転式ローターは機構が非常に複雑となる。ある意味タフさを求められる戦場で使われる戦闘ヘリが非常に繊細で、すぐに故障してしまう(稼働率が低い)のでは敬遠されるばかり。また本当にこの機構を使いこれだけの高速性が実機で出せるのかどうか、疑問視する向きもある。

二重反転式ローターを使ったヘリコプターといえば「ホーカム」というコードネームを持つロシアの攻撃ヘリコプターKa-50をはじめ、カモフ社のお得意とするところ。同機は水平飛行時に時速300キロメートル強の高速を出すことができ、運動性能にも優れている。ホーカムと同じコンセプトの機構を用い、それ以上のスペックをX2は求めていることになるが、シコルスキー社のこれまで開発してきたラインアップを見る限り二重反転式ローター機の開発前歴は無く、多少不安が残る。

果たして正式に採用されるだけの性能を、実際に飛行して出すことがX2に出来るのか。続報を待ちたいところだ。


(最終更新:2013/08/09)

※2008.8.1.速度単位の間違いを訂正しました。C様ご指摘ありがとうございました。

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